2006-02-25 独占禁止法違反行為と救済方法

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なお、このトピックは、メールマガジン発行日現在での原稿をほぼそのまま掲載しており、その後の上級審での判断の変更、法令の改正等、または学説の変動等に対応していない場合があります。

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事案の概要

H18.1.19 東京地方裁判所判決 不公正取引差止請求事件

本件は,ヤマト運輸が,日本郵政公社に対し起こした,独占禁止法24条に基づく差止請求の訴訟です。

ヤマト運輸が公社に求めたのは,一定の料金未満の料金での一般小包郵便物サービス提供の差止,ローソンとの取引の差止です。

ヤマト運輸の主張は以下のとおりでした。

1)公社は,一般小包郵便物(ゆうパック)の新しい料金体系による役務の供給によって,「不公正な取引方法」6項の「不当廉売」に当たる行為を行った。

2)公社は,ローソンに対して,郵便局舎の余裕スペースを低額の賃料で賃貸したり,ローソン店舗内の私設郵便差出箱からの取集料を免除するなどの利益を提供して,一般小包郵便物(ゆうパック)サービスの取次所となるよう誘引することなどによって,「不当な利益による顧客誘引」に該当する行為を行った。

3)そのため,ヤマト運輸は利益を侵害されている。

判決の概要

【結論】 請求棄却

 裁判所は,ヤマト側はゆうパックの販売原価について具体的な立証をしていないこと,ゆうパックの取り扱いが増加しているにもかかわらず,赤字は増加しておらず,公社の行為は不当廉売に当たらないと判断しました。また,新料金によるゆうパックのサービス開始後も,ヤマトは売上,収益を伸ばしており,ヤマトの事業を困難にさせる恐れがあるともいえないと判断しました。
 また,公社が郵便局の余ったスペースを安い賃料で貸すなどしてローソンを郵政公社と取引するよう仕向けた,というのヤマト側の主張に対しても,裁判所は「認めるに足る証拠がない」としました。

解説

【独占禁止法と差止請求】

 今までは,独占禁止法違反行為の差止めを命じることができるのは,専門の行政機関である公正取引委員会だけであり,私人は公取委へに対し独禁法違反行為を申告することはできましたが,差止の請求権はありませんでした。

 しかし,平成12年の独禁法改正により,平成13年4月1日より,被害者は,公正取引委員会に違反行為の排除を求めることができるだけでなく,裁判所に対しても独占禁止法違反行為の差止めを請求することができるようになりました。

 独禁法24条は,「第8条第1項第5号又は第19条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され,又は侵害されるおそれがある者は,これにより著しい損害を生じ,又は生ずるおそれがあるときは,その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる。」旨を定めたのです。

 独占禁止法違反行為に係る民事的救済制度の整備により,独占禁止法違反行為による被害者の適切な救済が図られるとともに,独占禁止法違反行為に対する抑止的効果の強化が期待されていますし,具体的な状況で会社としてもこのような制度を用いて果敢に法的アクションを起こす必要がある場面が生じるかもしれません。

【差止請求が可能な独禁法違反行為】

 では,どのような行為が差止請求の対象となるでしょうか。
これは,独占禁止法違反行為のうち,「不公正な取引方法」に関するものです。具体的には,公取委が定めますが,主なものは以下のとおりです。

<共同ボイコット>

正当な理由がないのに,同業他社と共同して,特定の事業者と取引しないようにする行為です。例えば,卸売業者がある商品の価格を維持するなどの目的で,共同して,安売りを行う小売店とは取引をしないようにすることがこの一例です。

<差別対価・取扱>

 不当に,地域又は相手方により差別的な対価をもって,商品若しくはサービスを供給し,又はこれらの供給を受けること。事業者団体若しくは共同行為からある事業者を不当に排斥し,又は事業者団体の内部若しくは共同行為においてある事業者を不当に差別的に取り扱い,その事業者の事業活動を困難にさせることが含まれます。

<不当廉売>

正当な理由がないのに,供給に必要な経費を著しく下回る価格で継続して販売するなどし,競争業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせることです(今回の訴訟でヤマト運輸が主張したものの一つです)。

<欺瞞的顧客誘引>

商品の内容や取引条件について,実際のものや競争業者のものより,著しく優れている,著しく有利であると誤認させることにより,競争業者の顧客を不当に誘引することです。また,正常な商慣習に照らして不当な利益をもつて,競争者の顧客を自己と取引するように誘引することが含まれます。

<抱き合わせ販売>

商品に別の商品を不当にある抱き合わせて販売することにより,取引先や顧客に対し,別の商品の購入を強要すること等がこれに当たります(例えば売れているゲームソフトに売れ残ったゲームソフトを抱き合わせるなど)。

<排他条件付取引>

不当に,自分の競争業者と取引しないことを条件として相手方と取引をすることです。例えば,メーカーが,卸売業者や小売業者と取引する際,競争業者の製品を取り扱わないことを条件とすることによって,その競争業者の取引の機会が減少するような場合が考えられます。

<再販売価格維持行為>

正当な理由がないのに,取引先事業者に対して,転売する価格を指示し,遵守させることです。

<拘束条件付取引>

販売形態・販売地域などについて不当に拘束する条件を付けて取引することです。例えば,メーカーが製品の販売に当たって,小売業者の販売地域を制限することによって,その製品の価格が維持されるおそれがある場合が当たります。

<優越的地位の濫用>

取引上の地位が相手方に優越していることを利用して取引の相手方に不当に不利益を与えることです。例えば,有力なスーパーマーケットが,納入業者に対し,取引の条件として,取引とは直接関係のない販売協力金,協賛金の支出を要求すること,取引先の役員の人選に不当に介入すること,などがこれに当たる可能性があります。



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