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取適法(下請法)における委託事業者の義務

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取適法(下請法)における委託事業者の義務の概要

 ある取引が取適法(下請法)の適用対象とされた場合、委託事業者には特定の義務が課せられます。またさらに、委託事業者が禁止を受ける行為も少なくありません。

 以下、これら委託事業者の義務と委託事業者への禁止行為についての概要をご説明します。

 なお、どんな取引が取適法(下請法)の適用対象となるかについては、以下のページをご覧ください。
  取適法(改正下請法)の概要と対象取引

委託事業者の義務

 以下、取適法の委託事業者に課せられる義務についてご説明します。

発注内容を明示する義務

義務の概要

 委託事業者は、発注に当たって、発注内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法等法が定める事項)を書面又は電磁的方法(電子メール等)により明示しなければなりません(取適法4条)。

明示すべき事項

 発注書面に明示すべき事項は以下のとおりです。

必須のもの (1)委託事業者及び中小受託事業者の名称
(2)製造委託等を委託をした日
(3)給付の内容(品目、品種、数量、規格、仕様等)
(4)物品等の受領期日(役務提供委託の場合は、期間でも可)
(5)物品等の受領場所(役務提供委託の場合は、役務が提供される場所)
(6)製造委託代金等の額、支払期日
該当するものがある場合 (1)検査完了期日(検査をする場合)
(2)一括決済方式や電子記録債権で支払う場合の所定の事項
(3)原材料等を有償支給する場合の所定の事項
(4)未定事項についての未定の理由・内容確定の予定期日
発注書面の提供方法

 発注書面は、以下の方法により提供できます(改正法によって、電子的提供でも、受託事業者の事前の承諾が不要となりました)。

  • 紙媒体による方法
  • 受信者を特定した電子的送信
     例:電子メール、EDI、ショートメッセージ、SNSのメッセージ
  • 電子ファイルを記録した媒体(USB、CD-R等)

 ただし、中小受託事業者が紙媒体での発注書面の交付を求めたときは、委託事業者はこれに応じる必要があります(取適法4条第2項)。

発注書面の提供タイミング

 発注書面は、発注時に直ちに提供する必要があります(取適法4条第1項)。

支払期日を定める義務

義務の内容

 委託事業者は、発注した物品を受領した日や役務の提供を受けた日から60日以内のできる限り短い期間内で、製造委託等代金の支払期日を定めなければなりません(取適法3条)。このことは、委託事業者が検査をするかどうかにかかわりません。

 そしてこの「60日以内」とは、受領日を1日目として60日目以内、と解されています。

支払期日が金融機関の休業日に当たる場合

 予め書面や電子データによる合意があれば、支払期日が金融機関の休業日に当たる場合に翌営業日の支払とした結果、60日を超えた場合も支払遅延には当たらないとされています(「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」の15ページ)。

遅延利息を支払う義務

 委託事業者が、支払期日までに製造委託等代金を支払わなかった場合、受領した日から60日を経過した日から実際日までの期間については、年14.6%の遅延利息を支払う義務があります(取適法6条)。

書類等の作成・保存義務

 委託事業者は、給付内容、代金の金額など、取引に関する一定の事項を記録した書類や電子ファイルとして作成し、委託取引が完了後2年間保存する義務を負います(取適法7条、製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律第7条の書類等の作成及び保存に関する規則)。

委託事業者に禁止されている行為

 取適法は、委託事業者に対して、11項目の行為を禁止しています。そして留意する必要があるのは、こうした禁止行為については、仮に中小受託事業者との間で合意があったとしても、取適法違反であることに変わりはないという点です。

受領拒否

受領拒否とは

 取適法5条1項1号は、中小受託事業者に責任がないのに、納入の対象たる物品や、提供されるサービスの受領を拒否することを禁止しています。

 以下のような場合が受領拒否に当たる例です。

  • 番組制作会社がテレビ局からの委託に基づき番組を制作して完成したが、テレビ局は出演者の不祥事を理由に放送しないことを決定し、当該番組の映像データを受領しなかった。
  • 中小受託事業者たる食品メーカーがチェーンスーパーからPB商品の製造の委託を受けた。チェーンスーパーが食品メーカーの事情を考慮せず一方的に納期の短縮を指示し、食品メーカーは最大限努力したが納期に間に合わなかった。チェーンスーパーは納期遅れを理由に当該PB商品を受領しなかった。
受領拒否に当たらない例

 以下のような場合は受領拒否には該当しません。

  • 中小受託事業者の給付の内容が発注書面に明記された委託内容と異なる場合
  • 中小受託事業者の給付に瑕疵がある場合
  • 中小受託事業者の責任で中小受託事業者の給付が期日に間に合わず、その結果給付を受けることが無意味となった場合

支払遅延

支払遅延とは

 取適法5条1項2号は、委託代金を支払期日が到来しても支払わないことを禁止しています。またこの支払期日については、物品受領日や役務提供日から60日以内とされています(取適法3条)。

 そして前記支払期日の期間は、委託事業者が検査をするかどうかにかかわらず、物品受領日や役務提供日からカウントします。検収合格日からのカウントではありません。

支払期日が60日を超えて定められている場合

 また、支払期日が60日を超えて定められているような場合は、60日を超える支払期日を設定したこと自体も取適法違反となりますし(前述の「支払期日を定める義務」に違反する)、さらに、受領日から60日目までに支払わないときも取適法に違反することとなります。

中小受託事業者からの請求書提出の遅れがある場合

 中小受託事業者からの請求書提出の遅れがある場合も、物品受領日や役務提供日から60日以内の支払がないときは取適法違反とされます。

手形払いの禁止

 支払遅延の禁止に関連して、取適法では、委託代金を手形で支払うことが禁止されました(取適法5条1項2号)。つまり、委託者が、中小受託事業者への支払について、手形払を選択したこと自体が取適法に違反するということになります。

金銭及び手形以外の支払手段

 BtoBにおいては、金銭及び手形以外の支払手段としては、一括決済方式や電子記録債権(いわゆる「でんさい」)等があります。

 こうした支払手段については、満期が取適法に定める支払期日よりも前のものなら取適法上認められますが、満期が取適法に定める支払期日よりも後のものについては、取適法違反となります。

委託代金の減額

支払遅延とは

 取適法5条1項3号は、中小受託事業者に責任がないのに、発注時に決定した代金を発注後に減額することを禁止しています。

 この減額は、協賛金やリベートの徴収を含め、名目や方法を問わず禁止の対象となります。

振込手数料の中小受託事業者による負担

 この点で、委託者が委託代金を振り込む際に振込手数料を中小受託事業者に負担させる行為(実際には委託代金から振込手数料を差し引くことが多い)については、行政の運用が変更され、取適法違反として扱われることになりました。

 そしてこの振込手数料の負担については、契約書において委託者と中小受託事業者の間で合意しているとしても取適法違反となります。

委託代金の減額が適法となる場合

 取適法において代金の減額が認められるのは、中小受託事業者に責任がある場合です。

 例えば、目的物や役務の品質について合意した要求に達しておらず、この点について中小受託事業者に責任がある場合に、委託者が客観的に合理的な損害分を差し引く場合がありえます。

 また、中小受託事業者に責任がある原因で、納入した成果物に問題があるものの、委託者が役務を受け入れて手直しをした場合に当該手直しの費用を差し引くといったこともあります。

返品

禁止される返品とは

 取適法5条1項4号は、中小受託事業者に責任がないのに、発注した物品等を受領後に返品することを禁止しています。

 例えば、自動車メーカーが部品メーカーに発注して納品を受けた部品について、後日生産計画が変更になったことを理由に、余剰となった部品を返品するといった例があります。

 また、委託者が中小受託事業者に広告の制作を委託し、制作物を受領したにもかかわらず、委託者の客先からキャンセルされたことを理由に制作物を返品するといった例もあります。

不当な返品に当たらない例

 以下のような場合は、取適法に抵触する返品には該当しません。

  • 中小受託事業者の給付の内容が発注書面に明記された委託内容と異なる場合
  • 中小受託事業者の給付に瑕疵がある場合

買いたたき

買いたたきとは

 取適法5条1項5号は、同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い委託代金の額を不当に定めること、を禁止しています。

「通常支払われる対価」とは

 この「通常支払われる対価」とは、公取委の運用基準では、当該給付と同種又は類似の給付について当該中小受託事業者の属する取引地域において一般に支払われる対価をいうとされています(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準)。

 また、前記運用基準では、買いたたきに該当するか否かは、以下を含む要素を勘案して総合的に判断するとされています。

  • 対価の決定方法(代金の額の決定に当たり中小受託事業者と十分な協議が行われたかどうかを含む)
  • 対価が差別的であるかどうか等の決定内容
  • 通常の対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況
  • 当該給付に必要な原材料等の価格動向等

購入・利用強制

「購入・利用強制」とは

 取適法5条1項6号は、中小受託事業者に発注する物品の品質を維持するためなどの正当な理由がないのに、委託事業者が指定する物(製品、原材料等)や役務(保険、リース等)を強制して購入や利用をさせること、を禁止しています。

 ここで留意すべきことは、「委託事業者が指定する物や役務」とは、委託事業者自らが販売・提供するものに限らないという点です。委託事業者の子会社、関連会社、取引先特約店等第三者が販売する商品、役務も含まれます。

「強制」の意味

 委託事業者が、物の購入又は役務の利用を取引の条件とする場合、購入・利用しないことに対して不利益を与える場合はもちろんのこと、さらに、取引関係を利用して、事実上、中小受託事業者が購入や利用を余儀なくさせている場合も含まれます。

 それで、委託事業者としては、任意に購入や役務の利用をお願いしたと考えていても、状況から見て中小受託事業者が拒否できないという場合も取適法違反となり得ることについては十分に留意する必要があります。

報復措置

「報復措置」とは

 取適法5条1項7号は、委託事業者の違反行為を公正取引委員会、中小企業庁又は事業所管省庁に知らせたことを理由に、その中小受託事業者に対して取引数量の削減・取引停止など、不利益な取扱いをすること、を禁止しています。

改正点

 報復措置の禁止については取適法への法改正によって改正がされています。具体的には、「報復措置の禁止」の申告先として、現行の公正取引委員会及び中小企業庁長官に加え、事業所管省庁の主務大臣が追加されました。

 例えば物流の事業に関係した違反行為なら国土交通省が、メディカル関係の事業なら厚生労働省が事業所管省庁になると考えられます。

有償支給原材料等の対価の早期決済

「有償支給原材料等の対価の早期決済」とは

 取適法5条2項1号は、委託事業者が有償支給する材料等で中小受託事業者が物品の製造等を行っている場合、中小受託事業者に責任がないのに、その原材料等が用いられた物品の製造委託等代金の支払日より早く原材料等の対価を支払わせ、中小受託事業者の利益を不当に害する行為を禁止しています。

 例えば、委託事業者が中小受託事業者に対して、半年分の材料等を買い取らせ、その後に中小受託事業者が製造する製品の毎月の支払期日よりも前に当該材料等の決済をする、といったケースが例として挙げられます。

中小受託事業者に責任がある場合

 他方、中小受託事業者に責任がある場合は前記禁止は適用されません。その例としては、以下のようなものが考えられます。

  • 中小受託事業者が、支給された材料等によって不良品や注文外の物品を製造した場合
  • 中小受託事業者が支給された材料等を他に転売してしまった場合

不当な経済上の利益の提供要請

「不当な経済上の利益の提供要請」とは

 取適法5条2項2号は、委託事業者が自己のために、中小受託事業者に金銭や役務、その他の経済上の利益を不当に提供させ、中小受託事業者の利益を不当に害する行為を禁止しています。

 ここには、本来中小受託事業者に対して負担すべき費用を負担しないことによって委託事業者が経済的利益を得ることも含まれます。

不当な経済上の利益の提供要請の例

 不当な経済上の利益の提供要請となりうるものには、例えば以下のようなものがあります。

  • 委託事業者が、機械部品等の製造を委託している中小受託事業者に対し、委託内容にない金型設計図面を無償で譲渡させた。
  • 小売業者である委託事業者が、顧客への商品の配送を委託している中小受託事業者に対して、小売店舗の営業の手伝いのために従業員を無償で派遣させた。
  • 委託事業者が、量産終了から一定期間が経過した製品の金型について、中小受託事業者からの破棄申請があったのに対して、「自社だけで判断することは困難」などの理由で長期にわたり明確な返答を行わず、保管・メンテナンスに要する費用を考慮せず、無償で金型を保管させた。
  • 中小受託事業者が指定された時刻に委託事業者の物流センターに到着したが、委託事業者の準備が終わっておらず中小受託事業者が長期間の待機を余儀なくされたが、委託事業者はその待ち時間について必要な費用を負担しなかった。

不当な給付内容の変更・やり直し

「不当な給付内容の変更・やり直し」とは

 取適法5条2項3号は、中小受託事業者に責任がないのに、発注の取消や発注内容の変更を行ったり、給付の受領や役務商標の後にやり直しや追加作業を行わせ、中小受託事業者の利益を不当に害する行為を禁止しています。

 この規定は、給付内容の変更又はやり直し自体を禁止するものではありません。まず、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がある場合(例えば給付内容が契約の趣旨に沿っていないとか、契約不適合がある)は許されます。

 また、給付内容の変更又はやり直しのために必要な費用を委託事業者が負担する場合など、中小受託事業者の利益を不当に害しないと認められる場合も、当該禁止行為には該当しません。

「不当な給付内容の変更」の例

 「不当な給付内容の変更」となりうるものには、例えば以下のようなものがあります。

  • 委託事業者が、中小受託事業者に一定数の製品の製造を委託し、中小受託事業者が原材料や部品を調達していた。しかし委託事業者が、製品の売行きが悪く今後の販売数も見込めないという理由で、委託した製品の一部の数量分の発注を取り消し、中小受託事業者に対して補償をしなかった。
  • 委託事業者が、中小受託事業者との間で合意した要件に基づきソフトウェアの開発を委託したが、エンドユーザーの意向で要件を変更するとして開発内容の変更を中小受託事業者に指示した。しかし、開発内容の変更によって生じた作業の増加分の追加費用は負担しなかった
「不当なやり直し」の例

 「不当なやり直し」となりうるものには、例えば以下のようなものがあります。

  • 委託事業者が、委託製造していた金型について、従来の基準では合格していたところ、検査基準を一方的に変更し、中小受託事業者に無償でやり直しを求めた。
  • 委託事業者が、中小受託事業者者に十分な説明をしないまま、委託にかかるダイレクトメールの封入等の作業を行わせたところ、後日、無償で、自社の都合で作業のやり直しをさせた。
  • 委託事業者が、テレビCMの制作を中小受託事業者に委託し、中小受託事業者が納入した完成品は3条書面に明記された委託内容とは異なっておらず、広告主の担当の了解を得ていた。ところが広告主の役員が委託事業者に修正の指示をしたため、委託事業者が、中小受託事業者にテレビCMの修正を行わせ、それに要した追加費用を負担しなかった。

協議に応じない一方的な代金決定

「協議に応じない一方的な代金決定」とは

 この規定は、取適法への法改正によって新設されました。取適法5条2項4号は、中小受託事業者が、コスト増その他の事情によって委託代金額に関する協議を求めたにもかかわらず、委託事業者が当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に委託代金の額を決定し、中小受託事業者の利益を不当に害する行為を禁止しています。

 なお、委託代金の「決定」には、代金の引下げのほか、据え置くことも含まれます。

 この規定は、適切な価格転嫁が行われる取引環境の整備が必要という問題意識と対等な価格交渉を確保する観点から新たに制定されたものです。

コスト増その他の事情とは

 コスト増その他の事情は、中小受託事業者の給付に関し委託代金の額に影響を及ぼし得る事情をいいます。ここには、労務費、原材料価格、エネルギーコスト等の高騰によるコストの変動に加え、納期の短縮、納入頻度の増加、発注数量の減少等の取引条件の変更、需給状況の変化、委託事業者から従前の代金の引下げを求められた場合といった事情も含まれます。

協議に応じない一方的な代金決定の例

 以下のような行為が禁止されうる例となります。

  • 中小受託事業者からの協議の求めを明示的に拒絶する場合に加え、協議の求めを無視したり、協議の日程をずっと決めなかったり、協議の実施を繰り返し先延ばしたりして、協議の実施を困難にさせる場合
  • 中小受託事業者が求めた特定の事項について、委託代金の額を決定するために必要な説明又は根拠となる情報の提供をしない場合(必要な説明等をしたかは実質的・総合的に判断されますので、「形だけ」の説明では違反となる場合があります)

取適法に違反した場合のリスク・不利益

 取適法に違反した場合、委託事業者には種々のリスクがあります。以下その概要を簡単にご説明します。

事業者名の公表

 取適法の違反行為があり、行政庁から是正を求める勧告がなされた場合、委託事業者が勧告の内容に従うか否かを問わず、「違反した事業者名」と「違反内容」が一般に公表される運用がされています。

 そのため、自社についてのレピュテーションを損ない、企業イメージの低下につながります。コンプライアンスに関する姿勢に疑義が生じる結果、取引先によっては、コンプライアンス違反の企業との取引として、自社との取引が見直しの対象となるかもしれません。

 また、コンプライアンス違反を理由に、取引金融機関の審査が厳しくなって融資を受けられなくなる結果、資金繰りに重大なダメージが及ぶこともあります。

刑事罰

 取適法の違反行為(一部のもの)に対しては刑罰(50万円以下の罰金)を受けることもあります(取適法14条~16条)。

 罰則の対象となる行為の例を挙げると、「発注内容を明示する義務」(取適法4条1項)への違反、
発注書面の紙媒体による交付義務違反(取適法4条2項)、「書類作成・保存義務」(取適法7条)への違反、検査拒否・虚偽報告の場合があります。



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