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4.5 商品・役務の類否~商標権侵害の考え方

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商標権侵害と商品等の類似の位置づけ

商品や役務の類似性検討の必要性

 本稿においては、商品や役務の類似性についてご説明します。

 商標権侵害の考え方において述べたとおり、商標権侵害となるのは、指定商品・指定役務に類似する商品・役務に、登録商標に類似する商標を使用する行為です。

 したがって、商標権侵害の有無の判断においては、商標の類似性に加え、登録商標の指定商品・指定役務と、対象となる標章が使用している商品・役務との類否が問題とされるわけです。

商品・役務の類似性の基本的な考え方

商品・役務の類似性の判断の考え方をごく簡単にいえば、以下のとおりです。

  • 取引の実情を考慮し
  • 当該商品・当該役務に当該標章を付した場合
  • 出所の混同が生じるか否か

 以下、この考え方について、実例を交え検討していきますが、一律の基準を述べることはできませんので、裁判例に挙げられた具体的事例を見ていきたいと思います。

類似性が肯定された事例

「ヴィラージュ白山」事件(東京地裁平成11年10月21日判決)

 分譲マンションの販売にあたり、「ヴィラージュ白山」とする標章を、表示板、立看板、チラシ等に付して、販売した行為と、登録商標「ヴィラージュ」の指定役務である「土地の売買、建物の売買」との類否が問題となりました。

 裁判所は、「建物の売買」という役務と「建物」という被告の商品の間では、役務提供の主体が商品販売の主体であり、需要者も一致するから、出所の混同を招くおそれがあるという理由で、類似性を肯定しました。

ヨーデル事件(大阪地裁 平成18年4月18日判決)

 原告商標の指定商品である「薬剤一般」と被告商品であるダイエット効果をうたう健康補助食品との類似性が肯定された事例です。裁判所は、以下のような理由を述べました。

  • 健康補助食品は、健康の維持・増進のために身体内に摂りいれるものという点で、薬剤と同様の機能を持つ商品として宣伝され、ドラッグストア等において多数販売されている
  • 製薬会社が直接・関連会社を通じ、健康補助食品の製造販売に進出している
  • これらの事情から、原告商標の指定商品である薬剤と、被告製品である健康補助食品とは、同一又は類似の商標を使用すると同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認混同されるおそれがある

商標「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」事件(大阪地裁平成23年6月30日判決)

 原告の登録商標「MONCHOUCHOU/モンシュシュ」の指定商品である「菓子、パン」と、店舗表示、商品の包装、広告等に「Monchouchou/モンシュシュ」「baby Monchouchou/ベビーモンシュシュ」等の標章を使用して洋菓子を製造し小売販売する被告の商品又は役務の類否が問題となりました。

 裁判所は、被告の商品の包装等に使用される場合は、商品である「洋菓子」への使用であるうえ、小売役務に使用される場合であっても、洋菓子の小売は,、造販売と同一事業者によって行われるのが一般的で、用途、販売、提供場所、需要者の範囲等も商品(洋菓子)と一致していることから、出所の混同を招くおそれがあると判断し、当該商標の指定商品と、被告の商品・役務の類似性を肯定しました。

「ゆうメール」事件(東京地裁平成24年1月12日判決)

 商標「ゆうメール」の商標権の指定役務である「各戸に対する広告物の配布」等と、被告(郵便事業株式会社)の「あて名の記載を省略した荷物について一定の地域内のすべての世帯・事業所に配達するサービス」の役務の類似性が問題となりました。。

 裁判所は、被告が行う配達の対象には広告物も含まれており、その場合、両役務は同一又は類似の関係にあると判断しました。

大阪地裁平成24年12月13日判決

 原告商標の指定役務である「建物の管理、建物の貸借の代理又は媒介、建物の貸与、建物の売買、建物の売買の代理又は媒介」等であるところ、被告の役務は、建築工事請負でした。裁判所は、「建築工事請負は、建物の売買と密接な関係があり、これに本件商標が使用された場合原告の有する本件商標権と誤認混同が生じるといえる」と述べて、当該指定役務と被告の役務が類似すると判断しました。

類似性が否定された事例

CCD カメラ事件(東京地裁平成15年12月10日判決

 被告商品である監視用・防犯用のCCDカメラの本体部分と、原告商標の指定商品である「写真機械器具」とは類似しないと判断された事例です。

 判断の理由としては以下の要素を考慮し、指定商品「写真機械器具」と被告商品とは商品としての関連性が乏しいというものでした。

  • 被告商品の用途は主として業務用であって、一眼レフカメラ、デジタルカメラ等の写真機械器具が一般の消費者を需要者とするのと異なる
  • 写真機械器具と被告商品とは製造業者も異なる
  • 写真機械器具を扱っている店舗でも、特に大型の店舗でない限り、一般的には監視用CCDカメラを扱っておらず、販売経路が異なる
  • 大型店舗においても、監視用 CCD カメラと写真機械器具の売り場は異なる

「テンポス」事件(東京地裁平成24年5月31日判決)

 登録商標「テンポス」の指定役務である「中古品を使った設備及び内装工事」と、被告標章であるテンポスマートが使用されていた役務(ウェブサイトを通じた飲食店等の店舗に係る建物の賃借の媒介又はそれに関する情報の提供)との類否が問題となりました。

 裁判所は、両者の役務の間には、役務の提供手段、業種、需要者の範囲及び提供する事業者が異なるとし、これら両者の役務に、同一又は類似の商標を使用しても、当該役務の取引者や需要者に同一の営業主の提供に係る役務であると誤認されるおそれがあるとは認められないと判断し、役務の類似性を否定しました。

 

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