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4.8 商標権の侵害による損害賠償の考え方

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 商標権を侵害した場合に請求しうる、また侵害者が責任を負う損害賠償の内容や金額はどのように考えるのでしょうか。この点、商標法においては、損害額の算定方法を複数定めています。具体的には以下のとおりです。

  • 商標法第38条第1項に基づく請求
      「損害額」=「侵害者の譲渡等数量」×「権利者の単位あたりの利益」
  • 商標法第38条第2項に基づく請求
      「損害額」=「侵害者がその侵害の行為により受けた利益額」と推定
  • 商標法第38条第3項に基づく請求
      「損害額」=「使用料相当額」

損害賠償算定方法1~商標法第38条1項による算定

基本的な考え方

 商標法38条1項による損害額の算定は以下のとおりです。

 すなわち、商標権侵害者が侵害品を譲渡したときは、その譲渡した商品の数量に、商標権者が、侵害行為がなければ販売することができた商品の単位数量あたりの利益の額を乗じて得た額を、商標権者の使用の能力に応じた額を超えない限度において、商標権者が受けた損害の額とすることができるという規定です。

 簡単にいえば、要点は以下のとおりです。

  「損害額」=「侵害者の譲渡等数量」×「権利者の単位あたりの利益」

相互補完関係の存在

 商標法38条1項の請求を行うには、侵害品と商標権者の商品との間に、「侵害行為がなければ販売することができた」という関係(相互補完関係)があったことを商標権者が主張・立証する必要があります。

 もっともこれは、商標権を侵害する商品と登録商標に係る商品との間の市場における相互補完関係の存在の有無によって判断されるとされています(東京地裁平成13年10月31日判決)。

販売することができない事情

 ただし、譲渡数量の全部または一部を商標権者が販売することができないとする事情があるときは、その事情に相当する数量に応じた額を控除します。

 例えば、侵害者が、登録商標と類似する商標を付した商品を3000台販売したとします。そして商標権者は1台について8000円の利益が得られたとします。この場合、38条1項の計算では損害額は24,000,000円となります。

 しかし、何らかの事情、すなわち侵害行為と商標権者の商品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情で、商標権者が1000台分しか販売できないと認定されれば、損害額は8,000,000円とされるということになります。

こうした事情は侵害者側が立証する必要があります。その事情の中には次のようなものが含まれます。 

  • 競合商品の存在とその影響
  • 侵害者の営業努力
  • 侵害品と商標権者の商品とが競合しないこと
  • 侵害品の特徴

損害賠償算定方法2~商標法第38条2項による算定

 商標法38条2項による損害額は、侵害者がその侵害の行為により利益を受けているとき、その利益の額を商標権者等が受けた損害と推定するという規定です。

 簡単にいえば、要点は以下のとおりです。

  「損害額」=「侵害者がその侵害の行為により受けた利益額」と推定

損害賠償算定方法3~商標法第38条3項による算定

基本的な考え方

 商標法38条2項による損害額については、商標権者が、商標権を侵害した者に対し、商標権の使用料(ライセンス料)相当額の金銭を、自己が受けた損害としてその賠償を請求することができるというものです。

 簡単にいえば、要点は以下のとおりです。

  「損害額」=「使用料相当額」

 なお一般に、本条に基づく損害額は低額になりがちなので、訴訟実務では、商標法38条1項又は2項の請求が認められない場合の予備的な請求として主張することが少なくありません。

 また、商標権者自らが登録商標を使用していない場合、38条1項又は2項に定める逸失利益の喪失がないとの抗弁はありえますが、商標法38条3項に基づく使用料相当額の損害賠償請求は可能です。

損害不発生の抗弁

 ただし、商標法38条3項に基づく請求が認められない場合もあります。

 最高裁平成9年3月11日判決は、商標法38条3項が、損害が発生していないことが明らかな場合にまで侵害者に損害賠償義務があるとする趣旨の規定ではないと述べ、登録商標に顧客吸引力が全く認められず、その登録商標に類似する標章を使用することが侵害者の商品の売上げに全く寄与していないことが明らかな場合であって、侵害者が損害の発生があり得ない旨を抗弁として主張立証したときは、使用料相当額の損害(商標法38条3項)も生じていないとして当該損害の賠償の責めを免れることができる場合がある、と述べました。

 

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