2011-09-17 不公正な取引方法と課徴金

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1 今回の判例  不公正な取引方法と課徴金

 今回は裁判例ではなく、公正取引委員会の課徴金納付命令を取り上げます。

平成24年2月16日 排除措置命令・課徴金納付命令

 家電製品の大手小売業者であるX社は、少なくとも平成20年9月6日から平成22年11月29日までの間、自社に継続的に商品を販売納入している業者らに対し、新規オープン・改装オープンする自社店舗における搬出作業や搬入作業、店作りなどを手伝わせるため、X社が費用を負担することなく、予め合意もせずにそれらの業者に従業員を派遣させていました。

 

2 公正取引委員会の判断

公正取引委員会は以下のように判断しました。

 1)X社の違反行為は、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、継続して取引する相手方に対して、自己のために役務を提供させていたものであって、独禁法2条9項5号の「優越的地位の濫用」にあたる。

 2)X社につき、違反行為が長期間にわたって行われていたこと、違反行為の取りやめが公正取引委員会の審査開始を契機としたこと等の諸事情を勘案すれば,特に排除措置を命ずる必要があるほか、X社の行為は独占禁止法20条の6の「継続してするもの」に該当し、課徴金の適用対象となる。

 公取委は、その上で、X社の適用対象期間中の対象となる額を4047億円とし、独禁法20条の6等に基づく計算により、当該金額に法定の割合である1%を乗じた約40億円の納付をX社に命じました。

 

3 解説

(1)課徴金制度と独禁法の改正

 課徴金とは、法律違反行為の防止といった行政目的達成のため、行政庁が違反事業者等に対して課す金銭のことをいいます。様々な法律に課徴金の規定が定められていますが、公正取引委員会は、事業者等が課徴金対象となる独禁法違反行為を行っていた場合に、違反事業者等に対して課徴金を国庫に納付することを命じます。それが今回の事例で出された「課徴金納付命令」です。

i 対象となる行為類型の拡大

 平成21年の独禁法改正で、課徴金の対象となる行為類型が拡大されました。これまでは、支配型私的独占(市場において他の事業者に制約を加え競争を制限すること)や不当な取引制限(いわゆるカルテルや談合など)が課徴金の対象でした。

 しかし、同年の改正で、以下の行為が課徴金の対象となりました。

  • 排除型私的独占(ある事業者が他の事業者の事業活動を排除すること)
  • 不公正な取引方法のうち、特に違法性が強い一部の行為(共同の取引拒絶、不当な差別対価、不当廉売、再販売価格維持行為、優越的地位の濫用)

 以下、不公正な取引方法に関する課徴金について、若干解説を補足します。

ii 課徴金対象の要件など

 共同の取引拒絶、不当な差別対価、不当廉売、再販売価格維持行為、優越的地位の濫用に該当するからといって、直ちに課徴金の対象となるわけではありません。

 それぞれ一定の要件があるほか、前四者については、10年以内に同一の違反行為類型の繰り返しが認められる場合に限られています(20条の2)。また、優越的地位の濫用についても、「継続してするもの」である場合のみ、課徴金の対象とされています(20条の6)。

iii 課徴金の計算方法

 課徴金の算定方法については、共同の取引拒絶、不当な差別対価、不当廉売、再販売価格維持行為においては、違反行為期間(最長3年間)における、一定の売上高に対して3%(小売業は2%、卸売業は1%)です。優越的地位の濫用については、一定の売上高等に対して1%とされています。

(2)実務上の留意点

 上記のとおり、今回の独禁法の改正により、課徴金の対象類型がかなり広がったわけですが、特に今回の「優越的地位の濫用」を含む不公正な取引方法については、事業規模にかかわらず、またあらゆる業種や場面で広く問題となりうる類型であるといえます。そのため、どの企業も、以前にも増して課徴金制度と無関係ではいられなくなっているといえます。

 しかも、課徴金納付命令により、過去何年分の売上の一定割合を突如納付しなければならないことになると、企業にとっては相当の負担となります。のみならず、公正取引委員会から排除措置命令や課徴金納付命令が課されると、公正取引委員会のウェブサイトなどで広く公開され、企業のレピュテーションや信用へのダメージなども考えなくてはなりません。

 こうしたリスクを考えると、普段から社内コンプライアンスの徹底を促し、違反行為の予防に努めることが重要であるといえるでしょう。また、不公正な取引方法違反に対する課徴金命令は、前述のとおり繰り返しや継続性が要件となっていますから、違反行為の早期発見と速やかな改善も重要なことといえます。



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