2013-02-19 公序良俗を害するおそれがある商標

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1 今回の判例 公序良俗を害するおそれがある商標

知財高裁平成24年10月30日判決

A社は、「富士山世界文化遺産センター」という商標につき、建物の貸借・売買の代理又は媒介等を含む第36類のいくつかの役務を指定役務として登録出願しましたが、拒絶査定を受けました。

また、この拒絶査定に対する不服審判においてもこの拒絶査定の判断が覆ることはなかったため、A社は、審決の取消しを求め、知財高裁に提訴しました。

 

2  判決の内容

裁判所は以下のように判断しました。

  • 我が国の複数の「世界遺産」において「○○世界遺産センター」なる名称の施設が公的機関によって設置・運営され、これらの事実が新聞やWEBページで紹介されている。
  • 行政、企業、団体等を中心として富士山の世界遺産登録実現に向けた活動が行われている。また、静岡県において「富士山世界遺産センター」(仮称)を設置する基本計画が具体的に進行していることは、少なくとも静岡県・その周辺の建設事業等に関連する取引者・需要者に広く知られている。
  • 本願商標は「富士山の世界文化遺産に関する中心となる施設」との意味合いを有する商標として認識される。
  • よって、本願商標について、一私人であるA社の登録を認めその使用する権利を専有させることは、国・地方公共団体等の公的機関による富士山の「世界遺産」に関連する施策の遂行を阻害するおそれがあるり、これら施策の高度の社会公共性に鑑みれば、本願商標の登録を認めることは社会公共の利益に反する。
  • よって、本願商標は、商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。

 

3 解説

(1)商標法4条1項7号の登録拒絶理由

商標法4条には、登録できない商標についての規定があります。

 そして、商標法4条1項7号もこれら登録拒絶理由の一つであり、同号には、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録を受けることができないと規定されています。

(2)7号に該当するとされた具体例

 同号に定める「公序良俗を害するおそれのある商標」という規定は抽象的であり、何が該当するのか分かりにくいことは事実です。

 そこで、7号に関する特許庁の過去の判断を見てみると、概ね以下のようなケースが該当する代表例と言われています(ただしこれらだけに限るものではありませんし、これらに該当するからといって常に登録が認められないというわけでもありません)。

  • 差別的・他人に不快な印象を与えるような文字、図形等からなる商標
  • 国家資格等を表す又は国家資格等と誤認を生ずるおそれのある商標(「××士」等)
  • 行政組織・各種団体との関連を誤認させるおそれのある商標
  • 著名な故人・歴史上の人物名からなる商標登録出願
  • 公共的利益を私的に独占させるような結果になるおそれのある商標
(3)商品・サービス名の選択と事前の法的検討の重要性

 前記判例の事案において、A社が「富士山世界文化遺産センター」という名称をどのように使用しようとした意図は分かりませんが、これとは関係なく一般論として、例えば自社のサービス名に重みや信頼感を持たせるために、重厚なネーミングを採用しようとするといったことを考えることがあるかもしれません。

 しかし、前記のように、使用したネーミングをいざ商標登録しようとしても、それが公的機関と誤認させるようなものであるとか、その他の理由で拒絶理由に該当すると判断されてしまうとすれば、残念なことです。

 ネーミングの選定の前に弁護士や弁理士に、法的観点からのアドバイスをもらうことは、使ったあとにネーミングの変更をしなければならなくなるといった大きな損失を避けるためには有益であり、必要なコストと考えることができるのではないかと思われます。

 

参考ページ:商標法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/


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