取締役の辞任・解任

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取締役の辞任

取締役が辞任できる時期

 取締役は、原則としていつでも辞任できます。それは、会社と取締役との関係は委任契約であるところ、委任契約はいつでも解除できるからです(民法651条1項[条文表示])。

 そして、辞任したい場合は、会社に対し、辞任したい旨の意思表示をすれば、辞任の効力が生じます。会社代表者や株主の承諾を得る必要はありません。

取締役辞任の方法

書面によることが望ましい

 辞任の意思表示は口頭でもよいとされていますが、通常は、辞任の旨を明確にするために、辞任しようとする取締役が代表取締役に辞表を提出します。

代表取締役自身が辞任する場合

 では、会社の代表取締役自身が辞任したい場合はどうすればよいでしょうか。この場合、他にも会社の代表者がいるときはともかく、そうでない場合は、まず取締役会を開いて後任の代表者を選任し、同時に辞任することになります(東京高裁昭和59年11月13日判決)。

 もっとも、任期途中で辞任するという事態においては、会社が正常な状況ではなく、上のような手続きを踏むことが難しい場合があることは当然想定されます。この点、別の判例は、取締役全員に辞任の意思が了知されれば辞任の効力が認められるとしています(岡山地裁昭和45年2月27日判決)。

 それで、他の取締役全員に辞任の通知をなせば足りることが少なくないと思われます。

 ただし、代表取締役が欠けた場合には、退任した代表取締役は、新たに選定された代表取締役が就任するまで、なお代表取締役としての権利・義務を有します(権利義務承継代表取締役。会社法351条1項[条文表示])。この点の解決が必要であり、この点は「取締役としての権利義務が残る場合」の欄をご覧ください。

唯一の取締役が辞任する場合

 では、取締役会非設置会社の場合にありうる、会社の唯一の取締役が辞任したい場合はどうすればよいでしょうか。この場合は非常に難しい問題があります。

 もっとも、唯一の取締役が辞任する場合には、幹部従業員に対し辞任の意思表示受領権限を与え、これに対して辞任の旨伝えればよいと考えられる可能性があります。

 この点、有限会社の取締役兼代表取締役のケースですが、仙台高裁平成4年1月23日判決は、有限会社の取締役兼代表取締役が、他の会社幹部と意見が合わずかねてより辞意をもらしていたところ、自宅を訪問した会社幹部職員に辞任届を書いて渡したというケースで、辞任の効力を認めました。

 上のケースは、当該取締役が辞任の撤回を主張したところ裁判所が辞任の撤回を認めなかったという場面での判断ではありますが、参考になると思われます。ただしこの場合、辞任の効力とは別に、次の取締役が選任されるまでは、権利義務承継取締役として、取締役としての職務権限と義務が残るという点は留意する必要があります(この点は、後述の「権利義務承継取締役」の欄を参照ください)。

取締役の辞任と会社に対する損害賠償責任

損害賠償責任を負う場合

 先ほど、取締役はいつでも辞任できると書きましたが、1点留意すべき点があります。

 それは、その辞任が、会社のために不利な時期になされた場合は、会社の損害を賠償しなければならない、という定めがある点です。もっとも、取締役にとってやむを得ない事由があるときは損害賠償の責任はありません(民法651条2項[条文表示])。

「不利な時期」とは

 ではこの「不利な時期」とは何をいうのでしょうか。一般的には、取締役が辞任したとき、会社が遅滞なく他人にその事務処理を委任するのが困難な時期などをいうと考えられています。

 したがって、辞任する取締役が、すぐに代替がきかないような業務について、後任への引継ぎも行わず、通常であれば引継ぎができる期間も置かず突然に辞任したという場合、「不利な時期」という判断がなされる可能性があります。ただしこの点は、ケース・バイ・ケースの判断である点、留意が必要です。

「やむを得ない事由」とは

 他方、取締役の辞任は、会社にとって「不利な時期」になされたものであっても、「やむを得ない事由」がある場合には取締役は損害賠償責任を負いません。この「やむを得ない事由」とは何を意味するのでしょうか。

 これについては、フランス民法2007条2項に定められている「受任者自ら重大な損害を蒙ることなしには、その委任事務を継続することができない場合」をいうものと解されています。例えば重大な健康の問題が生じ、取締役の職務の継続が健康に重大な影響を与えるという場合はこれに該当するものと考えられます。ただしこの点も、ケース・バイ・ケースの判断である点、留意が必要です。

取締役としての権利義務が残る場合

 また、注意しなければならないのは、会社法は、ある取締役の辞任によって、取締役の最低人数を欠く場合(例えば取締役が3人いるところで、1人が辞任するような場合)、辞任した取締役が、新たに選任された取締役が就任するまでの間、取締役としての権利義務を有すると規定していることです(会社法346条1項[条文表示])。

 このような取締役を「権利義務承継取締役」と呼んでいます。つまり、権利義務承継取締役は、会社との関係では役職を辞していても、取締役としての職務権限、取締役としての義務が残ります。

 この点の問題を正面から解決するためには、裁判所に対し「一時役員の職務を行うべき者」(いわゆる「仮取締役」)の選任の申立を行い(会社法346条2項[条文表示])、裁判所がこの仮取締役を選任し、これによって役員の人数が定員を充足すれば、辞任した取締役は、権利義務承継取締役としての地位から脱することができます。

 もっとも、通常は、このような方法は手間ですし、会社としても辞任した取締役が権利義務承継取締役として残ることのデメリットやリスクを考えることが通常ですので、多くの場合会社に対し、次の取締役を早急に選任するよう交渉することで解決することが多いと思います。

辞任後、第三者に対する責任を負わない方法

 もう1点留意すべき点があります。つまり、辞任通知が会社に到達すれば、会社に対しては取締役辞任の効力は生じますが、第三者に対する関係においては、取締役の退任の登記をしないと、辞任したことを知らない第三者に対しては「自分はすでに取締役を辞任している」と主張することができない、ということです。

 通常、退任の登記は、代表取締役が、証明書類を添付して法務局に申請します。しかし、代表取締役が、退任の登記手続に協力してくれないことも多いでしょう。

 この場合、裁判所に訴訟を提起し、判決を得て変更の登記をすることができます。また、訴訟が終わるまでに、問題が生じる可能性があり、第三者からの責任を追及される可能性があるならば、訴訟のほか、取締役を辞任している事実をその責任を追求しそうな第三者に通知しておくことができます。

役員の解任

代表取締役を解任(解職)する方法

   取締役からの辞任とは逆に、取締役に不正行為があったり、能力不足のため、会社側がその取締役を解任したいと考える場合は当然に考えられるところです。

 まず、代表取締役について、代表取締役から解職し、平取締役にするだけであれば、取締役会設置会社の場合、取締役会で行えます。

 また、取締役会非設置会社の場合、代表取締役は取締役の互選で選任されているケースが多いと思われますが、この場合、取締役の過半数の意見又は株主総会で解任できるとして登記実務では運用されています。

取締役から解任する方法

   他方、ある取締役を、取締役そのものから解任するためには、株主総会を開き、その取締役に対する解任決議をする必要があります(会社法339条1項)。

 株主総会での解任決議は、定時株主総会で行うこともできます。しかし、定時株主総会がまだ先であり、すぐに解任したい場合、臨時株主総会を開いて、取締役の解任決議をする必要があります。

役員を解任するための理由は必要か

   取締役の解任は、理由があってもなくても、いつでも株主総会で解任することができます。

 ただし、ある取締役を正当な理由なく解任した場合、会社は、解任によって解任された取締役に発生した損害を賠償しなければなりません(会社法339条2項)。この場合の賠償額は、取締役が解任されなければ在任中および任期満了時に得られた利益の額と解されており、具体的には、残存任期中の役員報酬が基本となります。

 また、退職慰労金・賞与については、判例がわかれており、ケース・バイ・ケースであると考えられます。他方、慰謝料・弁護士費用は賠償には含まれないと解するのが一般的です。



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