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後遺障害解説~上肢・手指に関する障害 

 
 上肢の障害には主として欠損障害、機能障害、変形障害があります。また、手指の障害には、欠損障害と機能障害があります。 以下、各障害の内容、及び認定基準と関連する問題点についてご説明します。

上肢の後遺障害

欠損障害

 上肢を事故によって切断してしまった場合や、事故による治療の際に、手術によって切断を余儀なくされた場合に適用されます。自賠責保険では、以下の基準に従って認定されます。

第1級3号 両上肢をひじ関節以上(*1)で失ったもの
第2級3号 両上肢を手関節以上(*2)で失ったもの
第4級4号
1上肢をひじ関節以上(*1)で失ったもの
第5級4号
1上肢を手関節以上(*2)で失ったもの

(*1)「上肢をひじ関節以上で失ったもの」とは、以下のいずれかをいいます。

[1] 肩関節において、肩甲骨と上腕骨を離断したもの(腕の付け根から上肢すべてを失った場合)

[2] 肩関節とひじ関節との間において上肢を切断したもの(腕の付け根からひじまでのどこかで切断された場合)

[3] ひじ関節において、上腕骨と橈骨および尺骨とを離断したもの(およそひじ関節を切断し、ひじから先を失った場合)

(*2)「上肢を手関節以上で失ったもの」とは、[1]ひじ関節と、手関節つまり手首の関節との間において上肢を切断したもの、又は[2]手関節において、橈骨及び尺骨とを離断したもの(およそ手首から先を失ったもの)をいいます。

 機能障害

 上肢における機能障害とは、3大関節(肩関節、ひじ関節、および手関節)の動きについての障害をいいますが、3大関節ではないものの、上肢前腕の主要運動である回内・回外運動の制限も、機能障害に準ずるものとして評価されています。

 上肢の機能障害に関する認定基準は以下のとおりです。

第1級4号
両上肢の用を全廃したもの(*1)
第5級6号
1上肢の用を全廃したもの(*1)
第6級6号
1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの(*2)
第8級6号
1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの(*2)
第10級10号
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの(*3)
第12級6号
1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの(*4)

(*1) 「上肢の用を廃したもの」とは、3大関節のすべてが強直し、つまり関節がまったく可動しないか、又はこれに近い状態(健側の関節可動域の10%程度以下)に制限され、かつ、手指の全部の用を廃したものをいいます。

(*2)「関節の用を廃したもの」とは、以下のいずれかに該当するものをいいます。


[1] 関節が強直したもの

 なお、肩の関節については、肩甲上腕関節(肩甲骨と上腕骨との間の関節)が癒合し骨性強直していることがX線写真により確認できるものを含みます。

 これは、肩甲骨と上腕骨が癒合した場合、肩甲上腕関節は可動しないものの、肩甲骨自体が胸郭の上を動くことによって、ある程度上肢が可動するため、可動域の測定数値にかかわらず、上記のとおりに取り扱うものとされています。


[2] 関節の完全弛緩性麻痺、またはこれに近い状態にあるもの


[3] 人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、その可動域が健側の2分の1以下に制限されているもの

(*3)「関節の機能に著しい障害を残すもの」とは、以下のいずれかに該当するものをいいます。


[1] 関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの


[2] 人工関節・人工骨頭をそう入置換した関節のうち、上記[3]以外のもの(可動域が健側の2分の1以下には制限されていないもの)

(*4) 「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されているものをいいます。

変形障害

 上肢の変形障害にかかる認定基準は、以下のとおりです。

第7級9号
1上肢に偽関節(*1)を残し、著しい運動障害を残すもの(*2)
第8級8号
1上肢に偽関節を残すもの(*3)
第12級8号
長管骨に変形を残すもの(*4)

(*1) 「偽関節」とは、通常、骨折が生じると時間の経過とともに骨折した箇所に修復機転が進行し、やがて骨折が治癒するところ、こうした治癒機転が停止してしまった状態をいいます。

(*2)「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」とは、次のいずれかに該当し、常に硬性補装具を必要とするものをいいます。

[1] 上腕骨の骨幹部または骨幹端部(以下「骨幹部等」といいます。)に癒合不全を残すもの

[2] 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもの

(*3)「偽関節を残すもの」とは、以下のいずれかに該当するものをいいます。

[1] 上腕骨の骨幹部等に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要とするもの以外のもの

[2] 橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要とするもの以外のもの

[3] 橈骨又は尺骨のいずれか一方の骨幹部等に癒合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

(*4) 「長管骨に変形を残すもの」とは、以下のいずれかに該当するものをいいます。

[1] 次のいずれかに該当し、外部から想見できる(見てわかる)程度以上のもの

(ア) 上腕骨に変形を残すもの

(イ) 橈骨および尺骨の両方に変形を残すもの(いずれか一方のみの変形でも、その程度が著しいものはこれに該当する。)

[2] 上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの

[3] 橈骨又は尺骨のいずれか一方の骨幹部等に癒合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

[3] 橈骨又は尺骨のいずれか一方の骨幹部等に癒合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

[4] 上腕骨、橈骨又は尺骨の骨端部のほとんどを欠損したもの

[5] 上腕骨(骨端部を除く)の直径が3分の2以下に、又は橈骨若しくは尺骨(それぞれの骨端部を除く)の直径が2分の1以下に減少したもの

[6] 上腕骨が50度以上外旋又は内旋変形癒合しているもので、次のいずれにも該当することが確認されるもの

(ア) 外旋変形癒合にあっては、肩関節の内旋が50度を超えて可動できないこと、また、内旋変形癒合にあっては、肩関節の外旋が10度を超えて可動できないこと

(イ) X線写真等により、上腕骨骨幹部の骨折部に回旋変形癒合が明らかに認められること

なお、長管骨とは、上腕・前腕・大腿・下腿などの四肢の骨にみられる長い円筒状の骨をいいます。上肢の場合ですと、上腕(肩から肘まで)にある上腕骨、前腕(肘から手首まで)にある橈骨や尺骨がこれにあたります。 ただし、同一の長管骨に[1]~[6]の複数の障害が残存しても12級8号を認定します。

手指の障害

欠損障害

 手指の欠損について、自賠責保険では、以下の基準に従って認定されます。

第3級5号 両手の手指の全部を失ったもの(*1)
第6級8号 1手の5の手指または親指を含み4の手指を失ったもの(*1)
第7級6号
1手の親指を含み3の手指を失ったもの、または親指以外の4の手指を失ったもの(*1)
第8級3号
1手の親指を含み2の手指を失ったもの、または親指以外の3の手指を失ったもの(*1)
第9級12号
1手の親指、または親指以外の2の手指を失ったもの(*1)
第11級8号
1手の人差し指、中指または薬指を失ったもの(*1)
第12級9号
1手の小指を失ったもの(*1)
第13級7号
1手の親指の指骨の一部を失ったもの(*2)
第14級6号
1手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの(*2)

(*1)「手指を失ったもの」とは、自賠責保険では、親指については指節間関節以上を、その他の指については近位指節間関節以上を失ったものをいうとされています。つまり、正式な表現ではありませんが、指の先の方から、最初の関節を第一関節、次の関節を第二関節と呼ぶとすると、親指については第一関節かそれより指の根本に近い方で、また、その他の指については第二関節かそれより指の根本に近い方で切断された場合になります。

(*2)「指骨の一部を失ったもの」とは、1指骨の一部を失っている(遊離骨片の状態を含む)ことがX線写真等により確認できるものをいいますが、以下で説明する、「手指の用廃」の程度には及ばないものをいいます。

 つまり、手指の先の欠損であれば、末節骨(指先から第一関節までの骨)の半分以上を失えば「用廃」となるため、ここまではいかない程度のものが「指骨の一部を失ったもの」となります。

機能障害

 手指の機能障害に関する認定基準は以下のとおりです。

第4級6号
両手の手指の全部の用を廃したもの(*1)
第7級7号
1手の5の手指又は親指を含み4の手指の用を廃したもの(*1)
第8級4号
1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの、又は親指以外の4の手指の用を廃したもの(*1)
第9級13号
1手の親指を含み2の手指の用を廃したもの、または親指以外の3の手指の用を廃したもの(*1)
第10級7号
1手の親指、又は親指以外の2の手指の用を廃したもの(*1)
第13級6号
1手の小指の用を廃したもの(*1)
第14級7号
1手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの(*2)

(*1)「手指の用を廃したもの」とは、手指の末節骨(指先から第一関節までの骨)の半分以上を失ったもの、又は中手指節間関節若しくは近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)に著しい運動障害を残すものをいいます。

 前者では、末節骨の半分以上を失ったという「欠損障害」の状態をもって「機能障害」と評価しているわけです。

 そして、後者の「著しい運動障害」を残すものとは基本的に、健側の可動域と比較して2分の1以下に制限されているものをいいます。

(*2)「手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」とは、[1]遠位指節間関節が強直したものと、[2]屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないものまたはこれに近い状態にあるものが該当します。

ご注意事項

本ページの内容は、執筆時点で有効な法令・法解釈・基準に基づいており、執筆後の法改正その他の事情の変化に対応していないことがありますので、くれぐれもご注意ください。

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