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特定商取引法の概要と訪問販売ルールの解説

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特定商取引法の概要

企業のコンプライアンスと特定商取引法

 本ページでは、企業の立場から特定商取引法のアウトラインや実務上の留意点について解説します。

 BtoCの商品やサービスを取り扱う事業者においては、少なからず、特定商取引法の適用を受けるケースがあります。そのため、特定商取引法を理解し遵守する必要があります。

特定商取引法の目的

 特定商取引法(特商法)は、訪問販売、通信販売、電話勧誘販売といった消費者トラブルに発展しやすい特定の類型のBtoCの取引について、取引の公正を図り、消費者の利益を守ることを目的としています(特商法1条)。

 それで、企業としては、自社が展開するビジネスにおいて、「特定商取引」に属するものが含まれているかを確認する必要があります。そして、含まれている場合には、特商法の義務を遵守する必要があります。

特定商取引の対象となる主な取引類型

 特商法は消費者との取引をすべて対象としているわけではなく、一定の類型に属する取引を対象とします。ここでは、特商法が対象とする取引のうち主なものをご紹介します。

訪問販売

 特商法2条1項は、「訪問販売」を定義しています。簡単にいえば、事業者がインターネット、新聞、雑誌等で広告し、電話、ネット、郵便等の通信手段により申込を受ける取引をいいます。

 特定商取引法ににおける通信販売に関するルールの詳細は、「訪問販売の定義」の欄をご覧ください。

通信販売

 特商法2条2項は、「訪問販売」を定義しています。訪問販売は、事業者が消費者の自宅に訪問するものに限りません。それで、「消費者が自社の営業所で契約をしたから訪問販売とはならない」と安易に結論する前に、慎重な検討が必要です。

 具体的には、「特定商取引法と通信販売ルールの概要」のページをご覧ください。

電話勧誘販売

 特商法2条3項は、「電話勧誘販売」を定義しています。具体的には、「電話勧誘販売の定義」の欄をご覧ください。

 また、電話勧誘販売に関する特定商取引法が定めるルールについては、「特定商取引法における電話勧誘販売のルールの解説」のページをご覧ください。

特定継続的役務提供

 特商法41条は、「電話勧誘販売」を定義しています。具体的には、長期・継続的な役務の提供と、これに対する高額の対価を約する取引であって、特商法施行令において定めた種類、金額及び期間を満たす取引をいいます。

 現在、エステティック、美容医療、語学教室、家庭教師、学習塾、結婚相手紹介サービス、パソコン教室の7つの役務が対象となっており、期間は役務によって1ヶ月を超えるも、又は2ヶ月を超えるものが対象となります。金額については5万円を超えるもの か対象です。

訪問購入
訪問購入の定義

 特商法58条の4は、「訪問購入」を定義しています。具体的には、物品の購入を業として営む事業者が、営業所や店舗以外の場所において、物品を購入したり申込を受けたりすることです。

適用が除外される物品の例

 一定の種類の物品については、「訪問購入」の対象から除外されています。
特商法施行令34条は具体的に列挙しており、以下が挙げられています(特商法施行令34条、自動車について2輪が除かれる点については同施行令14条)。

  • 自動車(二輪を除く)
  • 家庭用電気機械器具(携行が容易なものを除く)
  • 家具
  • 書籍
  • 有価証券
  • レコードプレーヤー用レコード及び磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物

 これらの物品の具体例は、「特定商取引に関する法律施行令第34条で規定する物品の具体例」をご覧ください。

業務提供誘引販売取引
業務提供誘引販売取引の定義

 特商法51条は、「業務提供誘引販売取引」を定義しています。具体的には、以下を満たす取引です。

  • 物品の販売又は役務の提供(これらのあっせんを含む)の事業であること
  • 業務提供利益が得られると相手方を誘引すること
  • その者と特定負担を伴う取引をすること

 平たくいえば、事業者が、仕事を提供するので収入が得られるチャンスがあるといった口実で消費者を誘引し、その仕事に必要であるという理由で商品を売ったりて金銭負担を負わせる取引のことです。

業務提供誘引販売取引の具体例

 「業務提供誘引販売取引」の例としては、以下のようなものがあります。

  • 当社からホームページ作成の在宅ワークを提供するのであなたは収入が得られるが、仕事に必要であるという理由でPCと作成ソフトを購入してもらう取引
  • 当社の提携会社からデータ入力の仕事を回せるが、仕事に必要なので、有料で研修を受けてもらう取引

訪問販売に関する主たる法規制

 特定商取引法が定める、訪問販売に関する法規制のうち主たるものは以下のとおりです。

訪問販売の定義

 まずは、特定商取引法における「訪問販売」の定義を把握する必要があります。

消費者の住居や勤務先を訪問するもの

 最も典型的な「訪問販売」は、消費者の住居や勤務先をセールスマンが訪問して販売する類型です。

 しかしながら、これにとどまらず、喫茶店や路上での販売も含まれますし、ホテルや公民館などでの施設での販売であっても、期間や施設等に照らし、店舗に類似するものとは認められないものも訪問販売に該当します(特商法2条1項1号)。

キャッチセールス

 事業者が路上など営業所以外の場所で消費者を呼び止め、営業所に同行させて契約を締結させる場合です(特商法2条1項2号)。

アポイントメントセールス

 電話、郵便、SNSなどで販売目的を明示せずに消費者を営業所などに呼び出したり(特商法施行令1条1号)、「あなたは特別に選ばれました」といった、他者に比べて著しく有利な条件で契約できると述べて消費者を誘い(特商法施行令1条2号)、営業所などで契約を締結させた場合です。

事業者の名称等の明示

 事業者は、訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って、消費者に対して以下のことを告げる必要があります(特定商取引法3条)。

  • 当該事業者の名称・氏名
  • 販売やサービス提供の契約締結を勧誘する目的であること
  • 勧誘する商品、サービス又は権利の種類

勧誘を受けることの意思確認・再勧誘の禁止

 事業者は、訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って消費者に勧誘を受ける意思があることを確認するように努める努力義務があります(特商法3条の2第1項)。

 また、当該消費者が契約締結の意思がないことを示したときには、そのまま勧誘を継続したり、その後改めて勧誘することはできません(特商法3条の2第2項)。

書面の交付義務

 事業者は、契約の申込みを受けたとき(特商法4条)又は契約を締結したとき(特商法5条)には、以下の事項を記載した書面を消費者に交付する義務があります。

  • 事業者の名称等、住所、電話番号、法人の場合の代表者氏名(施行規則5条1号)
  • 契約の申込み又は締結を担当した者の氏名(施行規則5条2号)
  • 契約の申込み又は締結の年月日(施行規則5条3号)
  • 商品、サービス又は権利の種類(特商法4条1項1号)
  • 商品名及び商品の商標又は製造業者名(施行規則5条4号)
  • 商品の型式(施行規則5条5号)
  • 商品の数量(施行規則5条6号)
  • 販売価格又はサービスの対価(特商法4条1項2号)
  • 代金等の支払時期、方法(特商法4条1項3号)
  • 商品の引渡時期、権利の移転時期、サービスの提供時期(特商法4条1項4号)
  • クーリングオフに関する事項(特商法4条1項5号)
  • 商品についての契約不適合責任についての定めがあるときはその内容(施行規則5条7号)
  • 契約の解除に関する定めがあるときはその内容(施行規則5条8号)
  • そのほか特約があるときには、その内容(施行規則5条9号)

禁止行為

 訪問販売について、特商法は、以下のような行為を禁止しています。

  • 勧誘の際、又は契約の申込みの撤回や契約の解除を妨げるために、一定の事項について事実と違うことを告げること(特商法6条1項)
  • 勧誘の際、故意に事実を告げないこと(特商法6条2項)
  • 契約締結のために、又は契約の申込の撤回や契約の解除を妨げるために、相手を威迫して困惑させること(特商法6条3項)
  • キャッチセールスやアポイントメントセールスと同様の方法(勧誘目的を告げない誘引方法)により誘引した消費者に対して、公衆の出入りする場所以外の場所で勧誘を行うこと(特商法6条4項)

訪問販売に関する民事上のルール

 特商法は、訪問販売に関して、事業者と消費者間の契約に関して、民法の特約といえるいくつかのルールを設けています。その主なものをご紹介します。

クーリング・オフ
クーリング・オフの概要

 消費者が、訪問販売においていったん契約の申込みをしたり、契約を締結した場合でも、特商法が定める書面を受け取った日から8日以内であれば、事業者に対して、クーリング・オフ(申込みの撤回や契約の解除)をすることができます(特商法9条1項)。

クーリングオフの適用がない商品

 政令が定める一部の商品(使用や一部の消費により価額が著しく減少するおそれがある商品として政令で定めるもの)を使用し又は一部を消費したときは、クーリング・オフが適用されません(特定商取引法26条5項1号)。

 例を挙げると、防虫剤、殺虫剤、化粧品、履物、壁紙等があります(特商法施行令16条及び別表第三)。

 また、現金支払で対価が3,000円未満の商品についても適用がありません(特定商取引法26条5項3号、特商法施行令17条)。

クーリング・オフの方法

 クーリング・オフの方法は、書面又は電磁的記録により行います(特商法9条1項)。

 「電磁的記録」には、電子メール送信、販売業者等が自社のウェブサイトに設けるクーリング・オフ専用フォーム等を使った通知、電子ファイルを記録した媒体を送るといった方法があります。

クーリング・オフの期間

 消費者が、事業者から、特商法が定める書面を受け取った日から8日以内に通知を発する必要があります。

 起算日は、当該書面を受け取った日の当日からです。それで例えば、消費者が6月1日に当該書面を受領していれば、6月8日まではクーリング・オフができますが、6月9日からはできないということになります(消費者庁「特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)令和7年6月1日時点版60頁)。

 ただし、事業者が、クーリング・オフに関する事項につき事実と違うことを告げたり、威迫したりすることによって、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、上記期間を経過していても、消費者はクーリング・オフをすることができます(特商法9条1項)。

 また、事業者が特商法が定める書面を交付していない場合も「8日」の期間はスタートしないため、この場合もクーリング・オフができることになります。

クーリング・オフの効果

 クーリング・オフが適法に行使されたときは、当該契約は締結されず、又は解除されます。

 そして、この場合には、仮に、引き渡された商品が使用されたときや、サービスの提供がなされたときにおいても、事業者は、その商品の使用により得られた利益やサービスの提供の対価を請求できません(特商法9条5項)。

 例えば、ゴルフ会員権を購入した消費者が、メンバー料金でゴルフを行った後にクーリング・オフをした場合に、メンバー料金とビジター料金との差額は「利益」となりますが、消費者はこれを事業者に支払う必要はないということになります。

過量販売契約に関する契約申込の撤回・契約解除

 訪問販売において消費者が通常必要とされる量を著しく超える商品やサービス、特定の権利を購入する契約を結んだ場合、契約締結後1年間は、契約申込の撤回・契約解除ができます(特定商取引法9条の2第1項1号)。

 また、「次々販売」についても同様に契約申込の撤回・契約解除ができる旨規定されています。これは、過去の消費者の購入の累積から、今回の販売が結果的に通常必要とされる分量を著しく超える契約になること、又は既にそのような量を超えた保有状況の消費者であることを知りつつ契約の申込みを受け、又は契約を締結した場合をいいます(特定商取引法9条の2第1項2号)。

 なお、以上の規定は、消費者にその契約を結ぶ特別の事情があったときには適用されません(特定商取引法9条の2第1項ただし書)。例えば、親戚等の他者に配る目的があるとか、当該居宅における生活者の人数が一時的に増えるといった事情が考えられます。

一定の場合の契約の取消

 訪問販売における事業者による勧誘に関して、以下の場合には、消費者は契約の申込や承諾を取り消すことができます(特定商取引法9条の3)。

  • 消費者が、特商法6条1項に定める事項について事実と違うことを告げられ、その告げられた内容が事実であると誤認した場合
  • 消費者が、特商法6条2項に定める事項について故意に事実を告げられず、その事実が存在しないと誤認した場合

 当該取消ができる期間は、消費者が誤認に気づいたときから1年間、又は契約締結時から5年間です(特定商取引法9条の3第4項)。

契約を解除した場合の損害賠償等の額の制限

 訪問販売にかかる契約について、消費者の契約違反・債務不履行を理由として事業者が契約を解除する場合には、消費者に対して請求できる金額に、以下のような制限があります。そのため、事業者と消費者との間の契約書で、こうした金額を超える違約金等の定めがあったとしても同様です(特定商取引法10条1項)。

商品が返還された場合
 通常の使用料の額(ただし販売価格と返還時の時価の差額がこれを超えているときはその額)

商品が返還されない場合
 販売価格に相当する額

サービスを提供した後である場合
 提供したサービスの対価に相当する額

商品引渡又はサービス提供の前である場合
 契約の締結や履行に通常要する費用の額

 なお、特定商取引法10条1項の規定は、合意解約については適用されません。ただし、消費者庁の解説では、「このような場合であっても本項に準じて取り扱うことが望ましい」と述べられています。

 また、上の説明は多少簡略化している箇所があるため、正確には、特定商取引法の条文や消費者庁の解説をご覧ください。

代金の遅延等の場合の損害賠償の制限

 訪問販売にかかる契約について、消費者が、売買代金やサービスの対価の支払を怠った場合に事業者が請求できる損害賠償についても、法定利率による遅延損害金の範囲に限定されます(特定商取引法10条2項)。

 「法定利率」とは民法に定められた料率であり、現在は年3%となっています(民法404条2項)。

 
 


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