2017-12-13 立体商標の基礎

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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

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知財高裁平成29年9月27日判決

 A社は、カジノなどで使用されるカードシューと呼ばれるトランプ繰り出し装置につき、指定商品を 「トランプに内蔵印刷されたトランプ識別コード識別認識機能及び識別認識結果によりトランプの真偽又はゲームの勝敗を判定するプログラムを内蔵してなるトランプ繰り出し装置」として、立体商標の登録出願をしました。

 具体的な出願内容の一部(画像)は以下のとおりです。

 A社の出願商標は、一般的なカードシューと共通の特徴として、横長の箱状、上面がなだらかに傾斜している、前面が傾斜している、半円状の開口部がある、などの形状を有していました。他方、A社の出願商標に特徴的な形状として、輪郭を曲線としていること、ランプ・ボタン・スイッチなどの立体的形状があることなどが挙げられます。

 しかし、A社の出願は拒絶査定を受け、不服審判請求に対しても特許庁はA社の主張を認めませんでした。そのため、A社は特許庁の審決の取消を求める訴訟を提起しました。

 なお、実際の訴訟では他にも争点がありますが、今回は商標法3条1項3号(商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標かどうか)の点のみを取り上げます。

裁判所の判断

 知財高裁は、以下の理由によりA社の出願商標の立体的形状には「識別力」がないとして、特許庁の判断を維持しました。

● A社の出願商標と一般的なカードシューに共通する形状は、トランプカードを格納して上から一枚ずつ前方に滑らせて円滑に取り出すという機能を効果的に発揮させるなどの目的で選択されるものであり、商品の出所表示・自他商品識別標識としての機能を有するとはいえない。

● A社の出願商標の特徴的な立体的形状である、全体として曲線を輪郭として用いていることについては、曲線を輪郭とするカードシューは他にも存在し、通常採用されている形状の範囲を超えるものとまでは認められない。

● ランプやボタン、スイッチ等の特徴的形態についても、電子的な機能を有する商品の機能を発揮させるために、これらを搭載することが通例である。

● したがって、A社の出願商標の立体的形状は、客観的に見れば、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法3条1項3号に該当するため、登録ができない。

解説

(1)立体商標制度とは

 本件では、立体商標の登録の可否が問題となりました。そこで本稿では、まず、立体商標の基礎知識についてご説明したいと思います。

 立体商標とは、立体的な形状を商標として登録し保護するものです。それは、商標が、商品やサービスの出所を示す「印」として機能するところ、ケンタッキーのカーネルおじさん、不二家のペコちゃん人形などのように、立体的形状が「印」として機能する場合があるからです。

 立体商標として登録が可能なものには、商品そのもの、商品の包装、サービスの提供の用に供する物、広告として使用する広告塔等が含まれます。

(2)立体商標の登録が認められる要件

 立体商標の登録が認められる要件については、他の商標と比べると少々高いハードルがあります。

 まず、ある立体的形状が、「商品等の形状そのもの範囲を出ない」ものである場合、登録は認められません。例えば、その形状が、商品等の機能や美感に資する目的のために採用されたと認められる場合です。また、ある形状が、「極めて簡単で、かつ、ありふれた立体的形状の範囲を超えない」ものも、登録は認められません(以下に、特許庁が「立体商標の識別力に関する審査の具体的な取扱いについて」において掲げる具体例を引用しています)。



 なぜなら、これらの形状は、商標が備えるべき商品の出所を示す「印」としては機能していないと考えられるからです。

 また、形状自体にはただちに商標として登録できるほどの識別力がないとしても、同じ形状を長年にわたり継続して使用すること(永年使用)により、消費者がその形状とその出所(メーカーなど)を結びつけることができるようになるに至ったと認められる場合には、登録が認められることがあります(商標法3条2項)。登録された例としては、「スーパーカブ」の形状やヤクルトの容器などがあります。

 

(3)ビジネス上の留意点

 立体商標を登録するビジネス上の利点としては、リリース前に意匠として出願ができなかった場合に、商標権としての立体的形状の保護が考えられます。

 もっとも、他社が同一又は類似の立体的形状を採用してきた場合、これが「商標としての使用」として自社の立体商標権が主張できるのか、という点は難しい問題がはらむのですが、少なくとも、立体商標があれば、他社への大きな牽制とはなります。また、意匠権の保護が設定登録から20年であるのに対し、商標権は事実上半永久的に存続しますから、立体的形状を「ブランド」として捉え、これを永続的に保護するという観点からは商標権にメリットがあります。

 もっとも、現在の運用としては、特に商品そのものの形状については、形状自体から立体商標として登録できるほどの識別力が認められる場合は少なく、長期にわたる使用実績が問われることが少なくありません。

 それで、実際のビジネスにおいては、新たな商品の形状の保護を図るには、まずは意匠登録を検討する必要は依然としてあるように思います。それとともに、自社オリジナルの特徴的な形状を長期間にわたって使用し、販売数の実績を積み、広告宣伝においても、形状だけで、あの会社の商品だ、とイメージしてもらえるような戦略を立て実施することによって、その形状が識別力を獲得し、立体商標として保護される可能性も高まると考えられます。

弊所ウェブサイト紹介~商標法 ポイント解説

弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した商標法については

  http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/

において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
において解説に加えることを希望される項目がありましたら、メー
ルでご一報くだされば幸いです。



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