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企業間取引と契約不適合責任

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会社間取引にかかる契約不適合責任に適用される法律

契約不適合責任とは

 契約不適合責任とは、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものである」(民法562条1項)場合に、売主が負う責任をいいます。

 また、請負契約においても、「請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき」に、請負人が契約不適合責任を負います(民法636条)。

 2020年の民法改正前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていたものであり、民法の改正によって用語も変更されました。

契約不適合責任に関して適用される法律

 企業間取引における契約不適合責任に関して適用される法律は民法であり、さらに企業間の売買取引については、商法の規定が優先的に適用されます。

企業間の売買契約と契約不適合責任

契約不適合責任発生の要件

 企業間の売買契約においては、契約において排除されていない限り、契約不適合責任の発生の要件として、商法が適用されます。具体的には以下のとおりです。

速やかな検査義務

 商法では、買主に対して、売買の目的物を受領したときは、その目的物を遅滞なく検査する義務を課しています(商法526条1項)。

 つまり、企業の場合、売買目的物を受け取ったら、遅滞なく、商品の種類、数量、品質について検査をする必要があるということです。

責任追及ができる期間

 企業間の売買契約では、責任追及ができる期間について以下のように定めています。この点は、不適合を知ったときから1年以内に通知すればよいとされている民法の規定(566条)とは異なります。

直ちに発見できる種類・品質・数量

 売主に対して直ちに契約不適合である旨の通知をする必要がある(商法526条2項前段)。

直ちに発見できない種類・品質

 目的物受領から6か月以内に不適合を発見し、売主に対して直ちに契約不適合である旨の通知をする必要がある(商法526条2項後段)。

 ただし、契約不適合を売主が知っていた場合には、前記の期間を過ぎた後も、買主は売主に契約不適合責任を追及できます(商法526条3項)。それは、売主が契約不適合を知りながら商品を売ったのですから、買主が検査・通知を怠ったとしても、買主の利益を犠牲にして売主を保護する必要はないと考えられるからです。

契約不適合責任の内容

 契約不適合責任として、買主が売主に求めることができる責任の内容は以下のとおりです。

履行の追完請求

 履行の追完を請求できます。具体的には、民法は、以下の3つを定めています(民法562条1項)。

目的物の修補

 目的物を修理・修繕して不適合のない状態にするよう求めることです。

代替物の引渡し

 不適合のある製品に代わって、不適合のない良品に交換してもらう方法です。あるいは、納品された製品が違う種類の製品だった場合の交換という場合もあります。

不足分の引渡し

 製品を1000個注文したのに850個しか納入されなかったという場合に、追加で納品してもらう方法です。

 なお、これらの方法のうちどの方法を取るかは、第一次的には買主が選択できると解されています(民法562条1項本文)。ただし、買主に不相当な負担を課するものでないときは、売主は、買主が請求した方法と異なる方法で追完することができます(同条1項ただし書)。

代金減額請求

 売主が催告を受けても追完に応じない場合や、追完が不可能であると判断される場合等においては、買主は代金の一部について減額を請求できます(民法563条)。

契約解除

 契約不適合に関して売主に債務不履行があるときは、契約の解除ができます(民法564条、541条、542条)。

 つまり、買主が、不適合についての履行の追完を求めて催告しても売主による履行がないときは、解除ができます(民法541条)。ただし、当該不履行が社会通念に照らして軽微であるときを除きます。

 また、履行の追完が不能である場合(一部不能の場合は残部のみでは契約目的を達成できない場合)、一定の期間を過ぎると意味がない場合、催告しても明らかに履行の追完がされる見込みがない場合等においては、催告なしに解除ができます(民法542条)。

損害賠償請求

 契約不適合によって損害が生じたときは、買主は売主に損害賠償請求ができる場合があります(改正民法564条[カーソルを載せて条文表示])。

 ただし、損害賠償請求ができる場合は、売主に帰責性があることが必要です。ただし、改正前民法の場合と異なり、損害賠償の範囲は履行利益(不適合が追完されていれば得られていた利益の賠償)まで認められることになりました。

企業間の請負契約と契約不適合責任

適用される法律

 請負契約に関しては、企業間取引であっても、商法には特則の定めがないため、契約で別段の規定がない限りは民法の規定が適用されることになります。

請負契約において契約不適合がある場合に発注者が行える請求・措置

 請負契約の目的物に契約不適合(瑕疵)がある場合に発注者が行える請求・措置は以下のとおりです。

修補請求
アウトライン

 これは文字どおり、契約不適合状態を修補(修正して瑕疵をなくす)するように請求する権利です(民法562条1項[カーソルを載せて条文表示]、559条[カーソルを載せて条文表示])。

修補に過分な費用が必要なケース

 2020年施行の改正前の民法では、「瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要する」という場合、瑕疵の修補を請求することができないという規定がありました(改正前民法634条1項但書[カーソルを載せて条文表示])。

 上の規定の解釈として、たとえ修補に過分の費用を要したとしても、修補が物理的に可能であれば、重要な瑕疵については修補を行わなくてはならないという結論が導かれる可能性がありました。

 改正民法は、このような解釈が請負人に過大な履行義務を負わせ、不合理な結論になることになる可能性を考え、上の規定を削除し、瑕疵修補請求権の要件を、民法の一般原則に委ねることとしました。

 具体的には、改正民法412条の2にある、「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるときは...履行の請求をすることができない」という規定が適用されることになります。そして補修に過分の費用を要するようなケースについて、この規定がどのように適用されるかが、今後裁判において議論されていくものと考えられます。

代金減額請求

 これは文字どおり、請負代金の減額を求める権利です(民法563条[カーソルを載せて条文表示]、559条[カーソルを載せて条文表示])。

 これは、2020年施行の改正民法において、裁判例上は認められていた代金減額請求権を法律上明示したものです。

損害賠償請求
概要

 瑕疵(契約不適合)によって生じた損害の賠償を求めることができます。ここには、修補に要した費用が含まれます。

 例えば、システム開発の請負契約においてベンダの技術力不足などにより不適合が補修できず、発注者(ユーザ)が別のベンダに修正を依頼したという場合には、その費用を、受注者(ベンダ)に請求できるということになります。

 ただし、システム開発においては不適合があればただちに損害賠償請求の対象となるわけではありません。システム開発においては不具合が生じるのは不可避であることを考えると、ベンダ側が速やかに対応しなかったとか、不適合が補修不能であったといった事情が必要となると考えられます。

損害賠償の要件の変更

 契約不適合責任(瑕疵担保責任)に関する損害賠償責任の考え方は、売買契約の場合と同様であり、損害賠償責任が生じるためには、受注者において帰責事由が要件となりました(改正民法564条[カーソルを載せて条文表示]、559条[カーソルを載せて条文表示])。

 この点については、売買契約に関して述べた欄をご覧ください。

契約解除
2020年施行の改正前の民法における考え方

 改正前民法635条では、瑕疵を理由とした解除は、請負の目的物に瑕疵があり、これによって契約の目的が達成できないときに限り、解除できると定められれていました。なお、どんな場合に「契約の目的が達成できない」といえるのかについての裁判例は、「瑕疵を理由に契約解除が認められたケース」の欄をご覧ください。

2020年施行の改正民法における考え方

 改正後民法では、契約不適合を理由とした解除については、契約違反・債務不履行に基づく解除と同様の原則に服するようになりました(改正民法564条[カーソルを載せて条文表示]、559条[カーソルを載せて条文表示])。

 この点については、売買契約に関して述べた欄をご覧ください。

契約不適合責任の行使期間

改正前民法での考え方

 改正前民法においては、瑕疵担保責任に基づく請求権の行使期間は、原則として引渡から1年間と限られていました(改正前民法637条1項[カーソルを載せて条文表示])。また契約によってこの期間がさらに短期に定められていることもありえました。

改正民法における考え方
契約不適合責任の期間の起算点

 改正民法においては、契約不適合責任の期間について変更が加えられました。具体的には、「1年間」の起算点が、成果物の引渡時ではなく、 「不適合を知った時」となりました(改正前民法637条1項[カーソルを載せて条文表示])。

 また、発注者(ユーザー)は、不適合を知った時から1年以内に権利を行使する必要まではなく、1年以内に受注者(ベンダー)に通知をすればよいということになりました。

契約不適合責任の期間の終期

 では、改正民法のもとで、契約不適合責任を行使できる期間はいつまででしょうか。

 この点は、契約不適合責任について、民法の債務不履行の一般原則が適用されることになったことを考えると、 権利行使ができるようになった時から5年間となるのが原則であると考えられます。

 もっとも、民法に定める契約不適合責任の内容や権利行使の期間などは、契約によって修正することが可能です。それで、前記のような期間が現実的ではないと考える場合、今までの実務と同様、契約不適合責任の期間を検収から1年間といった規定にすることは依然として可能です。

 
 


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