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ITサービス利用規約の作成・運用のチェックポイント

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 Webサービス、ECサイトやスマートフォンアプリなどを提供する場合、ユーザーには利用規約に同意していただき、その上で利用していただく必要があります。ここでは、利用規約の作成・運用上の留意点についてご説明します。

利用規約が効力を認められるためには

利用規約の確認のプロセス

 Webサービス、ECサイトやスマートフォンアプリなどの利用規約では、紙の契約書に押印やサインを求めることはほとんどなく、利用開始や登録に先立ち、画面に利用規約の文章が表示され、「同意する」といったボタンをクリックする、という方法が広く見られます。

 そもそもそのような方式で、ユーザーを利用規約に拘束することができるのでしょうか。

 この点、この方式であっても、ユーザーが利用規約に同意したことが明確であれば、通常は、ユーザーは利用規約に拘束されることに同意したと考えて差し支えないといえます。

 ただし、画面構成や利用規約の表示の方法から、利用規約があらかじめユーザーに対して適切に開示されていることや、ユーザーが、開示されている利用規約に従ってサービスを利用することに同意していると認定できることが重要と考えます。

 具体的には、申込手順中に、利用規約を明確に表示して閲覧しないと登録画面に移行しないようにするようにしたり、利用規約と同意ボタンを押さないと登録が完了しないようにするといった方法が考えられます。

 他方で、利用規約を画面に表示せず、サイト中の目立たない場所に利用規約へのリンクを張り付けているだけであり、登録のプロセスの中で利用規約を見ずとも登録がや利用が開始できるような場合、利用規約の法的拘束力に疑義が生じ得ます。

 また、以上に加え、ユーザーが当該サービスの利用時には、いつでも容易に利用規約を閲覧できるようなリンクを設けておくことも重要と考えます。紙の契約書で例えれば、ユーザーが控えを持っており、いつでも参照できるようにしておくことと同じものと考えられ、法的拘束力を強めることができるからです。

利用規約と消費者保護法制

消費者に不当に不利な規定と消費者契約法

 利用規約において対象となる利用者に消費者が含まれる場合、こうした利用規約にも消費者契約法のような消費者保護の法規が適用される点に注意が必要です。

 例えば、利用規約において、消費者たる利用者の利益を不当に害するような規定は条項は無効とされるおそれがあります。

 具体的にどのようなものが無効とされるかは一律にはいえませんが、例えば、商品の輸入者がECサイトを運営する場合、販売商品については一切製造物責任は負わないという規定は、無効とされるおそれが強いと考えられます。

 また、仮に消費者契約法などで無効とならないとしても、著しく公平を失するような利用規約は、いわゆるネットユーザーの激しい批判を受けて「炎上」し、変更を余儀なくされる、という例は少なくありません。こうしたリスクも考慮に入れる必要があります。

消費者に分かりやすい利用規約とするための留意点

 消費者契約法3条1項は、事業者に対して、消費者との契約の内容が「明確かつ平易なもの」となるように配慮するという努力義務を定めています。それで、利用規約においては不必要に難しい表現を用いることは避けるようにすることは望ましいといえます。

 とはいえ、利用規約は法的文書であり、いざ紛争時には、その規約の解釈が厳格に問われることになります。それで、正確性や網羅性を犠牲にして「平易」のみを求めることが妥当とはいえないかもしれません。むしろ、重要なポイントについて、別途説明ページを設ける、FAQを設けるという方法も考えられます。

 

利用規約作成上の留意点とチェックポイント

利用規約の個別の検討の必要性

 利用規約を作成する場合、もしかしたら、インターネットで公開されている他社の利用規約をそのままコピー&ペーストして自社のものとして使用する、ということがあるかもしれません。

 しかしまず他社の利用規約をコピーしてそのまま使用すること自体、著作権を侵害するおそれがあり望ましくないと考えます。実際、東京地裁平成26年7月30日判決は、インターネットを通じて時計修理サービスを提供するある会社がが公開した利用規約をそのまま使用した行為につき、著作権侵害と判断しました。なおこの判例についての詳細は、「利用規約の模倣と著作権侵害」をご覧ください。

 また利用規約の作成は、ビジネスの設計図ともいうべきものであって、ビジネスの組み立てやスキーム、自社の意図、サービスの流れ、想定リスクや問題回避といった諸要素を文章に落としこむ作業です。他方、他社が作成した契約書や利用規約を吟味せずにそのまま使うなら、自社の意図や実情に沿わない規定によって運用上の不都合が生じたり、さらには、自社が不利益を被ったりすることもありえます。それで、利用規約は、自社のサービスの種類・サービスの構造・想定される利用者の性質・想定されるリスクなどの事情を考慮してきちんと作成することが望ましいといえます。

利用規約のチェックポイント

 では、利用規約の作成にあたってはどんな点をポイントとして考慮すべきでしょうか。以下の点は主なポイントの例であり、検討すべきものと考えられます。

  • サービスの利用と利用規約への同意の必要性
  • 用語の定義
  • サービスの申込方法・登録方法
  • サービスの説明・利用方法
  • 有料の場合の、サービスの利用料金、料金の対象、支払方法
  • ID・パスワードなどの管理
  • サービスに含まれるコンテンツの権利の帰属
  • ユーザーの禁止事項
  • 利用規約違反に対するペナルティ
  • 損害賠償とその制限に関する事項
  • サービスレベルに関する事項
  • アカウントの停止・削除に関する事項
  • 非保証に関する事項
  • 免責に関する事項
  • 個人情報の取扱
  • サービスの変更に関する事項
  • サービスの中断、中止、終了に関する事項
  • 利用規約の変更とその方法
  • ユーザーの地位譲渡の禁止
  • 準拠法、紛争時の合意管轄裁判所

利用規約のチェックポイントの解説

 以下、それぞれのチェックポイントのうち、主なものについて、アウトラインと留意点を見ていきたいと思います。

サービスの利用と利用規約への同意の必要性

 利用規約の法的拘束力があることを利用者が理解するためにも、サービスの利用について利用規約への同意が前提条件となることを明記します。

用語の定義

 用語を定義します。定義の方法としては、最初付近の条文でまとめて定義する方法、条文全体で都度定義する方法があります。どちらの方法も可能です。

サービスの申込方法・登録方法

 これについては利用規約に具体的に記述する方法もあれば、「弊社所定の方法」といった定め方をし、申込方法は具体的な登録画面等で案内するという定め方もできます。

 登録方法などは、ユーザーによる使いやすさなどに応じて随時変更していく可能性を考えると、後者のほうが柔軟な運用ができるという意味では有利かもしれません。

サービスの説明・利用方法

 自社のサービスを定義し、できるだけ分かりやすく説明します。ただし、サービスの内容の詳細をすべて規約に書くことは現実的ではないと思われます。この場合、詳細をサービス説明ページに委ねるという書き方もできると思われます。

 また、有料サービスでは、料金の支払を対価として提供されるサービスの範囲を明確にする必要があります。

サービスに含まれるコンテンツの権利の帰属

自社コンテンツの権利の帰属

 自社のサービスに含まれるコンテンツに関する権利の帰属について明示します。通常は、自社に帰属することを明示することが多いと思われます。

 これに加え、サービスの利用によって、サービスに含まれるコンテンツに関する権利が移転したりサービスを利用するために必要な範囲を超えて権利が許諾されることはない、という点を明示する規定も多く見られます。

ユーザーが投稿したコンテンツの権利帰属

 また、ユーザーにコンテンツを投稿する場を与えるようなサービスにおいては、「ユーザーが投稿したコンテンツの著作権の帰属」について定めておくことが重要です。

 また、ユーザーが投稿したコンテンツの権利の帰属をどう定めるにせよ、投稿コンテンツについて、自社がどこまで利用できるのか、改変や二次利用などの可否なども含めきちんと定めておく必要があります。

 この点、利用規約という性質上、個別の交渉というプロセスがないため自社側に有利に書くことは当然なのですが、あまり極端に自社側に有利に書くと、ユーザーからの猛反発が起き、前述のとおり、利用規約についていわゆる「炎上」が生じてしまうリスクが高くなります。

 例えば、必要性を考えずに、投稿コンテンツの著作権などの権利はすべて自社に無償で移転させ、さらに投稿コンテンツが第三者の権利を侵害する場合、ユーザーに損害賠償責任を負わせる、といった規定は、自社の利益・保護になるかもしれませんが、ユーザーの気持ちを逆なでしてしまうかもしれません。

 それで、このあたりを勘案の上、サービスの運営に必要な範囲で、かつユーザーの心情にも配慮した内容にすることが望ましいと考えられます。

ID・パスワードなどの管理

 ユーザーの義務として、与えられたID・パスワードをユーザーの責任において管理し、第三者に開示しないといった規定が置かれることは少なくありません。また、ID・パスワードが紛失・漏洩した場合の届出・通知義務についても定めます。

 またこれに関連して、利用者の同一性の確認についての自社の義務は、IDとPWの照合をもって足りるものとし、万一ID・パスワードがユーザーから漏洩し不正使用された場合も、自社は責任を負わないといった規定を置くことも考えられます。

ユーザーの禁止事項

禁止事項の列挙

 ユーザーが自社のサービスを利用するにあたっての禁止事項を規定します。

 具体的な禁止事項に何を書くかはまさに各会社のポリシー次第ではありますが、大きく分けると、自社や他人の権利を侵害する行為の禁止、法令違反や公序良俗違反の行為の禁止、自社のサービス運営の妨害に繋がる行為の禁止などがあります。

 これに加え、禁止事項の最後に、「その他弊社が不適切と判断する行為」といった包括的な規定も設けるケースが少なくありません。もっとも、こうした包括的な規定に基づく措置の有効性については、実際に裁判で争われた場合には何ともいえませんので、想定されうる限り禁止事項は多く列挙しておくことが望ましいと考えられます。

 この点、サービスの運営において新たな問題が生じるかもしれません。それで、こうした事態が生じるたびに、利用規約に随時禁止事項を加えていくことも必要と考えられます。

禁止事項違反の効果の定め

 加えて、禁止事項を含めた規約に違反した場合の効果についても定めておく必要がります。そうでないと、違反の事実があってもできることが制限されてしまい、禁止事項の実効性がなくなってしまいます。

 違反の効果としては、損害賠償、アカウントの一時停止・削除、ユーザーが投稿したコンテンツの削除、ユーザー登録の取消などが考えられます。

サービスの中断、中止、終了に関する事項

 いったん提供を開始したサービスも、何らかのやむを得ない理由で終了・廃止しなければならない場合が生じます。いったん自社とユーザーが契約し、サービスの提供を継続的に開始すれば、自社としては根拠なく無断でサービスの提供を中止することはできず、そうしてしまうと債務不履行に基づく責任(損害賠償など)を負ってしまうおそれがあります。

 そのため、利用規約において、自社の判断によりサービスを終了させることができる旨を定めておくことが重要となります。ただし、何の予告もなく一方的にサービスの終了ができると書くと、特にサービス提供先が消費者である場合には消費者契約法に違反するとして無効となるおそれがあります。

 それで、一定の期間を設けて事前の告知をした上でサービスを終了させることができる。ただし緊急やむを得ない場合はこの限りではない、といった規定が穏当といえるかもしれません。

 またこの「一定の期間」がどの程度かは、ユーザーの特性、同種・代替サービスの存在や数、データなどの移行の手間等によって異なりますが、2~3か月は必要と判断されることが多いと考えられます。

利用規約の変更とその方法

 利用規約をいったん作成して公開した後も、想定外の様々な問題が生じ、こうした点についてフォローするために利用規約の変更が必要となることがあります。この場合、通常はユーザーの個別の同意を得ることは現実的ではないため、利用規約の変更について利用規約に定めておくことが一般的です。

 この点、多くの利用規約は、サービス提供者が利用規約自体の変更をできる旨、また変更にあたっての予告期間を置く旨、また、変更後利用者が異議なくサービスの利用を継続する場合には変更後の利用規約に同意したとみなされる旨を規定し、これをもって利用規約の変更の有効性を裏付けようとします。

 上の方法の有効性を正面切って認めた裁判例があるか否かは分かりませんが、実務上は一般的に有効な手段であると考えられています。

 しかしながら、まずは利用規約の変更にあたっては適切な方法で告知すること、十分名予告期間を置くことなどについては十分に留意すべきであると考えられます。またこの点で、告知の際には、変更後の利用規約全文をただ掲載するだけでなく、変更点を明示するといった措置も検討に値します。

 また、仮に何らかの訴訟のおいて、どの時点の利用規約が適用されるのかが問題となることがありますが、こうした事態に備え、いつ、いつどのような利用規約の変更を行ったのか、またどの時点でどのような方法で告知したのか、適切な方法で記録しておくことも検討に値すると考えられます。

 


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