2013-12-24 商標ライセンス先の使用方法の管理

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1 今回の判例    商標ライセンス先の使用方法の管理

知財高裁平成24年11月29日判決

 A社は、「GoodWear」という文字と、図形との組合せで構成される登録商標を有しており、B社に対し同商標の通常使用権を許諾していました。

 他方、B社が使用していた商標は、図形のない「GoodWear(R)」(Rを丸で囲んだもの)といものであり、厳密には前記登録商標とは別のものでした。

 この点、C社は、上のようなB社の商標の使用は、登録されていない商標を登録商標であるかのように表示するものであって品質の誤認を生じさせるものとして、商標法53条1項に基づき当該登録商標の登録の取消の審判を請求しました。

 本件は、当該審判に対する審決取消訴訟です。

 

2 裁判所の判断

裁判所は、以下のように判断し、C社の主張を認めませんでした。

  • 商標法53条1項の商品の品質の誤認を生ずる使用とは、商標が指定商品の種類を表示又は暗示する標章を含むものであるときに、指定商品と商標が実際に使用されている商品との間に相違がある場合、商標が表示する商品の品質が虚偽の事実を含む場合等をいう。
  • B社の使用商標にある「R」の記号は、一般の取引者、需要者においても登録商標の表示として認識することも多い。
  • しかしながら、○の中にRの記号を商標に付する行為は、これに接する需要者に当該商標が登録商標であるとの認識を与えるものの、登録商標であるか否かは、当該商標が付された商品の品質を示すものではないから、未登録商標に当該記号を付しても、品質の誤認を生ずると認めることはできない。

 

3 解説

(1)商標法53条1項の趣旨

 商標法53条1項は、商標権のライセンスを受けた者が、当該商標を使用するにあたり、その使用方法に一定の不正な方法があった場合に、第三者からの請求により、当該商標登録の取消を認める規定です。

 その不正な使用には、商品やサービスの品質に誤認を生むような使用態様や、当該使用によって、他人の商品・サービスとの出所の混同を招くような場合をいいます。

 商標法は、商標権者に対して、当該登録商標を第三者に自由にライセンスできる代わりに、それによって生じる弊害を防止する規定を置いたと考えられます。

(2)実務上の留意点~商標のライセンス先の管理

 上の規定のとおり、商標をライセンスする場合は、商標権者としては、ライセンス先の使用方法を管理する義務があるという点に留意する必要があります。これを怠ると、商標のライセンシーの使用方法が不適切であるために、自己の商標の登録自体が取り消されてしまうという大きなダメージを受けるおそれがあるからです。

 もっとも、商標法53条1項ただし書においては、「当該商標権者がその事実を知らなかった場合において、相当の注意をしていたときは、この限りでない。」とあります。それで、ライセンス先を完全にコントロールはできないとしても、少なくとも「相当の注意」をしていたといえるような対策を施すことは重要と考えられます。

 この点商標ライセンス契約においては、ライセンシーに対して、実際に使用する商標と商品の見本の提出義務を負わせ、承認手続の規定を定めることが実務上よく見られますが、これは当然のことと思われます。また、それだけではなく、現実の運用としても、実際にこうした提出義務を履行させ、きちんとチェックすることも必要なことといえます。

 また、その後もライセンシーにおいて不正使用と思われるような使用が発見された場合、必要な調査を行うとともに、場合により契約解除などの毅然とした対応も必要となると考えられます。

 これらの管理には一定の労力やコストが考えられますが、価値ある商標とそれによる信用を維持するための必要なコストと考えるべきではないかと考えられます。

 

参考ページ:商標法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/


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