採用と雇用~有期雇用契約 解説労働法

有期雇用契約とは

 本稿では、有期雇用契約(機関の定めのある雇用契約)に関する諸問題について解説します。

有期雇用契約とは、雇用期間の定めのある契約であり、有期雇用契約は期間の満了とともに終了するのが原則です。

 しかし実際は、「有期契約」であっても、人員調整を容易にするための便宜上使われていることも多く、更新の手続きがルーズかつ機械的に行われたり、更新手続きさえされずに、長期間雇用されるケースが少なくありません。

 それで、裁判所は、期間の定めが一応あっても、更新することへの期待ができる事情があるときは、安易な更新拒絶(雇止め)は許されず、期間の定めがない契約における解雇と同様、合理的な理由が必要となる、と判断してきました。また、場合によっては、問題となっている契約が、実質的には「期間の定めのない契約」とみなされる場合もあります。

有期雇用契約に関する労働契約法の改正

 そしてこの判例法理を敷衍し、労働者を保護する趣旨から、労働契約法において、有期雇用契約に関する改正がなされました。すなわち以下のような改正です。

[1] 無期雇用契約への転換(改正労働契約法18条)

有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるという規定です。

[2] 「雇止め法理」の法定化(改正労働契約法19条)

裁判所が示してきた雇止めを制限する法理を、法律として規定しました。

雇止めを有効なものとするための措置

 そこで、有期雇用契約を利用する企業としては、安易な雇止めは避けるべきですが、いざ必要な場合に雇止め(有期雇用契約の不更新)が無効とされないよう、普段から手を打っておく必要があります。

 この点、平成12年9月11日労働省労働基準局監督課発表の「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告」は、参考となります。

 同報告によれば、以下の状況が全て認められる有期労働契約は、無期雇用契約とみなされる可能性は低いとされています。ただし、労働契約法の改正により、何れにしても雇止めが認められるのは、前記のとおり無期雇用契約への転換が認められる前ということになります。

[1] 業務内容や契約上の地位が臨時的であること又は正社員と業務内容や契約上の地位が明確に相違していること

[2] 契約当事者が有期契約であることを明確に認識していると認められる事情が存在すること

[3] 更新の手続が厳格に行われていること

[4] 同様の地位にある労働者について過去に雇止めの例があること

 そこで、企業としては、以上の要素を踏まえ、自社において締結されている有期雇用契約の内容や有期契約社員の処遇等を見直すことは、将来のリスクの軽減に役立つことになるかもしれません。この点で、時代とともに変動する判例法理にあわせたアドバイスを得るために、労働法に精通した弁護士のアドバイスも活用できると思われます。



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