納入後の不具合・瑕疵~解説システム開発法務

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「瑕疵担保責任」とは何か

システムの完成未完成と「瑕疵」

 受託者(ベンダー)が開発したシステムを納入した後、発注者(ユーザ)が、「要望した機能の一部が実装されていない」「使いにくい」「一部の入力結果がエラーとなる」といった理由で、「システムは未完成である」、又は「システムに瑕疵がある」と主張して支払いを拒むことがあります。

 この点まず、「システムの完成・未完成」のページのとおり、少なくない裁判例は「最終工程基準」に基づいて完成未完成を判断しており、不具合があるからというだけで「未完成」とは判断されないことが多いといえます。完成・未完成の考え方は、同ページをご覧ください。

 それで、不具合があるという理由だけでは、発注者は未完成を理由に支払を拒むことはできない場合が少なくありませんが、この場合、当該不具合が、法律上の「瑕疵」に該当する場合、「瑕疵担保責任」という責任の有無が問題となります。

瑕疵がある場合に発注者(ユーザ)が行える請求・措置

 システムに瑕疵がある場合に発注者(ユーザ)が行える請求・措置は以下のとおりです。

瑕疵修補請求

 これは文字どおり、瑕疵を修補(修正して瑕疵をなくす)するように請求する権利です。

損害賠償請求

 瑕疵によって生じた損害の賠償を求めることができます。ここには、瑕疵修補に要した費用が含まれます。

 例えば、ベンダーの技術力不足などにより瑕疵が補修できず、発注者(ユーザー)が別のベンダーに修正を依頼したという場合には、その費用を、受注者(ベンダー)に請求できるということになります。

 さらに、民法634条3項で、「注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。」と述べられているとおり、瑕疵の修補だけではカバーできない損害の賠償も求めることができます。

 ただし、瑕疵があればただちに損害賠償請求の対象となるわけではありません。システム開発においては不具合が生じるのは不可避であることを考えると、ベンダ側が瑕疵に速やかに対応しなかったとか、瑕疵が補修不能であったといった事情が必要となると考えられます。

契約解除

 瑕疵があるからといって、発注者(ユーザー)側が常に契約を解除できるわけではありません。

 それは、民法635条では、請負の目的物に瑕疵があり、これによって契約の目的が達成できないときに限り解除できると定めているからです。では、どんな場合に「契約の目的が達成できない」といえるのでしょうか。これについては次項で取り上げます。

瑕疵担保責任の行使期間

 瑕疵担保責任に関して留意する必要があるのは、請求権の行使期間が引渡から1年間と限られていることです(民法637条1項)。また契約によってこの期間がさらに短期に定められていることもありえます。

 それで、瑕疵修補請求権、解除権を行使しようという場合、十分注意が必要です。

「検収」と瑕疵担保責任との関係

 納入したシステムを検収した場合、それ以後瑕疵担保責任は認められないのでしょうか。例えば、受注者(ベンダー)が、「不具合の原因は別として、検収された以上、当社には責任はない」といった反論がなされるかもしれません。

 しかしこの点、検収があったから瑕疵担保責任が消滅するわけではありません。システム開発における検収は、ありとあらゆる瑕疵がないことを確認することではないからです。

瑕疵を理由に契約解除が認められたケース

 以下、裁判例の中で、瑕疵を理由に契約解除が認められたケースの一部を見ていきます。

東京地裁平成5年1月28日判決

 「トレース作業処理等の関連システムのためのパソコンのプログラム作成」という事案でした。裁判所は、ベンダーの納入したプログラムが、文字や図形を入力している際電源を一度切らないと入力が続けられなくなること、直線や円弧を印字する際動作が途中で止まってしまったり一部が欠けて印字されてしまったりすること、入力した文字から文字列を作成して印字しようとすると、スクライバーに出力できなかったり、印字できても、文字間隔かまちまちで文字と文子が重なって印字されてしまったり、文字列が真っ直ぐに並んで印字されなかったりすることがあることなどから、全体として重大な瑕疵があるといえ(一部は未納入)、同種のシステムの開発状況も併せ考えると、契約を締結した目的を達成することかできないと判断し、解除が許されると判断しました。

東京地裁平成14年4月22日判決

 裁判所は、納品したシステムが、(1)在庫照会の検索処理に30分以上の時間を要する場合があり、その間画面が止まったような状態になること、(2)売上計上等の処理速度も遅く伝票を出力するまでの待ち時間も長いこと、(3)一枚の仕入伝票を処理するのに約1時間かかること、(4)仮締処理の月次処理時間が、平成9年10月に実施したときは30分程度であっものが同10年3月21日の時点で約4時間に増加し、その後も増加を続けたこと、(5)システム内容を変更した場合、朝の電源投入処理に数十分の時間を要すること、(6)月次処理の実行中は端末自体が使用できなくなることといった不具合を認定しました。

 その上で裁判所は、当該システムが販売管理システムとして迅速化及び合理化が必須の素として求められていること、ユーザーの営業所では、検索に時間がかかるために、手書きの在庫台帳を作成して顧客からの問い合わせに応じていることから、これら処理速度に関する不具合が、システムを用いて通常業務を行う上で看過することができない重大な不具合であると判断しました。

東京地裁平成16年12月22日判決

 裁判所は、当該システムと同程度のシステムにおける一括在庫引当処理に要する時間がせいぜい数分程度が一般的に要求されるところ、当該システムにおいてはテストデータ300件ですら処理時間に44分も要するから、およそ契約の内容に適合しないものというほかない、と述べました。

 また裁判所は、数時間を要する一括在庫引当処理中、他の商品マスタを利用する処理が一切できず、、1人でも商品マスタのメンテナンスを行っていればその間は全く一括在庫引当処理ができないことになること、同様のことが他の機能にも生じているから、当該システムが実際の業務において使用に耐えないことが明白であって、およそ契約の内容に適合しないといわざるを得ず、契約の目的を達することができない重大な暇疵に該当することが明らかである、と述べました。

 その上で裁判所は、当該システムが販売管理システムとして迅速化及び合理化が必須の素として求められていること、ユーザーの営業所では、検索に時間がかかるために、手書きの在庫台帳を作成して顧客からの問い合わせに応じていることから、これら処理速度に関する不具合が、システムを用いて通常業務を行う上で看過することができない重大な不具合であると判断しました。

東京高裁平成26年1月15日判決

 裁判所は、現行ホストコンピュータの保守期限が9月30日に満了するところ、新システムについては再納入後の検収期間終了時である6月16日時点で補修未了の不具合・障害が31件あり、補修工数は93.4人日を要する規模であった上、新システムの本番稼働までにさらに少なくとも5カ月の導入支援期間が必要であり、さらにその先に現行ホストコンピュータとの並行稼働が必要であったという事実によれば、現行ホストコンピュータの保守期間が満了後もなお長期間を要する状態になっていたものと認められることから、新システムの瑕疵のために、ソフトウェア開発個別契約をした目的を達することができない、と判断しました。

 


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