2025-04-22 ソフトウェアの開発委託と著作権

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今回の判例  ソフトウェアの開発委託と著作権

東京地裁令和6年12月23日判決

 個人事業主であるA氏は、B社からの委託に基づきソフトウェアを作成してB社に納入しました。その後A氏は、B社による代金不払いを理由に開発委託契約を解除しました。またB社は、A氏の求めに応じて当該ソフトウェアを削除し、使用を中止しました。

 以上のもと、A氏は、B社に対して、納入したソフトウェアについてはライセンスをしていないからB社による使用は著作権侵害であるとして、中止以前のソフトウェアの使用に対する損害賠償を請求しました。

 裁判所は、A氏とB社は、当該ソフトウェアの作成に関する合意をしていたから、A氏がB社に対し、黙示に(暗黙に)、当該ソフトウェアの使用のライセンスを与えていたと判断して、著作権侵害を認めませんでした。

 またA氏は契約解除によって遡ってライセンスがなかったことになるといった趣旨の主張もしていたようですが、裁判所は、ライセンスの合意の解除の効力は将来に向かってのみ生じるから、遡ってライセンスがなかったことにはならないと判断しました。

解説

 法的紛争が発生する原因の一つとなるのは、契約書がなかったり、あっても重要な規定がなかったりする場合です。

 本件のような紛争についても、開発委託契約書があって、そこに著作権の帰属やライセンスについての明示的な規定があれば、紛争発生のリスクは相当に下がったであろうと思われます。

 この点、今回の裁判のように、ユーザが開発者(ベンダ)にソフトウェアの開発を委託して納品してもらう目的はそもそもそれを使用するからなのだから、契約書に書かなくても使用できるのではないか、と思うかもしれません。

 しかしまず、実務上、発注者としては、納入を受けたソフトウェアの著作権の移転を受けることを望むことは珍しくありません。しかし、著作権のユーザへの移転については、契約書に明示されていないと認められないのが原則です。

 また、著作権を開発側(ベンダ)に残したままユーザがライセンスを受けるというケースも、ユーザが得る権利の内容や範囲を明示しておかないと、せっかくお金を出して開発してもらったソフトウェアの活用に支障が生じることがあります。

 例えば、ソフトウェアをパッケージ販売したりSaaSとして提供するために第三者にサブライセンスすることについては、契約書に明示がなければ、「当然にできる」とはいいにくいと思います。

 また、ユーザが、自ら又は第三者に委託して、当該ソフトウェアの補修、改変、拡張ができるか、についても同様です。

 以上の点から、成果物の著作権については、ユーザに移転することを望む場合はもちろん、そうでない場合も、詳細な規定を委託契約において明示することは、トラブル防止のみならず当該ソフトウェアの活用の観点からも重要ではないかと思います。

弊所ウェブサイト紹介  契約書作成・点検(レビュー)

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例えば本稿のテーマに関連した契約書関連については

https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/keiyaku/

において、「契約書」の作成において考慮すべき以下の点を含め、潜むリスクや弁護士に契約書作成・点検を依頼する意味について解説しています。

 ・契約書は中立ではない
 ・同じような内容でも書き方で効果が異なる
 ・書いていることより書いていないことが重要なことがある



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