2013-10-29 土地の賃借と借地借家法による保護

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1 今回の判例    土地の賃借と借地借家法による保護

最高裁 平成25年1月22日判決

 A氏は、所有権等を有する自己の土地につき、昭和63年7月、B社との間で、賃貸借契約等を締結し、ゴルフ場の経営が契約の目的とされました。

 その後、B社の賃借人等の地位が譲渡され、C社が当該土地を利用してゴルフ場を経営していたところ、C社は、平成19年3月、A氏に対し、借地借家法11条の賃料増減額請求権を行使し、当該契約の地代等について減額の意思表示をしました。

 本件の争点の一つは、このゴルフ場経営を目的とする土地の賃貸借契約等に、借地借家法が(類推)適用されるか否かでした。

 

2 裁判所の判断

裁判所は、以下の理由で、本件の土地賃貸借契約への借地借家法の類推適用を認めませんでした。

  • 借地借家法の趣旨は、建物の所有を目的とする土地の賃借権に関して特別の定めをするものであり、建物の所有を目的としない賃貸借契約等について安易に類推適用すべきではない。
  • 本件の契約においては、ゴルフ場経営を目的とすることが定められているにすぎず、当該土地が建物の所有と関連するような態様で使用されていることもうかがわれないから、借地借家法11条の類推適用の余地はない。

 

3 解説

(1)借地借家法による借地権の強力な保護

 世間一般では、土地の賃借権は手厚く保護されていると考えられています。それは事実なのですが、留意すべきは、すべての借地権がそうであるわけではないという点です。

 それは、借地権を強力に保護する法律である「借地借家法」が対象としている借地権が「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」に限られるからです(借地借家法2条1項)。

 したがって、典型的な例でいえば、もっぱら駐車場や資材置き場といった目的で賃借されている土地の賃貸借契約については、民法の適用はあるものの、借地借家法による強力な保護はないということになります。

(2)借地借家法の適用が問題となったケース

 上のとおりもっぱら資材置き場に使うといったケースは比較的明確ですが、事例によっては、これが「建物所有目的」なのか否か、必ずしも明確でないものもあります。例えば、これまでの判例の事案を挙げると、以下のようなものがあります。

 ◇ 建物所有目的が肯定されたケース

  • 自動車教習所としての使用(教習コースと建物について学校経営上の一体性が認定された)

 ◇ 建物所有目的が否定されたケース

  • ゴルフ練習場としての使用
  • バッティング練習場としての使用
  • 隣接土地の幼稚園の運動場としての使用
  • 契約書に「鋼材及び駐車場」と書かれ「プレハブ構造の仮設建物」があった事例
(3)実務上の留意点

 当然ながら、事業を行う際、他者の土地を賃借するというケースは少なくないと思われます。この場合、事業の継続性という観点から見れば、当該土地の賃借権が借地借家法によって保護されるか否かは、場合によってはきわめて重要となってくると思われます。

 それで、将来トラブルとなった場合に借地借家法の適用が争われそうなケースでは、十分に注意する必要があるように思われます。この点例えば、契約書の記載において、建物の所有が借地の主要な目的であることを明示することはプラスになると思われます。

 加えて、訴訟において、建物所有目的の認定に当たっては、実際の使用態様も重要な要素となります。それで、過去の裁判例などから契約書の記載をもっても借地借家法不適用リスクが否定できない場合には、一定期間の権利確保のため、借地の存続期間を十分長いものとするよう交渉する、また、地代の改定の方法などについてもできる限り具体的に事前に定めておく、といった防衛策も検討できると考えられます。



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