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特定商取引法と通信販売ルールの概要

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特定商取引法と通信販売

 ネット販売を中心に、通信販売は広く普及しており、少なからぬ企業は、店舗での販売に並ぶ販売チャンネルとして位置づけたり、又は店舗販売よりも通信販売を主力とするようになっています。

 そして特定商取引法は、通信販売についても、取引の公正を図り消費者の利益を守るために、事業者に対して種々の規制やルールを設けています。

 本ページは、主として事業者の視点から、通信販売についてのアウトラインを解説します。

通信販売の定義

 まずは、特定商取引法における「通信販売」の定義を把握する必要があります。

 特商法における「通信販売」とは、販売業者等が「郵便等」によって売買契約やサービス提供契約の申込みを受けて商品や特定の権利を販売したりサービスを提供することをいいます(特商法2条2項)。

 「郵便等」は、郵便や信書便、電話、ファクシミリその他の通信、又はインターネット等の通信手段を利用する方法が主なものです(特商法施行規則2条)。

通信販売の対象となる取引

 通信販売の対象となるのは、何らかの商品の売買契約や、サービス提供の契約です。

 また、法律が「特定権利」として定める、以下のような一定の権利の売買契約も含まれます(こちらを参照ください)。

保養のための施設又はスポーツ施設を利用する権利

 例として、リゾート会員権、ゴルフ会員権、スポーツ会員権等が挙げられます。

映画、演劇、音楽、スポーツ、写真又は絵画や美術工芸品等を鑑賞し、又は観覧する権利

 例として、映画チケット、演劇チケット、音楽会チケット、スポーツ観覧チケット、写真展チケット、美術展チケット等が挙げられます。

語学の教授を受ける権利

 例として、英会話サロン利用権等が挙げられます。

通信販売の広告に関するルール

 通信販売は、消費者と事業者が対面で取引をするわけではないため、販売条件等についての情報は、広告を通じて提供されます。それで、広告の情報が不十分だったり不正確だったりすると、トラブルが発生するリスクがあります。

 また、消費者が、ある商品やサービスの購入の決定にあたっては、必要な情報が十分に与えられる必要があります。そのため、特商法は、通信販売の広告についてルールを設けています。

対象となる広告

 特商法の対象となる通信販売の広告は、販売業者がその広告に基づき通信手段により契約の申込を受ける意思が明らかであり、かつ、消費者がその表示により契約の申込ができるものをいいます。それで、単なる商品のイメージ広告は、対象とはなりません。

 また、広告方法の種類を問いません。例としては、インターネット通販サイト、ECモール、新聞や雑誌での広告、テレビ通販、折込ちらし、ダイレクトメール、電子メール、チャット等のメッセージによる広告、SNS広告が挙げられます(すべてを網羅したものではありません)。

広告の表示項目に関するルール

表示すべき事項(一覧)

 特定商取引法は、通信販売の広告に関して、表示すべき事項を定めています。主なものを挙げれば以下のとおりです。

  • 事業者の名称、住所、電話番号(特商法施行規則23条1号)
  • 法人の事業者がインターネット等により広告をする場合は代表者又は通信販売に関する業務の責任者の氏名(特商法施行規則23条2号)
  • 電子メールによる商業広告を送る場合事業者の電子メールアドレス(特商法施行規則23条10号)
  • 販売価格・サービスの対価(送料別の場合送料 特商法11条1号)
  • 代金等の支払時期、方法(特商法11条2号)
  • 販売価格や送料等以外に購入者が負担すべき金銭があるときは内容と額(特商法施行規則23条4号)
  • 商品の引渡時期・権利の移転時期・役務の提供時期(特商法11条3号)
  • 申込の期間に関する定めがあるときはその旨及と内容(特商法11条4号)
  • 契約の申込の撤回や解除に関する事項(売買契約の返品特約がある場合はその内容を含む 特商法11条5号)
  • 商品についての契約不適合に関する販売業者の責任についての定めがあるときはその内容(特商法施行規則23条5号)
  • ソフトウェアを販売したりPC・スマホ等で再生するコンテンツを提供したりする場合は動作環境(特商法施行規則23条6号)
  • 契約を2回以上継続して締結する必要があるときは、その旨、契約期間、その他の条件(特商法施行規則23条7号)
  • 表示事項の一部を表示しない場合に、消費者から請求に応じ書面や情報を提供する際に有料での提供となる場合はその金額(特商法施行規則23条9号)
  • 商品の販売数量の制限等の特別な販売やサービス提供の条件があるときはその内容(特商法施行規則23条8号)
表示の省略

 特商法11条ただし書は、前記表示義務に対する例外を定めています。すなわち、ある一部の項目については、消費者の請求があったときに事業者が遅滞なく提供する資料(電子的なものを含む)に記載することによって、当該項目を広告から省略することができます。

 なお、この省略に関するルールは複雑であるため、詳しくは、消費者庁の「特定商取引法ガイド」をご覧ください。

ネット販売の最終確認画面等における表示

 法律が「特定申込」と定義している、インターネットを利用した通信販売や、事業者が提供する様式にとって消費者が申し込む通信販売においては、消費者が必要な情報を一覧性をもって確認できるように、表示すべき事項についてルールが定められています。

表示すべき事項

「特定申込み」に該当する通信販売においては、ネット上の最終確認画面や申込書面に、以下の事項を表示する必要があります(特定商取引法12条の6)。

  • 分量(特商法12条の6第1項1号)
  • 販売価格・サービスの対価(送料別の場合送料 特商法12条の6第1項2号、11条1号)
  • 代金等の支払時期、方法(特商法12条の6第1項2号、11条2号)
  • 商品の引渡時期・権利の移転時期・役務の提供時期(特商法12条の6第1項2号、11条3号)
  • 申込の期間に関する定めがあるときはその旨及と内容(特商法12条の6第1項2号、11条4号)
  • 契約の申込の撤回や解除に関する事項(売買契約の返品特約がある場合はその内容を含む 特商法12条の6第1項2号、11条5号)
誤認させる表示の禁止

 契約の申込であるのにそうではないような誤認させるような表示や、前記表示すべき事項について誤認させるような表示が禁止されています(特定商取引法12条の6第2項)。例を挙げれば以下のようなものがあります。

  • 購入申込完了のボタンなのに「送信する」といった、申込完了とは容易に認識できないボタンを表示すること
  • 実際は有料の定期購入コースなのに、「無料お試し」といった表示を強調して有料の申込であることが分かりにくくなっている表示
  • 「注文を確定する」のボタン近くには別途送料が発生する表示がなく、離れた箇所に送料が別に発生することが表示されているもの

誇大広告等の禁止

 特定商取引法は、広告による消費者トラブルを未然に防止するため、以下の事項について、「著しく事実に相違する表示」や「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」を禁止しています(特定商取引法12条)。

  • 商品の種類、性能、品質若しくは効能、役務の種類、内容若しくは効果又は権利の種類、内容若しくはその権利に係る役務の種類、内容若しくは効果(特商法施行規則26条1号)
  • 商品等、販売業者等、又は販売業者等が営む事業についての、国や地方公共団体、通信販売協会、その他著名な法人・団体・個人の関与
  • 商品の原産地若しくは製造地、商標又は製造者名
  • その他特定商取引法11条各号に定める事項

承諾なしの電子メール広告の提供の禁止

 特定商取引法は、消費者による事前の承諾がない限り、事業者が電子メールやSMSによる広告を送信することを禁止しています(特商法12条の3、特商法施行規則27条)。またこの規制は、通信販売事業者に加えて、通信販売電子メール広告の受託事業者も対象となります(特商法12条の4)。

 ただし、以下のような例外(規制対象外)があります。

  • 契約申込受理、申込内容確認、契約の成立や内容、契約の履行(発送等)通知などに付随した電子メール広告(特商法12条の3第1項2号、特商法施行規則28条2項)
  • メールマガジン等、消費者の申込や承諾に基づいて配信される電子メールやSMSに掲載される広告(特商法12条の3第1項3号、特商法施行規則29条1号)
  • メール等の通信手段を消費者に提供するサービスにおいて、消費者がそのサービスのアカウントからメール等を送ると、当該メール等に広告が記載される場合(特商法12条の3第1項3号、特商法施行規則29条2号)

 また、事業者は、電子メール広告の提供について、消費者から承諾や請求を受けた場合は、最後に電子メール広告を送信した日から3年間、その承諾や請求があった記録を保存することが必要となります(特定商取引法12条の3第3項、特商法施行規則30条2項)。

その他の禁止行為

解除妨害のための不実告知の禁止

 特商法13条の2は、通信販売の契約の申込みの撤回や解除を妨げるために、申込の撤回や解除に関する事項、契約の締結を必要とする事情に関する事項について、事実と違うことを告げることを禁止しています。

「申込の撤回や解除に関する事項」の例を挙げれば、解約を申し出てきた消費者に対して、事実に反して「定期購入契約になっているので、残りの分の代金を支払わなければ解約はできない。」などと告げる行為といったものがあります。

 「契約の締結を必要とする事情に関する事項」の例としては、事実に反し、「購入した商品の使用を中止すると逆効果になる」と告げる行為といったものがあります。

顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為の禁止

 特商法とその施行規則は、一定の行為を、「顧客の意に反して契約の申込みをさせようとする行為」として禁止しています(特商法14条1項2号、施行規則42条1項)。

 具体的には、顧客がネット通販において、PCやスマホといった端末で申込の操作をする際に、注文内容を容易に確認したり訂正したりすることができるようになっていないこと、をいいます。

 例えば、最終確認画面において注文内容を容易に確認できない場合がこれに該当します。また、「変更」、「注文内容を修正する」、「前のページへ戻る」などのボタン等注文内容を訂正するための手段を提供していない場合も違反となりえます。

 また、申込者が自分で変更しない限り、注文内容のデフォルトの設定が定期購入契約となっているような場合等、一般的には想定されない設定がなされており、よほど注意していない限り、申込み内容を認識しないままに申し込んでしまうようになっている場合も 違反となりえます。

契約解除に伴う債務不履行の禁止

 通信販売において売買契約等が解除されたとき、事業者は代金返還など債務の履行を拒否したり、遅延したりすることを禁止しています(特商法14条1項1号)。

これら禁止事項に違反した場合の効果

 これら禁止事項にかかる行為は、通常は、民事上も債務不履行や不法行為に該当する可能性が高いため、特商法があえて禁止する意味があるのかという疑義が生じるかもしれません。

 しかし、特商法のこれら禁止事項に違反したときは、事業者は、単に民事上の責任(損害賠償義務)を負うだけでなく、行政庁から、業務改善の指示(特商法14条1項)や業務停止命令(特商法15条1項前段)といった行政処分を受けることになり、行政処分を受けたことがウェブサイトで公表される場合もあります。したがって、事業者にとっては大きなダメージとなることがあるため、注意が必要です。

 
   


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