2023-08-22 伝承に基づく創業年の表示と不正競争

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今回の事例 伝承に基づく創業年の表示と不正競争

 大阪高裁令和3年3月11日判決

 京銘菓である「八ッ橋」を製造販売するA社は、店舗の看板などに「創業元禄二年」「since 1689」 記載の表示を付し、商品説明書等にもその旨を記す表示を付した商品を製造販売していました。

これに対して同様に八ツ橋を製造販売するB社は、これらの表示が正当な根拠に基づかず、A社の八ッ橋の品質等を誤認させる表示であって、不正競争防止法に定める品質等誤認表示に当たることを理由に表示の差止や損害賠償等を請求しました。

 裁判所は、以下のように判断しました。

・品質等誤認表示の規定における『品質』『内容』とは、需要者が当該表示を商品の品質や内容等に関わるものと明確に認識し、商品選択の重要な基準となるものである場合である。

・対象となるのは、客観的に真偽を検証、確定することが可能な事実であり、客観的資料に基づかない言い伝え、伝承の類として需要者が認識するような事項は、対象とならない。

・八ッ橋の起源や来歴については複数の説が存在し、多くが伝承にとどまり、客観的に真偽を検証、確定することが困難である。

・一般消費者の認識としても、300年以上前の江戸時代に起こった事柄が客観的に検証、確定できないことは、経験則上容易に推測できるから、A社の表示は、需要者に商品の品質や内容の誤認を生ぜしめるものであるとはいえず、品質等誤認表示に当たらない。

解説

 不正競争防止法2条1項20号は、商品・サービスの原産地・品質・内容等について誤認を生じさせるような表示する行為を不正競争行為として定めています(品質等誤認行為)。

 以前なら多少大目に見られていた表示や宣伝であっても、これまで以上にコンプライアンスが重視される現在においては、消費者から厳しい目が向けられるようになっています。では、どのような行為がこれまで品質等誤認行為と判断されてきたのでしょうか。以下、一部をご紹介します。

・ 富山県氷見市外で製造されており、また原材料も氷見市内で産出されていない「うどん」について「氷見うどん」等の表示を付して販売したケース

・ 級別の審査及び認定を受けなかったため酒税法上清酒2級とされた清酒に清酒特級の表示証を貼付したケース

・ 本みりんではない液体調味料の容器に「本みりんタイプ調味料」という表示を付したケース

・ 京都で製造されたものでない商品に「京の柿茶」という表示を付したケース

・ キシリトール入りガムについての「約5倍の再石灰化効果を実現……」などという比較広告をしたケース

・ 電子ブレーカーにつき、電気用品安全法所定の検査を受けていないにもかかわらず、PSEマークの表示を付して販売しケース

・ 特許権消滅後も製品に特許表示をしていたケース

・ 説明書に「世界のヘアピンコレクション」と記載してヘアピンの箱に各国の国旗を貼り付けていたケース

・ 販売するろうそくに、燃焼時に発生するすすの量が90%減少すると表示をしたケース(その用効果は実際にはなかった)

・ 自己の製品はオリゴ糖100%である表示をしていたが実際には53%であったケース

 以上のように、品質等誤認行為とされたケースは多岐に及びます。そしてこうした行為については特に競業他社が厳しく目を光らせていることも少なくありません。

 そして、不用意な表示が不正行為行為であると認定されて訴訟で敗訴した場合、当該商品やサービスの提供ができなくなったり、メディアによって報道されて信用を失ってしまうといったリスクがあります。また、商品やサービスが消費者向けものである場合には、不正競争防止法のみならず景品表示法違反も問われる結果、行政から処分を受けたりそれが公表されてしまうリスクも無視できません。

 そして、今回の事例のように裁判の結果勝訴するケースもあるでしょうが、どんな選択をするとしても、商品の表示においては、訴求力というビジネス上の必要のほか、コンプライアンスの観点からも十分な検討が必要となると考えます。

お知らせ:The Best Lawyers in Japan 2024に選出されました

Best LawyersによるThe Best Lawyers in Japan 2024において、弊所代表石下雅樹弁護士が、”Intellectual Property Law(知的財産法)部門”に選出されました。

https://www.bestlawyers.com/current-edition/Japan

Best Lawyersによれば、同アワードは、”The Best Lawyers Purely Peer Review”(同地域・同じ法律分野内の弁護士による選出意見を集約して選出する調査手法)によって選出しているとされています。

なお、同部門で選出された他の事務所には、弁護士法人イノベンティア、森・濱田松本法律事務所、西村あさひ法律事務所などが含まれています。



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