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2011-06-07 建物建築請負人の請負代金債権と敷地の商事留置権

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

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1 今回の判例 建物建築請負人の請負代金債権と敷地の商事留置権

東京高裁平成22年7月26日決定

 X社は、A社が所有する甲土地の抵当権者であるところ、甲土地について競売の申立てをしました。

 他方、破産会社であるB社の破産管財人C氏は、甲土地につき商事留置権を主張しました。具体的には、破産手続前から、B社は、A社との間で締結した、甲土地上に乙建物を建築する旨の建築請負契約と追加請負工事契約に基づき約2億7000万円の請負代金債権の8割の残代金と、その他の債権の合計元金約5億5000万円を有していると主張していました。そして、B社は乙建物・甲土地の占有を維持し続けていたところ、B社の破産手続開始決定後、破産管財人のC氏がB社の占有を引き継ぎました。

 そのため、甲土地についての競売の手続きの際、評価人(売却価格を定めるために不動産を評価を行う人で、裁判所が選任する人)は、この商事留置権が成立することを前提として、甲土地の評価額を一括価額2万円とする旨の意見書を提出しました。そのため、裁判所は、甲土地の競売を無剰余を理由として取り消しました。

 これに対し、X社が不服を申し立てました。

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下のように判断し、X社の不服申立を認めました。

  • 商人間の留置権の沿革・趣旨に鑑みると、不動産は商法521条所定の商人間の留置権の対象とならない。
  • 債務者の所有の物等について商事留置権が成立するには、それが「商行為によって自己の占有に属した」ことが必要であり、取引目的の実現の際、取引目的外の物に占有を及ぼし、それが偶々債務者所有であったという場合のその目的外の物は「商行為によって自己の占有に属した」とはいえない。
  • 本件の場合も、B社は、乙建物の建築・引渡のために甲土地を占有したが、甲土地が偶々A社の所有地であったというにすぎず、B社について、甲土地が「商行為によって自己の占有に属した」ことはない。

3 解説

(1) 商事留置権の概要

 留置権とは、民法上・商法上認められる一種の担保権です。他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまで、その物を留置する(引渡を拒む)ことを内容とする権利です。例えば、自動車工場が、顧客の自動車を修理し修理代金債権が発生したとき、顧客からこの修理代金の弁済を受けるまで当該自動車の引き渡しを拒める、というのが例です。

 留置権には、民法に定める留置権と、商法に定める商事留置権があります。

 そのうち、商事留置権とは、商法521条に定めるもので、その特徴は、目的物と被担保債権の間に牽連性がなくてもよいとされているところです。つまり、商取引アに基づく債権を自社が相手方に対して有していたとします。そして、自社が、その取引アとは全く違う取引イによって、取引の相手方の所有物Pをたまたま手元に持っていたとします。その場合には、その所有物Pと商取引アに基づく債権との間には「牽連性」がありませんが、それでも、この所有物Pを商取引アの債権の担保として、留置権を主張することができます。

 例えば、機械の製造を受託している会社Xが、機械Aの製造の委託を受けて製造し、委託会社Y社に引き渡した後、委託代金債権が発生したとします。他方、X社が、Y社から、Y社所有の工作機械Bの貸与を受けており、その貸与期間が過ぎたとします。しかし、X社は、商事留置権を行使し、Y社から、前記委託代金債権の弁済を受けるまで、この工作機械Bの拒むことができるわけです。

(2) 債務者倒産時の優先弁済効

 商事留置権の担保力が特に発揮されるのは、債務者(相手方)が破産等の倒産手続に入った場合です。この場合、民法上の留置権とは異なり、留置した物について優先弁済権が認められています(ただし、民事再生手続における商事留置権の優先弁済権については、東京地裁平成21年1月20日判決はこれを否定しています。)。

 例えば、債務者が破産宣告を受けたとしても、商事留置を主張できる債権者は、破産管財人を相手に、動産競売の申立を行えば、一定の範囲内で債権を回収することができます。

 この商事留置権は、ある場面では債権回収の一つの強力な手段となりうるものですから、頭に入れておいて損はないと思われます。



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