2021-01-12 会計限定監査役とその責任

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1 今回の事例

 東京高裁令和元年8月21日判決

 A社の経理担当職員B氏は、A社の預金口座の預金を自己の預金口座に移し変える方法により、11年にわたり2億円以上を横領しました。

  B氏は、コピーでA社の預金口座の残高証明書を偽造していたため、A社の会計限定監査役であったC氏は、偽造された残高証明書を原本の写しであると認識し、監査報告において、A社の計算書類に問題はない旨の報告をしていました。

 これについてA社は、残高証明書の原本確認を怠ったことを理由として、C氏に対して、横領金額の一部について損害賠償請求しました。

 なお、本件では、A社は、横領が行われた期間に就任していた他の取締役には責任追及はせず、C氏のみに責任を追及していたという事情がありました。

 裁判所は、会計限定監査役のC氏には損害賠償責任はないと判断しました。その理由として、会社の従業員の不正を監督防止できるものは取締役であって会計限定監査役ではないこと、会計限定監査役は、原則として、取締役やその指示を受けた使用人が作成する会計帳簿その他の資料の記載が正確なものであることを前提にして貸借対照表等の計算書類の正確性の監査をすれば足りる、という点を挙げました。

2 解説

 監査役には、業務監査と会計監査の二つの役割があります。

 業務監査とは、法令や定款に従って取締役が職務を行っているか、著しく不当な行為はないかの監査をいいます。他方会計監査とは、会社の作成する計算書類等が適正に処理されているかの監査をいいます。

 そして会社法は、株式の譲渡に制限のある会社(日本の中小企業のほとんど)については、原則として監査役の権限を「会計監査」に限定できるという規定を置きました(会社法389条1項)。そしてこの監査役のことを、「会計限定監査役」と呼びます。

 業務監査と会計監査の両方の職務というのは重い責任であったわけですが、会社法は、中小企業の監査役の実態に照らして、監査役の責任を会計監査に限定できるようにしたわけです。

 平成18年施行の新会社法で、会社の機関設計の自由度は大きく上がりました。多くの中小企業では、そもそも監査役を置く必要もなくなりましたし、上のとおりその責任を限定することもできます。

 旧会社法時代に設立された古い会社であれば、旧会社法に則った「取締役会+監査役」という組織形態のままということが少なくないと思われます。これを機に、もっと実態に合った柔軟な機関設計ができないか検討できるかもしれません。

 

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