4.2 非典型的な商標権侵害行為

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 本稿では、他者の登録商標と類似の標章を自己の商品・包装等に付する行為といった典型的な商標権侵害行為以外に、商標権侵害が問題となる行為にはどのようなものがあるかについて解説します。なお、典型的な商標権侵害行為については、「商標法上の『使用』とは」の項目をご覧ください。

侵害行為となりうるもの

 以下のような行為も、権限がなければ、商標権侵害と考えられることが多いといえます。

  • 本物(真正商品といいます。)を、小分け、加工、改変して当該商標を付して売ること
  • 真正商品を、再包装して当該商標を付して売ること
  • 真正商品から、表示されている商標を抹消して売ること
  • 無印の真正商品に、商標を付して売ること
  • いったん顧客に販売された商品を買い戻して、新品のように装って売ること
  • 商標権者が廃棄することを予定した商品を売ること

 以下、主なもののうち、特に判例上問題となったものについて、詳細に解説します。

真正商品の小分け・詰め替え

 権原のある商標権者や使用権者が権原に基づき商標を付した商品であっても、これを小分け・詰替えして同じ商標を付して販売する行為は、商標権侵害とされることが一般的です。

 この点に関する過去の裁判例のうち主なものは以下のとおりです。

HERSHEY’S事件(福岡高裁昭和41年3月4日判決)

 業務用の大袋入りココアを小分けして、登録商標と同一の標章を付した包装袋・ラベルを使用して包装し直して販売したという行為につき、商標権侵害罪の適用が問題となった刑事事件です。

 裁判所は、ココアのような商品は包装し直すことによって品質が変化することがあり、その際他の異物を混入することも容易であるから、商標権者の製造した真正商品を小分けしてその登録商標と同一の標章を付したものを使用して包装し直すことは商標権者の信用を害し、需要者の利益を害することになるという理由で商標権を侵害すると判断しました。

STP事件(大阪地裁昭和51年8月4日決定)

 日本の商標権者がアメリカで販売したドラム缶入りのオイルトリートメントを並行輸入業者が輸入し、商標権者が用いている10オンス入り缶とほぼ同じ外観の缶(登録商標が付されている)を製造してそこに当該オイルトリートメントを小分けして販売した行為の商標権侵害の有無が問題となりました。

 裁判所は、真正商品であっても、何人でも自由に登録商標を付し得るとするならげ、登録商標に対する信頼の甚礎が失われ、登録商標の機能を発揮できないこと、権利者は、第三者がこのオイルトリートメントを小分けして売却することを予想しているとしても、当該登録商標を使用することまで容認しているとはいえないという理由から、商標権侵害を肯定しました。

マグアンプK事件(大阪地裁平成6年2月24日判決)

 園芸用肥料を購入して、小分けして小袋に詰め替えたうえ再包装し、かつ小分けしたことを明示するとともに、小分け品自体には標章を付さず、それを陳列する際に、手書きで、当該商標を定価表に付したという行為の商標権侵害の有無が問題となったケースです。

 裁判所は、当該使用は自他識別機能を果たす態様での使用である上、小分けによる品質の変化のおそれや異物混入の容易性に照らせば商標権者の信用を損ない需要者の利益をも害する事になるという理由から、商標権侵害を肯定しました。

真正商品の改変・加工

 権原のある商標権者や使用権者が権原に基づき商標を付した商品であっても、加工、改変して当該商標を付して販売する行為は、商標権侵害とされることが一般的です。

 この点に関する過去の裁判例のうち主なものは以下のとおりです。

Nintendo事件(東京地裁平成4年5月27日判決)

 このケースは、ゲーム機本体とコントローラーに改変を加えた商品に、従前の登録商標を付したまま販売したというケースで、裁判所は、改変後の商品について登録商標の出所表示機能が害されるおそれ(改変後の商品を商標権者が販売しているという誤認)や、改変後の商品の品質の変化に関して品質表示機能が害されるおそれもあるとことを理由として、商標権侵音を肯定しました。

Callaway事件(東京地裁平成10年12月25日判決)

 ある商標を付したゴルフクラブのシャフトをスチールからグラファイトに変更したり、結合部分にネックセルを装着し、その商標を付したまま販売したというケースにつき、裁判所は、商標権侵害への該当性を肯定したケースです。

 裁判所は、厳密な品質管理を実施している商標権者の製品と、当該変更後の製品が、品質や形態において大きく異なっている等の理由から、当該変更が商標権の出所表示機能・品質保証機能を害しているという理由で商標権侵害を肯定しました。

インクボトル事件(東京高裁平成16年8月31日判決)

 この件は、被告が、原告印刷機の利用者から使用済のインクボトル(空容器)の引渡を受けて、これに自己が製造したインクを充填して販売しているという事実関係のもと、被告の当該行為が原告の登録商標権の侵害に該当するか否かが争われた事案です。

 裁判所は、被告のインクの販売行為が、市場における取引者、需要者の間に、原告の登録商標が付されたインクボトルに充填されたインクが原告を出所とするものであるとの誤認混同のおそれを生じさせており、原告の登録商標が商品(インク)の取引において出所識別機能を果たしているという理由から、被告の行為は、実質的にも本件登録商標の「使用」に該当し、原告の商標権を侵害すると判断しました。

販売済商品の買戻と新品としての販売

 いったん顧客に販売された商品を買い戻して、これを新品のように装って売ることが商標権侵害に該当するかが問われたケースがあります。

この点、ハイミー事件(最高裁昭和46年7月20日決定)は、ある業者がパチンコ遊戯者から調味料を買い集め、商品に付してある登録商標と同じ標章を印刷したダンボール箱に入れて、あたかも新品のように装って業者に卸売した行為について判断したケースです。裁判所は、商標権侵害を肯定しました。

商標権者が流通に置く意思のない商品・意思に反して流通された商品

 登録商標が付された商品であるものの、何らかの理由で商標権者が流通に置く意思のない商品や、その意思に反して流通された商品の販売などが商標権侵害に問われたというケースがあります。具体的なケースとしては以下のようなものがあります。

大阪地裁平成7月11日判決

 商標権者が製造して自己の登録商標を付した商品でしたが、被告が販売したものは、もともと販売を予定していない展示会用のサンプル品、廃棄予定のキズ物、売れ残り品であした。この場合に、被告の販売行為が、商標権者の商標権侵害の有無が問題となりましたが、裁判所は、商標権侵害を肯定しました。

FRED PERRY事件(最高裁平成15年2月27日判決)

 外国の商標権者から商標の使用許諾を受けたライセンシーが、当該許諾契約に違反して、許諾外の国にある工場に下請製造させ、当該商標を付した商品を輸入する行為につき商標権侵害の有無が問題となりました。

裁判所は、前記行為が、商標の出所表示機能及び品質保証機能を害するおそれがあるという理由で、商標権侵害を肯定しました。

 

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