2014-04-30 商標の不使用取消審判と第三者の使用

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1 今回の判例    商標の不使用取消審判と第三者の使用

 

知財高裁 平成25年3月25日判決

 A社は「靴下」等を指定商品とする「FashionWalker」という商標の登録を得ていたところ、B社はA社に対し当該商標権の不使用取消審判を請求しました。

 これに対し、特許庁は、当該請求が成り立たない旨の審決をしました。その理由は、当該商標権の通常使用権者C社が製造販売したパンティストッキングがD社のネットショッピングのウェブサイトにおいて販売されていたからということでした。

 これに対し、商標権者でも使用権者でもないD社の使用によって当該商標の「使用」を肯定したのは誤りであると主張して、当該審決の取消を求め提訴しました。

 

2 裁判所の判断

 裁判所は、以下の理由でB社の請求を認めませんでした。

  • 今日の商品流通に関する取引の実情に照らせば、商品の製造者が自ら消費者に対して販売することが一般的であるとはいえず、中間流通業者が介在した上で消費者に販売することが常態である。
  • そして、このような中間流通業者が当該商品を流通させる過程で当該商標を使用しているのに不使用取消審判の「不使用」の対象となることは不使用取消審判の趣旨に反する。
  • よって、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が登録商標の使用をしている場合とは、特段の事情がなければ、商標権者等によって市場に置かれた商品が流通する過程において流通業者等が当該登録商標を使用する場合を含む。

 

3 解説

(1)商標の不使用取消審判の概要

 ある登録商標が一定期間(3年間)使用されていない場合、第三者は、不使用を理由として、特許庁に対し、その登録商標を取り消すべき審判を請求することができます。これを、不使用取消審判といいます。

 不使用取消審判の概要は次のとおりです。

 A 審判を請求できる人

 請求が権利の濫用と判断される場合を除き、利害関係人に限らず、誰でも請求することができます。

 B 駆け込み使用の防止

 先ほど述べたとおり、不使用取消審判が認められるためには、登録商標が過去3年間使用されていないことが必要です。逆にいえば商標権者は過去3年間のいずれかの時点で使用したことを証明すれば不使用取消を免れることができます。

 しかし、この使用にはいわゆる「駆け込み使用」は含まれません。すなわち、この登録商標の「使用」が不使用取消審判請求前3か月以内の使用であり、その使用がその審判の請求がされることを知った後であることを請求人が証明した場合には、正当な理由がない限り、不使用取消審判を免れる「使用」とは認められないことになります。

(2)商標の使用の証拠の確保

 今回の判例の事案では、商標権者であるA社による商標の使用は、ライセンシーが製造した製品を最終消費者に販売していたD社の使用によって肯定されました。

 確かに、その判断自体は過去の判例の傾向に沿うものではありますが、学説としては否定説もありますから、やはり好ましいのは、もう少し直接的な立証、つまり、商標権者自身やライセンシー自身が当該商標を使用していることを立証できることです。

 この点、商標権者が立証できる「使用」が、例えば3年間でたった1度きりの広告だけという場合には、そのような使用は登録商標を維持させるに値しないような形式的使用であるという理由で「使用」に該当しないという判断(形式的使用の法理)もありえます。

 

参考ページ:商標法解説 https://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/


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