2013-04-16 商標の類否判断と外観・称呼・観念

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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

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1 今回の判例 商標の類否判断と外観・称呼・観念

知財高裁平成24年7月18日判決

 A社は、標準文字で構成される「POWERWEB」商標(「本願商標」)について、第25類「運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品として、登録出願をしましたが、拒絶査定通知を受け、不服審判でもその結論は変わりませんでした。

 拒絶の理由は、「POWERWAVE」の欧文字と「パワーウェーブ」の片仮名を上下二段に横書きしてなる商標と称呼上類似しており、外観上比較的近似しており、観念上明確な違いを有するものではないという理由でした。

 

2  判決の内容

 裁判所は以下のとおり判断し、類似という特許庁の判断を取り消しました。

  • スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の文字の自他商品識別力は、同じくスポーツ関係の商品に使用される「WEB」及び「WAVE」の文字の自他商品識別力よりも強いものとはいえない。
  • 各商標はいずれも一般人にとって観念を容易に想起し得る単語を組み合わせた語であり、スポーツ関係の商品に使用される「POWER」の自他商品識別力が強いとはいえないことから、「POWER」と組み合わされた「WEB」と「WAVE」の外観上の相違に照らせば、両商標は外観において相違する。
  • 観念については、本願商標からは「力のある網」といった観念が生じ、引用商標からは「力のある波」といったの観念が生じるから、観念においても相違する。
  • 両商標の語調語感は自ずと相異なるから、両商標は称呼上類似はするものの,両商標を聞き分けることは必ずしも困難なことではない。
  • 以上のとおり、両商標は、外観及び観念において相違し、称呼上類似はするものの両商標を聞き分けることは必ずしも困難なことではないこと、また取引の実情として、称呼上の識別性が外観及び観念上の識別性を上回っているような事情は認められないことに照らせば、両商標は、外観及び観念上の相違が称呼上の類似性を凌駕するものといえ、両商標は類似しない。

 

3 解説

(1)商標類否の判断基準

 商標法第4条第1項各号には、商標の不登録事由が規定されています。その一つが、同項第11号の、先願かつ先登録の商標と抵触する商標の登録を拒絶する旨の規定です。つまり、先行して登録された商標と類似する商標は登録されないということです。

 そして、現在の商標実務において、出願商標が先行登録商標と類似しているか否かは、商標の有する外観、称呼及び観念のそれぞれの判断要素を総合的に考察するとされています。もっとも、外観、称呼および観念のうち1つでも類似であれば類似商標と判断されることが多いといえます。

 さらに、外観、称呼及び観念のうち重視されるのは称呼であり、両商標の称呼が共通・類似していれば、審査実務においても類似関係にあると判断されます。この場合、意見書を提出し、取引の実情に照らせば実際の取引において出所混同のおそれがないことを説明したり、称呼が類似していても、両商標の観念や外観に顕著な相違があることを説明することによって、登録に至ることがあります。

 称呼が共通であっても、その他の要素を参酌することにより両者が非類似と判断されている特許庁の審決・裁判所の判決には、本稿で取り上げた例のほか、以下のような例があります。

   出願商標       引用商標
  「CHOOP」   「Shoop」
  「環」      「たまき/玉樹」
  「BALMAIN」     「バルマン」
 「Viam/ヴィーム」  「美夢/ビーム」
 「BOOKING.COM」    「Book-ing」
  「鳳凰」      「宝桜」
  「腰人防」     「用心ボー」
  「LINKS」   「LYNX」

(2)ビジネス上の留意点

 自社で商標を選択する場合、当然ながら、前記のような商標の類否の判断基準に従い、できる限り先行商標と、外観・称呼・観念のいずれもが類似しない、できる限り登録可能性が高く、他社商標を侵害する可能性の低い商標を選択することがベストではあります。

 もっとも、様々な事情から、既に採用し未登録のままで一定期間商標を使用しており、改めてこれを出願しようとする場合もあることでしょう。そして、実際にはその商標と称呼において類似している登録商標が存在する、というケースもあることでしょう。

 この場合に、これらの商標の登録可能性を見極めるのは必ずしも容易ではありませんが、弁理士等の専門家に相談し、打開策が見いだせることもあります。特に、審決取消訴訟では、称呼以外の他の要素の相違を考慮したほか、取引の実情を詳細に認定して非類似の結論を導いているケースが多いといえます。

 それで、自社で使用している当該商標をめぐる取引の実情をいかに立証できるかが重要となり、この点で、社内での日頃の情報管理・蓄積の努力や、必要に応じた資料収集・情報収集が首尾よく行えるような体制の整備が重要となってくるといえるかもしれません。

 

参考ページ:商標法解説 http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/


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