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企業間取引と継続的契約の法理

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継続的契約の法理の概要

継続的契約の法理とは

 企業間の取引においては、長期にわたり継続的な取引関係が存在することが少なくありません。契約である以上、いつかは終了することがあるのは当然ではあります。

 しかしながら、継続的取引について、一方の企業が自己都合で打ち切り、かつ、他方の当事者がその取引に自己の多くを依存していたというケースでは、打ち切られた側の企業は非常に困るという事態が生じえます。

 そのため、裁判例は、信義誠実の原則から、一定の継続的契約について、正当事由がない限り一方的な契約関係の解消は許されないとする法理を形成してきました。これを「継続的契約の法理」といいます。

継続的契約の法理が適用され得る契約

 継続的契約の法理が適用され得る契約が何か、を一律の線で引くことはできません。しかし、裁判例は、以下の要素から、突然の契約の終了により予期しない不当な損害が発生することが正義公平の見地から許されるか否か、という点から判断しています。

  • 当該契約の内容・目的
  • 当事者の属性
  • 契約の期間が長期であること
  • 打切りを受けた当事者にとっての当該契約に基づく取引の事業に占める割合等、当該取引への依存度
  • 当該契約履行のための投資の大きさ

契約終了に正当な理由があるとされる例

 他方、継続的契約の法理が適用される契約であっても、「やむを得ない事由」「正当な理由」(裁判例により異なる)があれば、契約終了について責任を問われることはありません。

 裁判例は、上の「継続的契約の法理が適用され得る契約」の欄で挙げた要素のほか、以下のような要素や事情を検討しています。

  • 当初からの取引関係の継続の予定
  • 信頼関係破壊の有無や他の契約解消の必要性
  • 両当事者の力関係・交渉力
  • 取引期間
  • 実務慣行
  • 終了を受けた側の取引への貢献度
  • 解消申入れ後から解消までの期間
  • 損失補償の有無

継続的契約の法理に関する裁判例

一定期間の契約の履行を命じた例

千葉地裁佐倉支部平成8年7月26日決定

 プラスチック製部品の製造,販売を目的とするA社と、同じ一族が経営する製造会社であるB社との間で製品の供給に関して継続的に取引がされていたところ、A社とB社の間で製品供給に関する紛争が生じました。

 そして、A社がB社に対して継続的供給契約に基づく供給請求権を主張し、1年間の製品の供給を命ずる仮処分を申し立てました。裁判所は、継続的供給契約の成立を認め、1ヶ月という予告期間を設けての解約は無効であるとして仮処分決定を発しました。

 前記案件では、当該取引による供給高が総販売額の8割を超えていたこと、取引が定型化してB社の都度の諾否なく取引がされていたこと、といった事情が考慮されました。

大阪地裁平成5年6月21日決定

 A社は、昭和48年以降,B社からジーンズにつき継続的な供給を受け販売していましたが、A社が安売り店に転売したことから、平成4年にB社がジーンズの出荷を停止しました。

 そのため、A社がB社に対して契約上の権利を有すること、ジーンズの仮の引渡し、出荷停止の差止めの仮処分を申し立てました。

 裁判所は、出荷の停止が許されるのは、A社に支払遅延等代金回収に不安があるとか、契約当事者間の信頼関係を破壊するような特段の事情がある等、B社の出荷停止がやむを得ないものとして是認される場合に限られるところ、本件においてはそのような事情がないとして、契約上の権利を有することを仮に定め、現に発注したジーンズについて仮の引渡しを命じました。

 この事例では、その取引期間が長期間だったこと、その間に取引形態に変更はないこと、B社がA社者の注文があれば在庫切れの場合でない限りこれに応じて速やかに商品を出荷していたこと、B社の措置が安売り店への卸売を防ぎ再販売価格を維持するために執ったという公正な取引を阻害するものであったこと、等の事情が挙げられました。

損害賠償を命じた例

東京地裁昭和56年5月26日判決

 昭和47年1月、A社とB社との間でB社が製造する工場床材の関東以北の販売代理店として販売し、工事の施工をする契約を締結していましたが、昭和50年、B社が商品を自ら販売することを計画し、A社に対して販売の中止を申し入れ製品の出荷を拒否しました。

 これに対し、A社がB社に対して損害賠償を請求しました。裁判所は、不信行為や販売成績不良等契約の継続を期待し難い特段の事情が存しない限り、B社は契約を解約をすることができないとし、A社が得られた1年間の営業利益分の損害賠償を認めました。

 A社からの請求を認めた事情として、A社とB社の契約が商品の一手販売契約であったこと、A社が、代理店として商品販売のために多額の投資を行ったり、犠牲を払って相当の営業努力をもって販路の維持拡大に努め、B社の利益のためにも貢献をしていたこと、B社が自己の利益のみのために解約をしたこと、A社がB社以外の同種商品を扱っていなかったこと、営業活動の成果として工事の施工まで半年から1年かかることが普通であること、等が挙げられています。

 
 


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