株主総会議事録の解説

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株主総会議事録の作成と保存

議事録作成の義務

 株主総会を行えば議事録を作成しなければなりません。なお旧商法では、議長・出席取締役が署名、捺印する必要がありましたが、新会社法では不要となりました。

また、議事録は電磁的記録(電子ファイル)をもって作成することも可能です(会社法施行規則72条2項)。

議事録の保存期間

  株主総会の議事録は、本店に10年間、支店に写しを5年間、株主と会社債権者の請求があれば、閲覧・謄写させなければなりません。議決権行使の代理委任状及び議決権行使書は本店に3ヶ月備え、同様に閲覧・謄写に供することになります(会社法318条、310条6項、311条3項、312条4項)。

株主総会議事録の各項目の解説

株主総会議事録記載事項

  株主総会議事録の記載事項については、会社法施行規則72条3項に詳細に規定されています。旧商法下での株主総会議事録と比較すると記載すべき事項が増加しており、会社法に基づいて株主総会議事録を作成する際には、記載事項に漏れのないようにする必要があります。議事録記載事項の一部を挙げると次のとおりです。

  • 株主総会が開催された日時及び場所(当該場所にいない取締役、株主等が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)
  • 株主総会の議事の経過の要領及びその結果
  • 会社法に定められた一定の内容について、株主総会において述べられた意見又は発言の概要
  • 株主総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名又は名称
  • 株主総会の議長が存するときは、議長の氏名
  • 議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

 以下、各項目について簡単に解説します。なお、この項目は随時加筆予定です。

株主総会が開催された日時及び場所

 これは会社法施行規則72条3項1号に規定されています。ここには、当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席した場合における当該出席の方法が含まれます。

 例えば、主たる会場以外に別の会場を設けた場合や、一部の役員や株主がウェブ会議を通じて参加した場合など、その出席方法を記載することになります。

 なお、インターネット等による遠隔の参加の場合、出席者の音声が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっている必要があります。そして、議事録においても、情報伝達の即時性と双方向性を確認した事実を盛り込むことが望ましいとされています。

株主総会の議事の経過の要領及びその結果

 これは会社法施行規則72条3項2号に規定されています。

 「議事の経過」とは、株主総会の開会から閉会までになされた報告、審議と採決、質疑、動議の経過や内容をいいます。議事の経過については、速記録のようにすべての発言を一文字一文字残す必要はなく、発現や質問の「要領」を記載すれば足ります。

 「議事の結果」とは、付議された議案について、どのような決議がなされたかを指します。例えば、ある議案が原案どおり可決されたか、否決されたか、修正の上可決されたかといった内容となります。

会社法に定められた一定の内容について述べられた意見又は発言の概要

 これは会社法施行規則72条3項3号に規定されています。

 株主総会で述べられた意見や発言の内容やその概要をすべて記載しなければならないわけではありませんが、一定の事項については、述べられた意見や発言の内容の概要の記載が必要となります。

 具体的には、会社法施行規則72条3項3号のイからヨに定められていますが、監査等委員に関わる事項が多く、中小企業が直面する事項はさほど多くありません。中小企業が直面する可能性があるものの例をを挙げれば以下のようなものです。

  • 会計参与・監査役・会計監査人によるこれらの者の選任・解任・辞任等についての意見(会社法施行規則72条3項3号ニ)
  • 辞任した会計参与・監査役・会計監査人による辞任した旨およびその理由の陳述等(会社法施行規則72条3項3号ニ)
  • 計算書類の作成に関する事項について会計参与と取締役・執行役の意見が異なる場合における会計参与の意見(会社法施行規則72条3項3号チ)
  • 株主総会に提出する議案・書類等につき、監査役が法令・定款違反または著しく不当な事項があると認める場合におけるその意見(会社法施行規則72条3項3号ヌ)
  • 監査役の報酬等についての監査役の意見(会社法施行規則72条3項3号ル)
  • 会計監査権限のみを有する監査役による株主総会の提出議案・書類等の調査結果(会社法施行規則72条3項3号ヲ)

株主総会の議長が存するときの議長の氏名

 これは会社法施行規則72条3項5号に規定されています。

 会社法は、株主総会の議長の選任方法について特段定めていませんが、定款により代表取締役社長などが議長を務めることが実務上はお多いといえます。もっとも、株主総会において選任することも可能です。

議事録の作成に係る職務を行った取締役の氏名

 これは会社法施行規則72条3項6号に規定されています。

 株主総会議事録の作成は、特に中小企業では、代表取締役が行うことが実務上は多いと思われます。

 とはいえ、必ずしも代表取締役が行う必要はなく、代表取締役以外の取締役が行うこともできます(例:株主総会担当の取締役が定められている場合)。それは、株主総会議事録の作成は会社の業務執行ではないと考えられているからです。

 この点、どの取締役が作成するかは会社の自治に委ねらた事項として、取締役会の決議により定める必要もないと解されています。

株主総会議事録サンプル

 サンプルとして、株主総会議事録のひな形をご紹介します。もちろん、内容はケース・バイ・ケースで変更します。なお、サンプル中の人名は実在の人物と何らの関係もありません。

定時株主総会議事録

定時株主総会議事録

平成×年×月×日午前11時00分、当社本社事務所会議室において、定時株主総会を開催した。

  発行済株式の総数                          200株
  議決権を行使することができる株主の総数                 3人
  議決権を行使することができる株主の議決権の数            200個
  議決権を行使することができる出席株主数(委任状によるものを含む)    2人
  出席株主の議決権の数(委任状によるものを含む)           180個

  出席取締役  新井貴浩、赤松真人、福地寿樹
  出席監査役  石原慶幸

議事の経過の要領及びその結果

 上記のとおり出席があったので、本株主総会は適法に成立した。定刻代表取締役社長新井貴浩は定款の規定により議長となり、開会を宣し直ちに議事に入った。

1 報告事項

事業報告の件

議長は、当社第12期(平成21年4月1日から平成22年3月31日まで)の事業報告につき、事業報告に基づきその内容を報告した。

2 決議事項

第1号議案  第12期計算書類の承認の件

 議長は、当社第12期(平成21年4月1日から平成22年3月31日まで)の計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書及び個別注記表)の内容を説明した後、本議案の賛否を議場に諮ったところ、満場一致をもって原案どおり承認可決された。

第2号議案  取締役3名選任の件

 議長は、本株主総会終結の時をもって取締役3名全員が任期満了となることから、改めて取締役として下記の者を選任したい旨を説明し、本議案の賛否を議場に諮ったところ、満場一致をもって原案どおり承認可決された。なお、被選任者は即時就任を承諾した。


取締役 : 新井貴浩、赤松真人、福地寿樹

 以上をもって本総会の議事を終了したので、議長は閉会を宣し、午前11時30分散会した。

 上記決議の経過とその結果を明確にするため議事録を作成し、代表取締役新井貴浩はこの議事録を作成し、記名押印する。

 平成22年5月25日

由宇工業株式会社 定時株主総会

    議長 代表取締役    新井貴浩   (会社実印)
    (議事録作成取締役)

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