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2016-06-28 品質の誤認を生じさせるおそれのある商標登録

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

学術的・難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。メルマガの購読(購読料無料)は、以下のフォームから行えます。

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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

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1 今回の判例 品質の誤認を生じさせるおそれのある商標登録

知財高裁平成27年12月25日判決

 A社は、以下の商標を出願しました。
  商標   「Tiara」(標準文字)
  指定商品 第14類 「身飾品 (「宝飾品としての
       ティアラ」を除く」

 しかし、同出願は、商標法4条1項16号の「商品の品質の誤認を生じるおそれ」 がある商標にあたるとして拒絶査定を受けました。A社は拒絶査定不服審判を起こし、同時に指定商品を「イヤリング、ネックレス、ブレスレット、ペンダント、宝石ブローチ、指輪、ピアス」に補正しました。

 しかし、それでも当該拒絶の判断が覆らなかったため、A社は、当該審決の取消しを求める訴訟を起こしました。

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下のとおり判断しました。なお、以下は分かりやすさを重視しており、厳密性は若干犠牲となっている点、ご留意ください。

● 16 号の「品質の誤認」の意味は、需要者において、本願商標から一般に認識される商品の特性と実際に指定商品が有する特性とが異なるため、本願商標を指定商品に使用した場合に「商品の品質の誤認」を生ずるおそれがあることをいう。

● 「ティアラ」といえば、宝石をちりばめた婦人用の冠型頭飾りで、装飾のために身に付ける身飾品を意味する。他方「イヤリング」等の指定商品も装飾のために身につける身飾品に属するものであり、これらの商品は、特に結婚式等で身につける商品として併せて紹介され、展示、販売されることが多い、互いに関連する商品である。

● また、「ティアラ」とイヤリングは、その形状、身につける部位等が異なる点で、別の種類の身飾品である。

● そうすると、互いに関連する商品であるとともに、別の種類の商品であって、本願商標が表示する特性とは異なる特性の指定商品であるので、商品の品質の誤認を生ずるおそれがある。

3 解説

(1)商標法4条1項16号の不登録事由

 商標法には、登録できない商標がどんなものかについて、様々なものを列挙しており、本件で扱われた、4条1項16号の「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」もそのひとつです。

 これは、おおざっぱにいえば「商標全体から得られるイメージ」と「実際に使用する商品・サービス」が異なり、消費者が商品を選ぶ際に誤解を生じる恐れがあるものをいいます。

(2)商標法4条1項16号の不登録事由に関する具体例

 具体的なイメージを持っていただくために、最近の審決例で扱われた具体例を見ていきたいと思います。

 2015年8月11日審決(無効審判)
  登録商標 「Swisscy」(3文字目の「i」には、頭に「・」が付されていない)
  指定商品 第14類「腕時計、時計バンド、時計の文字盤、時計
       鎖、時計側、時計用化粧箱、ブレスレット、ネックレス、指輪」
  結論   無効(「腕時計、時計バンド、時計の文字盤、時計鎖、時計側」について)
  理由   本件商標を「スイス法令に準拠していない腕時計並
       びにスイス製でない時計バンド等」について使用し
       た場合、これに接する需要者は、当該商品があたか
       も「スイス法令に準拠した腕時計又はスイス製の時
       計バンド等」であるかの如く、商品の品質の誤認を
       生ずるおそれがある
 

 2015年5月22日審決(無効審判)
  登録商標 tm1
  指定役務 第41類「ゴルフ施設及びゴルフ練習施設の提供、ゴ
       ルフ練習場の提供(以下略)」
  結論   全部無効
 

 2013年6月18日審決(無効審判)
  登録商標 tm2
  指定役務 第20類「いす」、その他
  結論   無効(第20類「いす」について)
  理由   本件商標をその指定商品中「いす」に使用するとき
       は、当該商品が白樺を原材料に使用した「いす」で
       あると認識され、白樺を原材料として使用していな
       い「いす」に使用すると、当該商品が白樺を原材料
       としてなるものとその品質について誤認を生ずるお
       それがある
 

 2015年06月25日審決(無効審判)
  登録商標 tm3
  指定役務 第33類「日本酒」
  結論   無効(「第33類 米を原材料としない日本酒」について)
  理由   指定商品中、「米を原材料としない日本酒」に使用
       したときは、あたかも、「米を原材料とする日本酒」
       であるかの如く、その商品の品質について誤認を生
       じるおそれがある
 

(3)実務上の留意点

 
 商標は現代において重要な役割を果たしています。良い商標やブランドを選択しアピールできれば、顧客が商品を選択するにあたって商標に惹きつけられて選んでくれるようになるなど有利な力を発揮するからです。

 この点、ある商品の特徴・種類・内容を示す商標が好まれて選択されることが多く見られます。このネーミングの特徴は、消費者が商品・サービスの特徴を比較的短期間に記憶しやすいという点にあります。

 しかし、商品の特徴を直接的に表すネーミングですと、商標法3条1項3号の記述的商標に該当するおそれがあるほか、商標法4条1項16号にも抵触するおそれがあります。それで、特徴をうまく伝えつつ、暗示するようなネーミングを狙うというのは一つの戦術かもしれません。

 例えば、小林製薬さんが出しているシミ対策の薬として「ケシミンEX」というものがあり、実際に「ケシミン」をはじめとする複数の商標が登録されています。しかしこれが、「シミケシEX」だとしたら、シミ対策以外の薬に使用すると消費者が品質誤認をしてしまうという理由で、一部の登録できなかったかもしれません。そのような意味で、上のネーミングは、商品の特徴をうまく暗示しつつ商標法もクリアできるネーミングといえます。

 商標のネーミングは、もちろん売上に寄与するネーミングであることは重要ですが、うっかりと商標法上登録できない商標を選択するならば、後々他社に模倣されても排除のための効果的な手が限られるなど、管理上大きな支障が生じます。

 それで、商標法の観点から、商標を選択する際には、すぐに登録するか否かは別としても、弁理士や商標に詳しい弁護士への相談し、登録可能性を見極めておくことは、中長期的視点と自社の利益の保護から重要となると考えられます。



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