2011-01-19 製品の比較表と調査義務

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

学術的・難解な判例の評論は極力避け、分かりやすさと実践性に主眼を置いています。経営者、企業の法務担当者、知財担当者、管理部署の社員が知っておくべき知的財産とビジネスに必要な法律知識を少しずつ吸収することができます。メルマガの購読(購読料無料)は、以下のフォームから行えます。

登録メールアドレス    

なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

以下の検索ボックスを利用して、トピックページ(メルマガバックナンバー)から検索できます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1 今回の判例 製品の比較表と不正競争
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 大阪地裁 平成22年1月28日判決

 Y社は、社会保険労務士を対象とする業務支援ソフトを販売して
いました。

 Y社は、2008年3月5日から3月19日までの間に、全国数
か所で製品説明会を開催し、自社のソフトウェアと競合他社である
X社が提供するソフトウェアとの比較表を来場者に配布していまし
た。

 この比較表では、X社のソフトウェアには給与明細のインターネ
ット配信の機能が備わっていないと記載されていましたが、X社の
ソフトウェアはバージョンアップされ、3月17日からこの機能が
備わるようになっていました。

 X社は、来場者に対し虚偽の内容を記載した比較表を配布したこ
とが不正競争防止法違反にあたるとして、Y社に対して損害賠償請
求をしました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 裁判所は、以下のように判断し、X社に対する損害賠償を命じま
した。

(1)Y社の比較表は、X社のサービスの機能が実際よりも低いこ
とを示すもので営業上の利益を害するものと認められる。

(2)X社のソフトウェアが給与明細のインターネット配信の機能
を備えるようになったことは1月と2月に新聞広告に掲載されてお
り、Y社が容易に知ることができた。X社のソフトウェアの機能に
ついて間違った比較表を配布したY社に過失があった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

(1)不正競争防止法と信用毀損行為

 不正競争防止法2条1項14号は、競争関係にある他人の信用を
毀損する行為を不正競争行為としています。

 具体的な要件は以下のとおりです。

1 争いとなっている両者間に競争関係にあること
2 ある事実について告知又は流布行為があること
3 2の事実が虚偽であること
4 2の告知又は流布が他人の営業上の信用を害すること

 したがって、例えば,ライバル会社、競争相手の取引先に対して
、当該競争相手の商品についてネガティブなことを告げたり、ホー
ムページ上で告知する場合は、十分な注意が必要です。よくある例
としては、自社で特許権を持っており自社製品を製造しているとし
て、競争相手がその特許権を侵害した製品を製造又は販売している
ように思え、競争相手の取引先に対し,競争相手の製品が自社の特
許権を侵害しているといったことを告知する場合です。

(2) 製品の比較表と調査義務

 本件のように、他社製品との比較表を配布する場合には、もしそ
の比較表に記載された他社製品の機能についての記載が誤っている
場合、競合他社から訴訟を提起され、場合によっては差止の命令や
損害賠償の命令を受けるというリスクがあることを、認識しておく
必要があります。

 このようなリスクをできる限り回避するためには、まず、他社製
品との比較表を作成する際、他社製品の機能について誤った記載が
ないような十分な調査が必要と思われます。具体的には、競合他社
のウェブサイト、製品カタログ、広告、仕様表、場合によりマニュ
アルなどを入手できるでしょう。さらに、いったん作成した比較表
について、他社製品の新機種の販売状況・改良状況・機能追加状況
等、定期的に情報収集し、比較表の正確性を随時チェックすること
も重要となります。

 また、十分な調査をしたにもかかわらず結果的に誤りが入り込ん
だ場合には「過失」がない、ということで免責される余地もありま
すから、どのような資料からどのような判断をしたのか、調査資料
を残すとともに、調査資料のどの記載からどんな判断をしたのかの
記録を残しておくことも、できる限り行っておくことは重要といえ
るでしょう。

 さらに、このような営業資料は、会社全体として監修・管理する
必要もあると思われます。例えば、営業担当の従業員が、自己の判
断で十分な調査もなく他社製品との比較表を制作し、チェックされ
ることなく配布するような事態があるとします。しかし、この比較
表に誤りがあった場合でも、会社としては責任を負わなければなり
ません。それで、個々の従業員に対し、このような行為を慎むよう
周知徹底することも重要と思われます。



メルマガ購読申込はこちらから

弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」は、以下のフォームから行えます。

登録メールアドレス    

 なお、入力されたメールアドレスについては厳格に管理し、メルマガ配信以外の目的では使用しません。安心して購読申込ください。



法律相談等のご案内


弊所へのご相談・弊所の事務所情報等については以下をご覧ください。



Copyright(c) 2015 弁護士法人クラフトマン IT・技術・特許・商標に強い法律事務所(東京丸の内・横浜)  All Rights Reserved.