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5.3 商標侵害~他社から商標権侵害の警告を受けた場合の対応

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 他社から、「御社が弊社の商標権を侵害している」と指摘されることがあるかもしれません。また、他社の代理人の弁護士や弁理士から警告書が届くということもありえます。この場合、どのように対処すべきでしょうか。

 以下、他社から商標権侵害の警告を受けた場合の対応のポイントについて、実務的視点から解説します。

弁護士への相談の必要性

自己判断の危険

 商標権侵害の警告書が送られた場合、まずは慌てないことが重要です。また、自己判断で行動しないことはもっと重要です。

 例えば、警告書を受け取った際、相手方の登録商標が自社の標章と明らかに同じなので、侵害は避けられないと考えるかもしれません。そのため、慌てて警告書記載のとおり自社の商品の販売を中止し、パッケージやチラシなどを破棄し、ウェブサイトを書き換え、さらには警告書を送付してきた相手方に対して謝罪の書面を送る、といった対応をするかもしれません。

 しかし、「相手方の登録商標が自社の標章と明らかに同じ」だからといって侵害とはいえません。例えば相手方の登録商標の指定商品と自社の商品は実は類似していないかもしれません。あるいは、相手方の登録商標は実は全く使用しておらず、不使用取消審判によって取消が可能な商標かもしれません。また、他の理由から実は侵害ではないというケースもあります。

弁護士への相談が自社の負担を最小限にする

 以上の理由から、警告書の内容を鵜呑みにして即断で行動することは、実は自社に必要のない大きなコスト負担を与えることになったり、正当に使用できる標章を不必要に諦めてしまってこれまでの営業上の信用を無闇に手放してしまったりと、自社に必要のない大きな負担や損害を与えることになりえるわけです。

 したがって、相談料を惜しんで弁護士への相談をせずに慌てて行動することは避けるべきです。仮に結果的に侵害と判断せざるを得ない場合でも、交渉の方法によっては自社の負担を最小限にすることができるケースもあります。

 以下、警告書を受けた場合の対応の手順について実務的な観点から解説します。

権利の確認・侵害の有無の調査

商標権・商標権者の確認

 警告書が届いた場合、まずは相手方の権利について調査します。具体的には、以下のような事項について調査します。

商標権の存在・有効性の調査

 まず相手方が主張する商標権が存在するのか、存在するとして現在も有効に存続しているのかを調査します。商標権の更新登録料の支払を失念して商標権が消滅しているということもありえます。

相手方の権利行使者としての適格性の検討

 他社に対して登録商標と類似する標章の使用を差し止めることができる権利を有するのは、商標権者自身か、専用使用権の設定を受けた者です。それ以外に、例えば単に登録商標について通常使用権の許諾を受けただけの者は他社の使用を差し止める権利を持ちません。

 それで、警告書を送付してきた相手方が権利を行使できる立場にあるのかを検討します。

商標としての「使用」該当性の検討

 自社の標章の使用が他社の登録商標権の侵害といえるためには、自社の使用の仕方が「商標としての使用」に該当する必要があります。例えば、単に他社製品の説明に過ぎない使用の場合、文脈上普通名詞として使用していることが明らかな場合等、「商標としての使用」に該当に該当するとはいえない場合もあります。

 この点の詳細は、「使用」に該当しない場合の項目をご覧ください。

 それで、当該警告を受けた自社の標章の使用方法や使用態様について詳細に調査・検討します。

商標の類似性の調査

 警告にかかる相手方の登録商標と、自社の標章の同一性・類似性を検討します。

 これについては、単純に全く同一である場合もありますが、相手方が「類似」を主張する場合、商標法の観点から本当に「類似」といえるのか、慎重な検討・判断が必要です。

 なお、商標が類似しているか否か(類否)については、商標の類否の考え方の項目をご覧ください。

 なお、商標の類否の判断にあたっては、取引の実情を考慮しますので、弁護士への相談の際には、できる限り取引の実情を明らかにできる資料も用意しておくとよいと思われます。

商品・役務の類似性の調査

 自社の標章を使っている商品や役務(サービス)が、警告にかかる相手方の登録商標の指定商品・指定役務に重なっているか、又は類似しているかを検討します。

 それは、先に申し上げたとおり、商標権の権利の範囲は、その商標権の「指定商品」「指定役務(サービス)」の類似の範囲にしか及ばないからです。

 これについても、究極的には「出所の混同」が生じているかという高度な法的判断が伴いますので、慎重な検討・判断が必要です。なお、商品・役務の類否については、商品・役務の類否の考え方の項目をご覧ください。

 なお、商品・役務の類否の判断にあたっても、取引の実情を考慮しますので、弁護士への相談の際には、できる限り取引の実情を明らかにできる資料も用意しておくとよいと思われます。

抗弁・反撃の可能性の検討

 以上の検討の結果、他社の登録商標と自社が使用する標章の抵触が免れない、又はその可能性が高いと判断せざるをえない場合、何らかの抗弁や反撃の可能性を検討します。具体的には、以下のようなものがあります。

相手方が登録商標を使用していないと思われる場合~不使用取消審判の検討

 不使用取消審判は、一定期間使用していない他人の商標登録の取消を請求する手続です。警告を受けた商標権者の商標が実際には使用されていない商標である場合、この対抗手段を検討できます。

 なお、不使用取消審判については不使用取消審判の解説で詳論していますので、ご覧ください。

相手方の登録商標に無効理由があると思われる場合

 商標法39条は特許法104条の3[カーソルを載せて条文表示]を準用し、無効理由のある商標権の行使は許されないことを定めています。

 そこで、相手方の商標登録に無効理由がないかを検討します。

 無効理由があることは、相手方との交渉で主張することもできます。また、商標登録無効審判を請求し主張することもできます。

 商標登録無効審判とは、ある商標の登録に関して法律に定める無効理由がある場合に、その登録を無効とする特許庁の審判です。

 なお、無効審判については商標登録無効審判の解説で詳論していますので、ご覧ください。

先使用権の主張の可能性の検討

 自社の標章は登録していなかったものの、長年使用していたという場合、「先使用権」という抗弁を主張できる可能性があります。それでこの先使用権の主張ができないか検討できます。

 先使用権については先使用権の項目で詳論します。

サービスマークの継続使用権の主張

 1992年9月30日以前からサービスマーク(役務に使用する商標)を使用していたというケースでは、先使用権とは別に継続使用権を主張することを検討できます。

 また、2007年(平成19年)4月1日からいわゆる「小売等役務商標制度」が施行されたことにともない、2007年3月31日以前から小売等に関して使用していた商標について引き続きその範囲内で使用することができる、「継続的使用権」も認められています。それでこの点の主張も検討できます。

 これら継続的使用権についての詳細は、継続的使用権のページをご覧ください。

侵害の有無の確認と対応方針

 以上のとおりの検討を経て、侵害の有無(可能性)、抗弁の可能性等から、相手方の主張の当否について判断し、対応方針を決定します。

相手方が定めた期限への対応

 まず、商標権者から送付されてくる警告書には、通常、「到着後2週間以内」など、回答期限が示されていることが多いといえます。中には、1週間以内といったタイトな期限を定めてくるところもあります。

 しかし、こうした期限は法律上の根拠がありませんから、あわてて盲目的に従うのではなく、もう少し慎重に対応を検討することは、大抵の場合問題ありません。

 当然ながら、相手方の権利の存否・内容や、侵害の有無等、もろもろの要素を検討する検討する必要がありますし、弁護士との相談日程がすぐに確保できないこともあります。それで十分な回答期間をこちらから求めることは間違っていません。

 この点、例えば権利者側からの期限の指定に対し「現在、検討しており、指定の期限から●週間ほど猶予をいただきたい。●月●日までに回答する」といった回答をすることが実務上は珍しくありません。

相手方の主張にある程度の理由があると思われる場合

 まず相手方の主張に理由がある(侵害の可能性が高い)と判断された場合には、以下のいずれかの方針(又は併用)を検討します。

  • 自社標章の変更や中止の可否と時期(時期については交渉ができるかもしれません)
  • 商標権者からライセンスを受けること
  • 商標権者から商標権の譲渡を受ける(その商標を使用していない場合可能性がある)
  • 任意に変更や中止に応じる代わりに、損害賠償の免除や減額を求めて交渉する

相手方の主張に理由がないと判断する場合

書面で回答する

 他方、調査の結果、相手方の主張に理由がないと判断される場合、侵害主張に理由がない旨を回答します。具体的には、侵害に当たらないといった主張や、当該商標登録が無効であるという主張などが考えられます。

 また、正確な議論を行うため、回答は通常書面で行います。

商標法と商標実務に通じた弁護士を選任する

 この場合、詳細な事実の認識に立ち、過去の判例に基づく正確かつ漏れのない議論が必要であり、弁護士のような専門家ではない方が行うことは困難であリ、かつリスクも高いといわなければなりません。

 また実際は、弁護士であっても、商標法や商標実務に通じていないと、少々的はずれな回答を準備してしまうこともあります(筆者の経験でも、そのような対応をした弁護士がおられました)。

 それで、回答書については、内容の検討、文面の作成、発送につき、商標法に通じた弁護士に依頼することが無用なリスクを生まない方法といえます。

法的対応の検討

 また、検討結果を踏まえ、場合により、以下のような法的対応も検討できます。しかし、大半の事件は、交渉で妥結することが多いといえます。

  • 権利者の商標の不使用取消審判の請求(詳細はこちら
  • 権利者の商標について特許庁に対する無効審判請求を行う(詳細はこちら
  • 裁判所に対し、差止請求不存在確認訴訟を起こす

 

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