2015-04-07 利用規約の模倣と著作権侵害

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1 今回の判例 利用規約の模倣と著作権侵害

東京地裁平成26年7月30日

 インターネットを通じて時計修理サービスを提供するA社が、サービスの利用規約を含むウェブサイトを公開していました。

 ところが、同じく時計修理サービスを提供するB社が、ウェブサイトの文言、トップバナー画像、サービスの利用規約等がA社のウェブサイトとよく似たウェブサイトを立ち上げて運用していることが判明しました。

 そこで、A社は、B社がA社のウェブサイトの著作権を侵害したと主張して、不法行為に基づく損害賠償金1000万円の支払いとウェブサイトの使用差止を求めて、訴訟を提起しました。なお本稿では、利用規約に関する判断に絞って解説します。

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下のとおり判断してA社の利用規約に対する著作権侵害を認め、損害賠償とウェブサイトの該当部分の使用差止を認めました。

● 規約の性質上、規約で取り決める事項は、ある程度一般化、定型化されたものであって、その表現はおのずと限られたものになるから、通常は著作物性が否定される場合が多い。

● しかし、その規約の表現に全体として作成者の個性が表れているような特別な場合には、著作物として保護すべき場合もあり得る。

● 本件では、腐食や損壊の場合に保証できないことがあることを重ねて規定した箇所等、同一の事項を多面的な角度から繰り返し記述している点において、A社の個性が表れていると認められ、著作物と認めるのが相当である。

3 解説

(1)制作物が保護されるための「著作物性」とは

 少なからぬ人が誤解している点ですが、どんな文章や制作物であっても著作権の保護を受けられる、というわけではありません。

 この点、著作権法は、著作権が発生する制作物、すなわち著作物について、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています(2条1項1号)。

 そして、ここでいう「創作的」に表現されたというためには、筆者の何らかの個性が表現されていることが必要であるとされます。

 それで、文章自体がごく短かかったり、表現上制約があるため他の表現が想定しにくい場合や、表現が平凡かつありふれたものである場合には、筆者の個性が表現されたものとはいえないから、創作的な表現であるということはできず、著作物とはいえないとされています。

(2)ビジネス上の留意点

 一般に、契約書や利用規約といった規定類は、内容や構成に関する表現の幅が小さいため、通常は著作物性が認められないと考えられています。それで、今回の判例は、若干特殊な事例であるといえるかもしれません。

 しかし、著作物性が認められにくいからといって、またウェブ上で公開されているからという理由で、他社の契約書や利用規約を安易に模倣してそのまま使ってしまうのは適切とはいえません。

 その一つの理由は、第三者が資金や労力をかけて制作したものにタダ乗り、つまり「フリーライド」して利益を得るなら、著作権侵害にはならない場合でも、民法上の「不法行為」が成立し、損害賠償責任を負うこともあり得るからです。

 例えば、「Yahoo!」に有料配信している記事の見出しを無断利用して「一行ニュース」として配信していた事案で、記事の見出しそのものは著作物に当たらないと判断しつつ、民法上の不法行為の成立を認めて損害賠償を命じた裁判例があります(知財高裁平成18年3月15日判決)。

 また、他社の契約書や利用規約の安易な模倣は、ビジネス上も得策とはいえません。契約書や利用規約の作成は、ビジネスの設計図ともいうべきものであって、ビジネスの組み立てやスキーム、自社の意図、サービスの流れ、想定リスクや問題回避といった諸要素を文章に落としこむ作業だからです。他方、他社が作成した契約書や利用規約を吟味せずにそのまま使うなら、自社の意図や実情に沿わない規定によって運用上の不都合が生じたり、さらには、自社が不利益を被ったりすることもありえます。

 それで、他社の契約書や利用規約を参考にしつつも、こうしたドキュメントは、自社特有のスキームやリスクを考えて作り上げるもの、という点は頭に入れておく必要があります。そしてその際には、弁護士のアドバイスも役立つことと思います。



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