2026-04-21 共同研究契約と研究成果の公表
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今回の事例 共同研究契約と研究成果の公表
知財高裁令和7年2月13日判決
青ノリ等の種付け事業を営むA氏と、地方公共団体が設立したB農林水産総合技術支援センターは、「水車を利用した青ノリの採苗技術の開発」に関する共同研究契約を締結していました。
同契約では、研究成果の公表の際には、あらかじめ相手方に通知の上、承諾を得なければならない旨の規定がありました。
Bセンターが、事業報告書やウェブサイトにおいて当該研究に関する記事を掲載したところ、A氏は、当該行為がBセンターの契約違反であるとして、当該地方公共団体に対して損害賠償請求をしました。
裁判所は、青ノリの水車採苗という着想自体は、同共同研究以前から存在しており、共同研究の目的は採苗の具体的条件の解明等にあったところ、Bセンターによる公表内容は単に「水車式採苗装置による付着が可能である」ことを示したにすぎず、具体的な技術内容(好適な状況や条件等)を明らかにするものではなかったから、研究成果の公表には当たらず、契約違反は認められない、と判断しました。
解説
現代では様々な形の共同研究があります。研究機関同士の共同研究のほか、大学や研究機関と企業との共同研究も多くあります。後者については、大学や研究機関側としては研究成果の社会還元というメリットがあり、企業側としては研究者の知見や経験の活用といったメリットがあります。
本稿では、今回の事例に関連し、共同研究契約における留意点のひとつである研究成果の公表について触れたいと思います。
大学や研究機関が当事者となる共同研究においては、研究者は、その社会的役割から、成果を論文や発表の形で広く公表することを希望することが少なくありません。
他方、企業の立場では、特許等の出願を行う前に新規の成果が公表されてしまうと、その後の特許等の出願において支障が生じかねません(ただし特許法30条の新規性喪失の例外を適用する道はありますがリスクは残ります)。また、そもそも研究成果の中には、企業としては、早晩公開されてしまう特許出願をあえて行わず、ノウハウとして秘匿しておきたい場合もあります。
こうした点を踏まえると、例えば共同研究契約においては、双方当事者の立場や利益の調整の観点から、研究成果の公表についての条件を協議し、規定化しておく必要があるといえます。
一例として挙げれば、以下のような規定を定めることが考えられます(以下では「甲」が大学や研究機関であることを前提とします)。
1 甲と乙は、本件研究にかかる研究成果を公表しようとするときは、公表予定日(論文の場合投稿予定日)の●日前までに、公表方法と公表内容を書面又は電子メールで相手方に通知する。
2 前項の通知の後、甲と乙は、公表の可否及び内容について相互に誠実に協議し、当該協議によって合意に至った場合に公表が許される。ただし、甲が前項の通知をした場合は、学術研究上の成果の普及に努めるべき甲の社会的使命を考慮し、乙は、合理的な理由なく、公表自体を拒まない。
なお、次稿では、共同研究契約に関する主要な留意点のいくつかを考えたいと思います。
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