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2014-11-12 「メロン熊」事件と商標権侵害における誤認混同

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1 今回の判例 「メロン熊」事件と商標権侵害における誤認混同

 

大阪地裁平成26年8月28日判決

北海道夕張市でドライブインを営むA社が、「メロン熊」という名称の、ヒグマがメロンに顔を突っ込んだデザインのキャラクターを考案し、この「メロン熊」を利用したストラップやマグネット、ボクサーパンツ等様々なグッズが販売されていました。

この「メロン熊」の使用に対し、「melonkuma」の商標を有するB社が、商標権侵害を理由に損害賠償を求めました。

なお、この「melonkuma」商標は、別の会社からB社が譲り受けたものでしたが、譲渡元の会社もB社もこの商標を使用していなかったため、不使用取消審判請求により、この商標の登録は後日取り消されています。

 

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下の各点を含む事情を総合考慮して、商標権侵害を否定しました。

● 「melonkuma」という商標自体、原告が使用してこなかったことから、原告の信用を表すものではなく、顧客を吸引する力もない。

● 他方、A社の「メロン熊」の名称とキャラクターは、平成22年末頃には、全国的に周知性、著名性を獲得し、高い顧客吸引力を維持している。

● 以上から、B社の商標と、A社の「メロン熊」のキャラクターとの間で、その出所につき一般消費者への誤認混同のおそれはきわめて低い。

● にもかかわらずB社が損害賠償請求を行うのは、A社のキャラクターの周知著名性を奇貨として権利行使をするものであり、権利濫用にあたる。

 

3 解説

(1)商標権侵害と誤認混同の事実

 ある商品Aを指定して(これを指定商品といいます)、Bという商標が登録されている場合、他社が商品A(又は類似の商品)に、Bという標章(又はこれと類似するもの)を使用することは、通常は商標権侵害となります。

 しかしながら、そのような場合であっても、商標権侵害とはならないことがあります。それは、商標権侵害の有無は、究極的には、ある商標と類似の商標を使うことで、「商品等の出所の誤認混同を生ずるおそれがあるか否か」によって判断されるからです。

 実際、商標権は、それだけで価値が生じるわけではありません。むしろ、商標権が保護するのは、「ブランドについた信用」です。つまり、ある会社が、例えば「ABC」というブランドを長年使うとします。そうすると、その「ABC」というマークやブランドは自社の商品を指すものとして市場で認識されるようになり、また、その「ABC」マークやブランドのものならきっと良い物だろうと顧客から信用されるようになります。

 そのような状況で、他社が「ABC」を類似の商品に使うならば、顧客は、他社の「ABC」を、自社の商品と勘違いしてしまうことが生じます。それで、こうした商品の「出所」について誤認混同が生じないよう、商標権によって保護が与えられるというわけです。

 それで、例えば、本件のように、全く使用していない商標に基づき、周知になっている他社の類似の標章の使用に対し権利を主張するような場合には、当該商標権には信用が化体しておらず、出所の混同が生じる恐れがないとされ、侵害の主張が認められない、ということも生じうるわけです。

(2) 実務上の留意点

 本件のように、使用していないと思われる商標権に基づく権利主張を受けた場合、出所の誤認混同が生じるおそれがないことを主張立証し、対抗していく方法があります。

 しかしながら、こうした主張立証が成功するか否かは事案次第、また集められる証拠の量と質次第、さらには裁判官の考え方次第、という面があるため、リスクがあるといわざるをえません。また、裁判で争った結果最終的に勝訴したとしても、それに至る過程で膨大な労力とコストを費やすことにもなるでしょう。

 また、本件でもA社が行ったとおり、不使用取消審判で対抗するというのも行うべき重要な対抗策ですが、最善なのは、可能な限り、他社に商標を出願されてしまう前に、自社で商標を早期に出願することであると考えます。それは、我が国では、ある商標を独占する権利は、出願と商標登録によって生じ、かつ原則として先願主義(早い者勝ち)だからです。

 例えば、新しいブランドがうまくいくかどうか分からないという理由でブランド展開を先に行った結果、第三者にその商標を先に出願されてしまうという場合、対抗できる余地があるとしても争うことのコストや敗訴リスクを考えて、やむなく別ブランドに切り替えざるを得なくなるといった結果も生じ得ます。

 特に、一定期間の使用によって一定の知名度が得られ、信用が蓄積された商標が使えなくなる、という事態に陥ると、先行投資が無駄になるばかりか、多大な出費を被り、かつ一定の信用を失うことになる可能性があります。

 それで、重要な商標や、重要な商品・サービスが関係する場合、弁理士等の専門家にも相談し、早めの出願も含めた権利保全の方策を考えることは有益と考えられます。

参考ページ:商標法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/


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