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特定商取引法における電話勧誘販売のルールの解説

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特定商取引法と電話勧誘販売

 特定商取引法は、特に消費者トラブルに発展しやすい特定の類型の取引を法律的に定め、取引の公正を図り消費者の利益を守るために、事業者に対してさまざまな規制を設ける法律です。

 そして、特定商取引法が定める取引の類型の一つが、「電話勧誘販売」です。

 本ページは、主として事業者の視点から、電話勧誘販売についてのアウトラインを解説します。

電話勧誘販売の定義

 まずは、特定商取引法における「電話勧誘販売」の定義を把握する必要があります。

電話勧誘販売の類型

 特商法2条3項は、「電話勧誘販売」を定義しています。一つの類型は、事業ゃが消費者に電話をかけて契約をするものです。

 のみならず、事業者が、特定の方法により消費者に電話をかけさせる場合も含まれます。電話をかけさせる方法として、特商法施行令では以下のものを規定しています。

  • 電話、郵便、ネット、ビラ、パンフレット等において、当該契約の締結について勧誘するためのものであることを告げずに電話をかけることを要請すること
  • 電話、郵便、ネット、ビラ、パンフレット等において、他の者に比して著しく有利な条件で契約を締結できることを告げ、電話をかけることを要請すること
申込はその場でする必要はない

 また、電話勧誘販売については、消費者が契約(の申込み)をすることは、その電話を切らずにそのまま申込をすることに加えて、電話を一旦切った後、消費者が郵便、電話、ネットなどで申込みをする場合でも、電話勧誘によって消費者の購入意思の決定が行われた場合にはこれに該当します。

電話勧誘販売の対象となる取引

 電話勧誘販売の対象となるのは、何らかの商品の売買契約や、サービス提供の契約です。

 また、法律が「特定権利」として定める、以下のような一定の権利の売買契約も含まれます(こちらを参照ください)。

保養のための施設又はスポーツ施設を利用する権利

 例として、リゾート会員権、ゴルフ会員権、スポーツ会員権等が挙げられます。

映画、演劇、音楽、スポーツ、写真又は絵画や美術工芸品等を鑑賞し、又は観覧する権利

 例として、映画チケット、演劇チケット、音楽会チケット、スポーツ観覧チケット、写真展チケット、美術展チケット等が挙げられます。

語学の教授を受ける権利

 例として、英会話サロン利用権等が挙げられます。

電話勧誘販売に関する主たる法規制

 特定商取引法が定める、電話勧誘販売に関する法規制のうち主たるものは以下のとおりです。

事業者の名称等の明示

 事業者は、訪問販売をしようとするときは、勧誘に先立って、相手方に対し以下のことを告げる必要があります(特定商取引法16条)。

  • 当該事業者の名称・氏名
  • 勧誘を行う人の氏名
  • 販売やサービス提供の契約締結を勧誘する目的であること
  • 勧誘する商品、サービス又は権利の種類

再勧誘の禁止

 事業者は、契約締結の意思がないことを示した消費者に対して、そのまま勧誘を継続したり、その後改めて勧誘することはできません(特商法17条)。

書面の交付義務

 事業者は、契約の申込みを受けたとき(特商法18条)又は契約を締結したとき(特商法19条)には、以下の事項を記載した書面を消費者に交付する義務があります。

  • 事業者の名称等、住所、電話番号、法人の場合の代表者氏名(施行規則45条1号)
  • 契約の申込み又は締結を担当した者の氏名(施行規則45条2号)
  • 契約の申込み又は締結の年月日(施行規則45条3号)
  • 商品、サービス又は権利の種類(特商法18条1項1号)
  • 商品名及び商品の商標又は製造業者名(施行規則45条4号)
  • 商品の型式(施行規則45条5号)
  • 商品の数量(施行規則45条6号)
  • 販売価格又はサービスの対価(特商法45条1項2号)
  • 代金等の支払時期、方法(特商法4条1項3号)
  • 商品の引渡時期、権利の移転時期、サービスの提供時期(特商法4条1項4号)
  • クーリングオフに関する事項(特商法4条1項5号)
  • 商品についての契約不適合責任についての定めがあるときはその内容(施行規則45条7号)
  • 契約の解除に関する定めがあるときはその内容(施行規則45条8号)
  • そのほか特約があるときには、その内容(施行規則45条9号)

前払式電話勧誘販売における承諾等の通知

 電話勧誘販売において、消費者が、商品や権利を受け取る前に、又はサービスを受ける前に、代金の全部又は一部を支払う場合(いわゆる「前払式」)、事業者は、以下の事項を、書面によって通知する必要があります。ただし、代金を受け取った後遅滞なく商品の引渡を行うときを除きます。

  • 申込みの承諾の有無(施行規則56条1号)
  • なお、承諾しないときには、受け取ったお金をすぐに返すことと、その方法を明らかにする必要があります(施行規則57条1項1号)。

  • 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号(施行規則56条2号)
  • 受領した金銭の額(それ以前にも金銭を受け取っているときには、その合計額  施行規則56条3号)
  • 当該金銭を受け取った年月日(施行規則56条4号)
  • 申込みを受けた商品名・数量、権利や役務の種類(施行規則56条5号)
  • 承諾するときには、商品の引渡等時期(施行規則56条6号)

禁止行為

 特商法は、電話勧誘販売について、以下のような行為を禁止しています。

  • 勧誘の際、又は契約の申込みの撤回や契約の解除を妨げるために、一定の事項について事実と違うことを告げること(特商法21条1項)
  • 勧誘の際、故意に事実を告げないこと(特商法21条2項)
  • 契約締結のために、又は契約の申込の撤回や契約の解除を妨げるために、相手を威迫して困惑させること(特商法6条3項)

電話勧誘販売に関する民事上のルール

 特商法は、電話勧誘販売にかかる事業者と消費者の間の契約についてのルールを設けています。以下主なものをご紹介します。

クーリング・オフ

クーリング・オフの概要

 電話勧誘販売において、消費者が、いったん契約の申込みをしたり、契約を締結した場合でも、特商法が定める書面を受け取った日から8日以内であれば、事業者に対して、クーリング・オフ(申込みの撤回や契約の解除)をすることができます(特商法24条1項)。

クーリングオフの適用がない商品

 使用や一部の消費により価額が著しく減少するおそれがある商品として政令で定めるものについては、これを使用し又は一部を消費したときは、クーリング・オフが適用されません(特定商取引法26条5項1号)。

 例を挙げると、防虫剤、殺虫剤、化粧品、履物、壁紙等があります(特商法施行令16条及び別表第三)。

 また、現金支払で対価が3,000円未満の商品についても適用がありません(特定商取引法26条5項3号、特商法施行令17条)。

クーリング・オフの方法

 クーリング・オフの方法は、書面又は電磁的記録により行います(特商法24条1項)。

 「電磁的記録」には、電子メールを送信する方法、販売業者が自社のウェブサイトに設けるクーリング・オフ専用フォームを使った通知、電子ファイルを記録した媒体を送付するといった方法が含まれます。

クーリング・オフの期間

 特商法が定める書面を消費者が受け取った日から8日以内に通知を発する必要があります。

 起算日は、消費者が当該書面を受け取った日の当日からです。それで例えば、消費者が10月11日に当該書面を受領していれば、10月18日まではクーリング・オフができますが、10月19日からはできないということになります(消費者庁「特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)令和7年6月1日時点版169頁)。

 ただし、事業者が、クーリング・オフに関する事項につき事実と違うことを告げたり、威迫したりすることによって、消費者が誤認・困惑してクーリング・オフしなかった場合には、上記期間を経過していても、消費者はクーリング・オフをすることができます(特商法24条1項)。

 また、事業者が特商法が定める書面を交付していない場合も「8日」の期間はスタートしないため、この場合もクーリング・オフができることになります。

クーリング・オフの効果

 クーリング・オフが適法に行使されたときは、当該契約は締結されず、又は解除されます。

 そして、この場合には、仮に、引き渡された商品が使用されたときや、サービスの提供がなされたときにおいても、事業者は、その商品の使用により得られた利益やサービスの提供の対価を請求できません(特商法24条5項)。

 例えば、健康器具を購入して使用した消費者がクーリング・オフをした場合にも事業者は消費者に、使用料といった金銭を請求することはできないということになります。

過量販売契約に関する契約申込の撤回・契約解除

 消費者が通常必要とされる量を著しく超える商品やサービス、特定の権利を購入する契約を結んだ場合、契約締結後1年間は、契約申込の撤回・契約解除ができます(特定商取引法24条の2第1項1号、2項)。

 また、「次々販売」についても同様に契約申込の撤回・契約解除ができる旨規定されています。これは、過去の消費者の購入の累積から、今回の販売が結果的に通常必要とされる分量を著しく超える契約になること、又は既にそのような量を超えた保有状況の消費者であることを知りつつ契約の申込みを受け、又は契約を締結した場合をいいます(特定商取引法24条の2第1項2号)。

 ただし、消費者にその契約を結ぶ特別の事情があったときを除きます(特定商取引法24条の2第1項ただし書)。例えば、親戚等の他者に配る目的があるとか、当該居宅における生活者の人数が一時的に増えるといった事情が考えられます。

一定の場合の契約の取消

 電話勧誘販売において、以下の場合には、消費者は契約の申込や承諾を取り消すことができます(特定商取引法24条の3)。

  • 消費者が、特商法21条1項に定める事項について事実と違うことを告げられ、その告げられた内容が事実であると誤認した場合
  • 消費者が、特商法21条2項に定める事項について故意に事実を告げられず、その事実が存在しないと誤認した場合

 そして、当該取消ができる期間は、消費者が誤認に気づいたときから1年間、又は契約締結時から5年間です(特定商取引法24条の3第2項、9条の3第4項)。

契約を解除した場合の損害賠償等の額の制限

 電話勧誘販売にかかる契約については、消費者の契約違反・債務不履行を理由として事業者が契約を解除する場合でも、消費者に対して請求できる金額に、一定の制限があります。

商品が返還された場合
 通常の使用料の額(ただし販売価格と返還時の時価の差額がこれを超えているときはその額)

商品が返還されない場合
 販売価格に相当する額

サービスを提供した後である場合
 提供したサービスの対価に相当する額

商品引渡又はサービス提供の前である場合
 契約の締結や履行に通常要する費用の額

 そして、前記の制限については、事業者と消費者との間の契約で、前記金額を超える違約金等の定めがあったとしても同様です(特定商取引法25条1項)。

 なお、特定商取引法25条1項の規定は、合意解約については適用されません。ただし、消費者庁の解説では、「このような場合であっても本項に準じて取り扱うことが望ましい」と述べられています(消費者庁「特定商取引に関する法律の解説(逐条解説)令和7年6月1日時点版179頁)。

 なお、上の説明は多少簡略化している箇所があるため、正確には、特定商取引法の条文や消費者庁の解説をご覧ください。

代金の遅延等の場合の損害賠償の制限

 電話勧誘販売においては、消費者が、売買代金やサービスの対価の支払を怠った場合に事業者が請求できる損害賠償についても、法定利率による遅延損害金の範囲に限定されます(特定商取引法25条2項)。

 
 


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