2018-11-27 他者の商標登録を争う制度

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

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知財高裁平成30年7月10日判決

 米国アップル社が登録を得た商標「APPLE WATCH」に対して、ベストライセンス株式会社(BS社)が、引用商標「APPLE WATCH」(標準文字)を理由に商標登録異議を申し立てました。

 これに対して特許庁は、登録を維持するとの決定をしました。そして、BS社より、その決定を取り消すべき旨の訴訟が提起されれました。

裁判所の判断

 裁判所は以下のように判断し、BS社の主張を認めませんでした。

・ 商標法43条の3第5項は、登録異議において登録を維持する決定に対しては不服を申し立てることができないと規定する。

・ このように、本件の決定に対しては不服を申し立てることができないから、決定の取消を求める訴えは、同規定に違反して不適法である。

解説

(1)他者の商標の登録を争う方法

 本件は、商標権の登録異議申立に対して、登録を維持すべきという特許庁の決定の取消を求めた訴訟ですが、そもそも商標法の明文規定に反する訴えであり、却下されたのは当然といえます。

 さて、他社が出願中の商標、又は登録を得た商標の中に、自社のビジネスにとって障害となりうるものが発見されることがあるかもしれません。このような場合に、本来登録を受けるべきでない商標の登録を防止したり、覆したりする制度があります。

 具体的には、以下のような方法があります。

(a)情報提供制度
 商標が出願されると、後にその出願が公開されます。この場合、第三者が、特許庁に対し、当該出願が商標法の要件を満たしていない理由について、情報や資料を提供することができます。

(b)商標登録異議制度
 ある商標が登録された場合、第三者が特許庁に対し、その登録の取消を申し立てることができる制度です。今回ご紹介した事例は、この制度に関するものです。

(c)無効審判
 登録された商標について無効とすべき理由があると考える場合に特許庁に審判を請求できる制度です。

(d)不使用取消審判制度
 他社が登録を受けている商標が実際に使用されていないと思われる場合があります。この場合に、当該商標の登録を取り消す審判を求める制度です。

(2)各制度の違い

 各制度には種々の違いがありますが、数点に絞って見てみたいと思います。

(ア)手続を行える当事者
 情報提供、登録異議申立、不使用取消審判は誰でも手続が可能です。それで、登録を争いたい商標の権利者等が、自社の取引先であるとか、表向きはもめたくない競業先であるという場合でも、自社の名前を出さずに手続を進めることが実務上珍しくありません。
 
 他方、無効審判を請求するには、利害関係が必要と解されていますので、この手続が使用できない場合もあります。

(イ)手続を行える期間
 情報提供については、特許庁に係属している商標登録出願について行うことができます。つまり、拒絶査定が確定した場合、設定登録された場合、取り下げられた場合等には、情報提供を行うことはできません。

 商標登録異議申立も、登録公報の発行から2か月以内という期間の制限があります。

 他方、無効審判については、原則としていつでも無効審判の請求が可能です。ただし、多くの無効理由は、商標登録日から5年以内に無効審判を請求する必要がありますので、これを目安とするほうが安全です。

 また、不使用取消審判は、登録から3年経過した後ならいつでも申し立てることができます。

 以上のように、他者の商標の登録を争う方法は種々あり、一長一短がありますが、これらの手続を利用して、不当な商標登録を防止したり覆したりできれば、自社のビジネスへの悪影響をできるだけ小さいものにとどめることができるかもしれません。

 具体的なアクションにおいては専門家への相談と助力が必要ですが、どんな制度があるのかを知っておくだけでも損はないでしょう。

弊所ウェブサイト紹介~商標法 ポイント解説

弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した商標法については

  https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/

において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです。



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