取締役会~権限と職務

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取締役会の権限

取締役会の権限

 取締役会設置会社においては、会社法は、次のような事項について、取締役会が決定すべきものと定めており、これらの事項については、特定の取締役に決定を委ねることはできません(会社法362条4項)。

会社法362条4項所定の事項

(1)重要な財産の処分及び譲受(この点は後述します)
(2)多額の借財
(3)支配人その他重要なる使用人の選任及び解任
(4)支店その他の重要なる組織の設置、変更及び廃止
(5)取締役の職務執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制等の確保に必要な体制の整備
(6)定款の定めに基づく取締役、会計参与、監査役、執行役または会計監査人の会社に対する責任の免除の決定
(5)その他会社法362条4項に定めるもの
(6)その他重要な業務執行の決定

会社法362条4項以外に規定の事項

(1)自己株式の取得株数、価格等の決定(会社法157条)
(2)株式分割(会社法183条2項)
(3)株式無償割当に関する事項の決定(定款に別段の定めがある場合を除く。会社法186条)
(4)公開会社における新株発行の募集事項の決定(会社法201、202条)
(5)一に満たない端数の株式の買取りに関する事項(会社法234条5項)
(6)公開会社における新株予約権の募集事項の決定(会社法238、240、241条)
(7)株主総会の招集の決定(会社法298条4項)
(8)取締役による競業取引又は利益相反取引の承認(会社法356、365条1項)
(9)計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書の承認(会社法436条3項)

取締役会の決議事項~「会社財産の処分」

基本的な考え方

 先ほど申し上げたとおり、重要な財産の処分や譲受については、取締役会の決議事項とされ、取締役会は当該事項の決定を代表取締役に委任することはできないとされています(同法362条4項1号)。

これは実務上も時折問題となりますが、具体的には何を指すのでしょうか。

 この点を一律の機械的基準で考えることはできません。判例は、重要な財産の処分に当たるか否かの基準として、(1)当該財産の価格(2)会社の総資産に占める割合(3)保有目的(4)処分行為の態様(5)会社における従来の取扱い等、を総合的に考慮して判断するとしています(最高裁平成6年1月2日判決)。

 なお、(3)の「保有目的」とは、文字通りの「目的」と狭く解釈するものではなく、当該財産の性質や会社にとっての位置付けなどの財産の質的側面を総合的に表現したものであると考えられています。

 そしてこうした質的側面の判断要素としては、取締役会規程等の内規、当該行為の必然性、当該行為の影響、社内の他の組織や取締役の関与の有無、取締役会決議の現実性・合理性、その他が挙げられます。

 また「処分行為の態様」とは、有償か無償か等を示すものであり、無償(譲与、寄付等)であれば、量的重要性が低くても取締役会決議に必要な場合が多くなると考えられます。

 最後に「従来の取扱い」を考慮するのは、継続的な一貫性のある取扱いをする必要という視点によるものであると考えられます。それで、従来行ってきた行為が会社法に違反している場合、従来から行われてきたからという理由で、これが適法となるわけではありません。

裁判上の事例

 この点、裁判例に現れた具体的な過去の事例を挙げますと、以下のようなものがあります。

  • 会社の総資産の1.6%に相当する保有株式の譲渡について、額の大きさや営業のために通常行われる取引ではないことなどから、「重要な」財産の処分にあたるとした例(最高裁平成6年1月20日判決)
  • 関連会社の10億円の債務についての保証予約について、保証額は会社の総資産の0.51%、負債額の0.75%相当にとどまるものの、資本金に占める割合は7.75%と高く、社内に1件5億円以上の債務保証は取締役会の付議事項とする旨の取締役会規則があることなどから、「多額の」借財にあたるとした例(東京地裁平成9年3月17日判決)
  • 2億円の借財について、資本金の17.9%、資産の5.7%、経常利益の33.3倍に相当し、分割弁済の負担も年間売上のほぼ10%に相当することなどから、財務・経営への影響が極めて大きいとして「多額の」借財にあたるとした例(東京地裁平成24年2月21日判決)
その他の数量的目安

 以上のほか、従来からの企業実務では、「財産の処分及び譲受け」について、総資産の1%という数字を参考にすることが多いと言われています。

 これは、昭和59年と平成4年に実施したアンケート調査結果に基づいて東京弁護士会会社法部会が、重要な財産の処分に関する量的基準の目安として提唱した以下の数字を参考にしていることが多く、こうした量的基準は実務に大きな影響を与えていると考えられています。

寄付金:総資産(単体)の0.01%
債権放棄:総資産(同)の0.1%
それ以外:総資産(同)の1%

取締役会の職務

 上で申し上げた取締役会の権限とも関係しますが、取締役会の職務は主として以下のものです(会社法362条2項)。

  • 会社の業務執行の決定
  • 代表取締役・取締役の職務の執行の監督
  • 代表取締役の選定及び解職

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