2011-21-10 不公正な取引方法と損害賠償

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

学術的・難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。メルマガの購読(購読料無料)は、以下のフォームから行えます。

登録メールアドレス    

なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

以下の検索ボックスを利用して、トピックページ(メルマガバックナンバー)から検索できます。

1 今回の判例     不公正な取引方法と損害賠償

 

東京高裁 平成25年8月30日判決

 コンビニエンスストアのフランチャイズチェーンを運営するA社は、同社が販売を推奨する弁当などのデイリー商品のいわゆる見切り販売(販売期限が迫った商品の値引販売)を行っている等の加盟店に対して、見切り販売の取りやめを余儀なくさせていました。また、当該チェーンシステムのもとでは、廃棄商品の原価の全額が加盟店の負担となっていました。

 このようなA社の行為に対し、公正取引委員会は、加盟店が自らの合理的な経営判断に基づきデイリー商品の原価相当額の負担を軽減する機会を失わせていると判断し、「優越的地位の濫用」を理由とした排除措置命令を発しました。

 本件は、当該排除措置命令を受け、A社チェーンの加盟店を経営する加盟店Bらが、A社に対して独占禁止法25条に基づいて損害賠償を求めたというものです。

 

2 裁判所の判断

 裁判所は、A社の言動が、加盟店に対し、見切り販売の実施に関する経営上の判断に影響を及ぼす事実上の強制となっており、加盟店による商品の価格決定権の行使を妨げ、見切り販売の取りやめを余儀なくさせたと判断し、損害賠償責任を肯定しました。

 

3 解説

(1)独占禁止法25条による損害賠償責任の特色

 独禁法25条は、いわゆる無過失損害賠償の規定を設けています。つまり、独占禁止法に違反する行為(一部を除く)を行った場合には、被害者に対して損害賠償責任を負い、当該損害賠償責任は、故意又は過失がなかったことを証明しても免れられないというものです。

 ただし、同条に基づく損害賠償請求は、当該違反行為に対する排除措置命令や審決が確定してからでないとできないこととされています(独禁法26条1項)。

 つまり、独禁法25条は、行政処分の確定を前提に、被害者が損害賠償請求をしやすくする規定といえます。

(2)他の損害賠償の手続との比較

 他者の独禁法違反行為に対する損害賠償請求の方法としては、独禁法25条に基づく損害賠償請求のほか、不法行為一般について定めた民法709条の規定に基づく方法もあります。

 それぞれの方法には一長一短がありますので、現実に損害賠償請求を行うことを検討する場合には、それぞれのメリット・デメリットを踏まえ、手続を選択することがよいと思われます。

 もちろん、具体的なアクションの際には、弁護士に依頼することになるでしょうから、詳細は弁護士において検討するものと思われますが、およそこのような手段があるという基礎知識・アウトラインを知っているだけでも、弁護士の説明がより理解しやすくなり、スムーズな相談ができる一助となると考えられます。

 ◇ 独禁法25条に基づく請求

  <メリット>

  • 違反行為の立証のみで足り、故意・過失の有無を問わないという点で立証の負担が少ない。
  • 違反行為の立証についても、排除措置命令や審決が確定しているため、立証の負担は小さい。
  • 公正取引委員会から、一定の資料の提供を受けることができる。

  <デメリット>

  • 損害賠償請求が、当該違反行為に対する排除措置命令や審決が確定した後しかできないため、権利行使の開始に時間を要する(当該違反行為から数年後となる場合もある)。
  • 公取委が事件として取り上げない場合や、審査開始後も不問に付された場合、又は口頭注意・警告にとどまった場合には、請求ができない。
  • 第一審の管轄は東京高等裁判所であり、他の裁判所には管轄権がない。

 ◇ 不法行為(民法709条)に基づく請求

  <メリット>

  • 当該違反行為に対する公正取引委員会の排除措置命令等がなくても損害賠償請求が可能であるため、権利行使が早期に可能。
  • 公取委が事件として取り上げなくとも、提訴可能。
  • 東京高裁に限らず、より便宜・近い地方裁判所に提訴が可能。

  <デメリット>

  • 違反行為の立証が必要であり、手間と労力がかかる。また公正取引委員会に比べ調査能力に限界があるため、立証できない場合もある。
  • 違反行為の立証に加え、加害者側の故意・過失の立証が必要であり、この点でも負担が少なくない。
  • 公正取引委員会から、資料の提供を受ける機会がないか、入手できたとしてもごく限られたものとなる。


メルマガ購読申込はこちらから

弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」は、以下のフォームから行えます。

登録メールアドレス    

 なお、入力されたメールアドレスについては厳格に管理し、メルマガ配信以外の目的では使用しません。安心して購読申込ください。



法律相談等のご案内


弊所へのご相談・弊所の事務所情報等については以下をご覧ください。



Copyright(c) 2014 弁護士法人クラフトマン IT・技術・特許・商標に強い法律事務所(東京丸の内・横浜)  All Rights Reserved.