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2005-11-24 マンション向けの録画サーバー「選撮見録」事件

ここでは、弊所発行のメールマガジン「ビジネスに直結する判例・法律・知的財産情報」のバックナンバーを掲載しています。同メルマガでは、比較的最近の判例の紹介を通じ、ビジネスに直結する法律知識と実務上の指針を提供します。

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事案の概要

平成17年10月24日 大阪地裁判決

クロムサイズ(C社)という会社が,集合住宅向けの録画サーバー「選撮見録(よりどりみどり)」という商品を販売していました。

この商品は,集合住宅の共用部分(管理人室等)に設置したサーバーに,最大5局のテレビ局の全番組を,同時に一週間分録画させることができ,居住者は,自分の部屋に設置されたビューワーを使用して,好きな時間に好きなテレビ番組を視聴することができる,というものです。

これに対し,大阪の民放5社が,C社に対し,「選撮見録」がテレビ局の著作権等を侵害しているとして,機器の販売の差止め,廃棄などを求めました。

判決の概要

【結論】 
「選撮見録」の権利侵害を肯定。販売差止請求は認容。廃棄請求は棄却。

(1)私的使用の範囲か

C社は,「選撮見録」の利用は著作権法で認められた私的複製の範囲内である,などと主張しました。

裁判所は,結論としてこの主張を退けました。

その理由は,「選撮見録」の使用時,テレビ放送を複製(録画)する主体は、「選撮見録」の設置者(管理組合など)である。他方で,複製された放送の使用者(視聴者)は,ビューワーを使用する入居者である。よって,複製の主体とその使用者が異なるからである,というものでした。

また,著作権法30条1項1号では,「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いて複製する場合」には,私的使用も許されません。裁判所は,「選撮見録」の1サーバーあたりの利用者数が多数であることから,「選撮見録」を,公衆用自動複製機械の使用に該当するとし、放送を送信可能化するものであると認定しました。

(2) 侵害の主体と差止請求

著作権法112条1項では,著作権者,著作隣接権者等は、著作権,著作隣接権を「侵害する者又は侵害するおそれのある者」に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる旨を定ています。
この訴訟の大きな争点の一つは,C社が、「侵害する者又は侵害するおそれのある者」といえるかどうか,つまり,著作権侵害の主体であると認められるかどうか,という点でした。それは,C社は,「選撮見録」を販売しているだけであり,直接的に録画行為を行っているわけではないからです。

この点,裁判所は、機器の「設置者」(マンション全体の所有者,管理組合等)が直接の侵害の主体であるとしました。したがって,著作権法112条2項に基づく販売差止の請求は,C社に対してはできない,という結論にもなりそうです。

しかし,裁判所は,「選撮見録」の販売によってほぼ必然的にテレビ局の著作隣接権の侵害が生じること,等の理由から,C社の「選撮見録」の販売行為を,「直接の侵害行為と同視」することによって,著作権法112条1項の著作権・著作隣接権を「類推適用」し,差止請求を認めました。

解説

(1)著作権と私的使用

 著作権法30条では,「著作権の目的となつている著作物は,個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは,次に掲げる場合を除き,その使用する者が複製することができる(以下略)。」と定められています。

 つまり,私的使用とは「個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用すること」と定義されているわけです。また,私的使用を目的とする複製は,使用する人が自分で行う必要があります。

 また,私的使用のための複製(私的複製)であっても「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器を用いた複製」(著作権法30条1項)においては,私的複製は許されません。文献複写機や録音・録画機器などがこれに該当します(文献複写機は経過措置で当分の間除外されています。)。典型的な例は,貸ビデオ店の店頭に設置されるダビング機を利用してビデオ等を複製する場合などです。

 以上のとおり,著作権法はいささか厳しすぎるという批判もありますが,ビジネスに著作権がかかわる場合,事前の調査をして,著作権法上問題がないか検討しておく必要は高いといえます。

C社も「選撮見録」の開発には相当なコストを投入しているはずであり,販売差止めを受けるということは,その開発コストが無駄になることを意味します。開発に入る前に,法の解釈についてできる限り確かめておく必要があります。

(2)裁判所の法創造機能

裁判所は,C社に対する差止請求を認めるにあたり,「類推適用」という方法を取りました。

法律は,世の中で生じる紛争をすべて解決する条項を網羅的に定めることは不可能です。それで,ある具体的事案において,法のどの条項も直接的に適用はできないような,法の「隙間」に生じる問題が生じます。裁判所は,その事案における具体的正義を実現する観点から,ある条項を「類推適用」し,その「隙間」にあてはめて,妥当な解決を図ろうとするわけです。

つまり,裁判所には,一種の「法創造機能」があり,ここには法のダイナミズムが感じられるところです。



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