2019-06-06 外注先の著作権侵害と自社の責任

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

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東京地裁平成31年3月13日判決

 A社は、菓子などの加工食品の製造販売を営む会社です。A社は、菓子の製造をB社に委託していたところ、その菓子のパッケージに含まれているイラストは、B社から、包装箱の企画や制作等の委託を受けたC社が提案したものでした。

 ところが、このイラストは、イラストレーターD氏がブログに掲載していたイラストと酷似していたため、D氏は、A社に対し、著作権の侵害等を理由に差止請求や損害賠償請求をしました。

裁判所の判断

 裁判所は、A社のパッケージのイラストがD氏の著作権の侵害であることを認定した上で、以下のように判断し、A社の責任を認めました。

・ A社は、加工食品の製造及び販売等を業とする株式会社であり、その製造を第三者に委託していたとしても、C社に対してそのイラストの作成経過を確認するなどして他人のイラストに依拠していないかを確認すべき注意義務を負っていた。

・ D氏のイラストとA社パッケージのイラストの同一性の程度が非常に高いことから、A社らが確認をしていれば、侵害を回避することは十分に可能であった。

・ にもかかわらず、A社は確認を怠ったから、注意義務違反が認められる。

解説

(1)制作物の作成を他者に委託した場合と著作権侵害

 今回の製品パッケージのように、事業上の必要から、他者に制作物の作成を委託することがあるかもしれません。この場合、今回のように、制作物が第三者の著作権などを侵害するものであった、という事態は避けなければなりません。

 この点まず、自社の製品やパッケージに使用した制作物が、他者に委託したものだったとしても、これが第三者の著作権を侵害しており、第三者から責任追及を受けた場合、その第三者との関係では、委託先のせいにはできない(責任を免れることは通常はできない)、という点は頭に入れておく必要があります。

(2)自社を守る方策の例

 上のような事態を事前かつ完全に防ぐ手立てというのはなかなかありませんが、一つは、判決が述べるとおり、委託先に対して、制作物の作成経過を確認し、確認した作成経過を証拠化しておくことかもしれません。

 もっとも、この作業も相当な手間であることは事実なので、ビジネスの現場でどこまできちんと行えるかは疑義があるかもしれません。この点は、主力商品になるような重要なものに絞るといった現実的な運用もあり得るかもしれません。

 また、リーガル面での策としては、委託先に対して、業務委託契約において、制作物が、第三者の著作権などの権利を侵害しないものであることを保証してもらうこと、また、万一権利侵害の紛争に自社が巻き込まれた際に、紛争解決費用を委託先が負担することを定めておくという手も、打っておくべき重要な手段といえます。

 もちろん、この契約の規定があっても、委託先による権利侵害行為自体を事前に防止することはできませんが、委託先に対して慎重に業務を行う注意喚起になるかもしれませんし、最低限、自社の金銭的損害を少しでも軽減する手段となります。

弊所ウェブサイト紹介~著作権法 ポイント解説

弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した著作権法については、

https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/chosakuken/index/

にあるとおり、著作物の定義、利用方法、パブリシティ権の問題、権利行使の方法まで、著作権法に関する解説が掲載されています。必要に応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイトにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたら、メールでご一報くだされば幸いです。

 



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