オープンソースソフトウェアの概要

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オープンソースのアウトライン

オープンソースとは

 まず、OSS(オープンソース・ソフトウェア)とはどのようなものをいうのでしょうか。非常に簡単にいえば、自由に改変ができ、自由な再頒布が認められているソフトウェアです。またソースコードの公開をライセンス条件とするものもあります。

 この点、OSSについて、「誰でも無条件に使える」という誤解を受ける場合があります。

 しかし注意しなければならないのは、オープンソースソフトウェアについては、著作権は放棄されていない、という点です。著作権が放棄されたソフトウェアなら、第三者がどのように使っても自由ですが、著作権が放棄されていないからこそ、原作者の定めるライセンス条件に従う必要があります。

オープンソースの基本的な条件

 オープンソースの基本的な条件については、オープンソース・イニシアティブ(OSI)というオープンソースを促進している米国の団体の定義(オープンソースの条件)が役立ちます。

 以下、重要な点の要旨をご説明します。ただし、それぞれの条件の詳細は、無数にあるといわれる個々のOSSライセンス条件によって異なってきますので、ご注意ください。また、以下はすべてを網羅しているわけではありません。

再頒布の自由

 オープンソースソフトウェアについては、再頒布の自由が保証されている必要があり、第三者の再頒布に対して料金や報酬を課すことはできません。

 ただし、自分自身の頒布については有償での頒布(つまり販売)も禁止されてはいませんが、その頒布先(購入者)が無料で再頒布することは禁止できません。

ソースコードの公開

 「コピーレフト」タイプのオープンソースソフトウェアについては、ソースコードが公開されている必要があります。

 オープンソースソフトウェアの頒布については、コンパイル済の実行形式とともにソースコードでの頒布も許可されている必要があります。

 この点、何らかの理由でソースコードが頒布物に含まれない場合、インターネットでの無料ダウンロードできるようにするなど、ソースコードを無償で、又はその複製に要する妥当なコスト程度の費用で入手できるようにする必要があります。またその入手方法を明示する必要があります。

派生ソフトウェア

 頒布するソフトウェアについては、その変更と派生ソフトウェアの作成を許諾する必要があり、また、派生ソフトウェアを、原ソフトウェアと同じライセンスで頒布することを許諾する必要があります。

差別の禁止

 ライセンスにおいて、特定の個人、団体、グループを差別してはならないとされています。また、特定の分野に対し、ライセンスを制限することも許されていません。

他のソフトウェアの制限の禁止

 当該ソフトウェアとともに、どんなソフトウェアを頒布するのかについて、制限を設けることはできません。例えば、同じ媒体で頒布する他のすべてのプロ グラムがオープンソースソフトウェアであることを要求するなどはこれに含まれます。

OSSライセンスの種類

 前述のとおり、OSSライセンスの数は世界中に無数にありますが、ライセンス条件の制約の強弱で大きく数個のグループに分けると言われています。以下、ラフではありますがグループごとの特徴をご説明します。またこれらの特徴は個々のライセンスによって異なることがありますし、すべてを網羅しているわけではありません。

最も伝搬性の強い「コピーレフト」タイプ~GPLタイプ

 GPL(GNU General Public License)、AGPL(GNU Affero General Public License)などに代表されるグループであり、伝搬性の最も強い「コピーレフト型」とも言われています。

 このグループでは、ソフトウェアの再配布の自由、改変と改変物の配布の自由が保証されている必要があります。また第三者がソースコード(改変後のソースコードも含め)を入手できるよう公開されていなければなりません。また、GPLソフトウェアをその一部に使用したソフトウェアについては、当該GPLソフトウェアの派生物として、GPLが適用されることになるなど、最も制約の強いライセンス条件です。

 注意が必要なのは、GPLによって提供されるライブラリへのリンクです。この点、静的リンクは派生物としてみなされることが一般的です。他方、動的リンクについては派生物とみなさないという考え方、同一プロセスで動作するものは動的リンクでも派生物であるとする考え方もあります。

 また、GPLで提供されるOSS又はその改変物を使用してネットワーク上のサービスを提供する場合、そのサービスをネットワーク経由で利用するユーザは、ソースコードへアクセスする権利を持つとは解釈されていません。他方、GNU AGPL (GNU Affero General Public License)においては、こうした場合にもユーザにはソースコードにアクセスする権利を認める必要があります。

 以上のほか、著作権表示を保持する義務、無保証といった特徴があります。

伝搬性を緩めた「準コピーレフト」タイプ~MPLタイプ

 GLPよりも制約の緩い、コピーレフト性を弱めたライセンスです。MPL(Mozilla Public License)などがあります。

 このグループでも、ソフトウェアの再配布の自由、改変と改変物の配布の自由が保証されている必要があります。また MPLで提供されるOSSを改変した場合には、そのOSSと同じライセンスを適用しなければなりません。

 他方、オリジナルのコードがOSSと別ファイルであり、OSSのライブラリとリンクするだけなら(少なくとも動的リンクの場合は)、当該オリジナルのコードはMPLライセンスには拘束されません。

 以上のほか、MPLにおいては、ライセンサーは、OSS に含まれる特許権などの知的財産権を、ライセンシーに対して無償でライセンスする必要があるという点が特徴です。

「非コピーレフト」タイプ~BSDタイプ

 「非コピーレフト型」といわれるライセンスです。その中には、Apache License、BSD Licens、MIT Licenseがあります。

 このタイプの大きな特徴は、OSSのライセンシーに対し、ソースコードの開示や再配布を求めない点にあります。つまり、オブジェクトコードのみの再配布でも許されるという意味です。ただし、再配布の際には、ライセンス本文、著作権表示、Disclaimer条項を含める必要があります。

 また、このタイプのライセンスの中には、ライセンサーが、OSS に含まれる特許権などの知的財産権を、ライセンシーに対して無償でライセンスする義務を課す条項が含まれる場合もあります。

 さらに、多くのライセンスは、無保証や損害賠償等についての免責を規定しています。

オープンソース利用の際の留意点

 以下オープンソース利用の際の留意点のうち主なものをご説明します。

適用されるライセンスのチェック

 当然のことながら、使用しようとするOSSにどのライセンスが適用されるのかを確認します。

 この点、同じライセンスであっても、バージョンによって内容が少々異なることがあります。例えばMIT Licenseは公表以来バージョンに変更はないと考えられますが、GNU LGPLライセンスは、バージョン2.1やバージョン3などがあります。

 また、使用するOSSについても、バージョンによって適用されるライセンスが異なることがありますので、この点についての留意も必要です。

適用されるライセンスの条文のチェックと準拠

 ライセンス条文を読み、ライセンス条件を理解する必要があります。そして、使用の前に、自社の開発目的や製品の性質上そのライセンス条件を適用することができるかを検討します。

 メジャーなライセンスについては、ライセンス条件や説明が日本語で翻訳され、公開されています。しかし、法的拘束力を持つのは、多くの場合英語で書かれた原文です。

 したがって、特に正確な理解が必要な場合、原文を読む必要があります。

適用されるライセンスの条件への準拠

 OSSを使用する際に、適用されるライセンス条件に準拠する必要があります。その内容はライセンスの種類によってまちまちですが、以下のものが含まれることがあります。

  • 著作権表示
  • ライセンスの承継(同一条件で配布)
  • OSSのソースコード提供義務(改変部分を含む場合と含まない場合あり)
  • 特許権等の権利不行使の約束をすること
  • 免責や責任制限の表示

オープンソース利用と法律上・契約上の諸論点

 以下、オープンソースに関する法的な問題点や契約上考慮すべき点をご説明します。

所定のライセンス条件に違反した場合の責任

 冒頭で申し上げたとおり、OSSは、著作権が放棄されたものではなく、著作権者が定めるライセンス条件を遵守することが前提となります。

 そのため、このライセンス条件を遵守しないでOSSを利用すると、当該ソフトウェアの著作権を侵害することになり、差止請求(ソフトウェアの頒布などを禁止する請求)を受ける可能性があります。

 そして、当該OSS が自社で開発したソフトウェアに組み込まれているとか、リンクされている場合、自社開発の部分も含めて配布ができなくなってしまいます。

OSSを利用した開発者の責任

 OSSは無保証で提供され、品質保証や技術サポートがありません。したがって、ソフトウェアの開発者は、OSSを利用したソフトウェアであっても、ソフトウェア全体について、品質問題や第三者の知的財産権侵害などについて自ら責任を取る必要があります。

 もっとも、開発者としては、製品に含まれるOSSについては、自己も何ら保証せず責任を負わないという特約をライセンス条件に付すことによって、リスクヘッジする方法もあります。

 この点に関連して、受託開発のケースを考えてみます。ベンダとしては、OSSを利用したとしても、その部分について保証しないという規定を契約に設けるのは困難であることが多いと思われます。他方で、ユーザー(発注者)が特に指図・指示して組み込んだOSSについては、ベンダ(受注者)は品質保証責任を負わない、といった規定を開発委託契約に含めることは可能かもしれません。

OSSの混入に関する問題

問題の所在

 委託開発において、発注者(ユーザー)が知らないうちにベンダがOSSを納品物に使用している、ということがありえます。

 そしてそのOSSが準拠するライセンス条件が、GPLなどの伝搬性の強いものである場合、納品物が、当該OSSの派生物としてGPLが適用され、自社のために開発してもらったプログラムの一部のモジュールがソース公開の義務を負うようになってしまう、という事態がありえます。

 また、納品物に混入したOSSが当該OSSのライセンス条件に違反しているために当該OSSに関する著作権の侵害となり、著作権者やオープンソース団体から責任追求を受けるおそれもあります。のみならず、当該OSSが組み込まれたソフトウェアの販売を中止したり、開発のやり直しによって社内や客先に損害を与えることもありえます。

実務上の対応1~開発委託契約における対応

 上のような事態を回避するためには、まず契約上の手当が必要になると考えられます。具体的には、発注者(ユーザー)側として、ベンダとの開発委託契約において、使用するOSSに関し、事前承認を得る義務を課すといった方策が必要となるかもしれません。

 なおこの点に関する具体的な契約文言の例は、「他者ソフトウェア・オープンソース等の利用」のページをご覧ください。

実務上の対応2~チェックツール等の活用

 さらに慎重に対応するとすれば、受注者(受託先)から受けた納入品について、チェックツールを用いてOSSの混入がないかをチェックするといった方策も考えられます。

代表的なライセンス

 以下、代表的なライセンスのうち主なものについて、概要をご説明します。

GPL(GNU General Public License)

 Free Software Foundationが制定したライセンスであり、「コピーレフト型」でも、伝搬性の強いライセンスです。GPLには1から3までのバージョンがあります。

 主たるライセンス条件の一部は以下のとおりです。なおこの条件は、OSSやその派生物を配布する際の条件であり、配布するか否かは自由です。

  • 誰でも自由に複製、改変、配布することが可能
  • GPLライセンスを使用した派生プログラムもGPLライセンスで配布する
  • オブジェクトコードを頒布する場合も、ソースコードが入手できるようにする/li>
  • GPLライセンスを配布する
  • 著作権表示・無保証・損害賠償責任の不存在

 「GPLライセンスを使用した派生プログラム」に関して特に問題となるのは、GPLが適用されたプログラムと動的リンクされたプログラムがどのように扱われるかです。

 この点、FSFの公式見解としては、「GPLの及ぶ作品をもとにして結合著作物を作成すること」隣、「全体としての結合には、GNU一般公衆ライセンスの条項が及びます」とされています。

https://www.gnu.org/licenses/gpl-faq.ja.html#GPLStaticVsDynamic (日本語) 
https://www.gnu.org/licenses/gpl-faq.html.en#GPLStaticVsDynamic (英文) 

AGPL(GNU Affero General Public License)

 これはGPL をベースにしつつ、ネットワークアクセスしてクラウドサーバのソフトウェアを利用する場合を踏まえたライセンスです。伝搬性の最も強いライセンスです。

 主たるライセンス条件はほぼGPLと同様ですので、GPLの欄をご覧ください。AGPLで特徴的なのは、サーバ上でAGPLが適用されるプログラムやその改変プログラムを動作させ、ユーザーがネットワーク上で当該プログラムと通信するような場合でも、当該プログラムに対応するソースコードを開示する必要があるという点です。

LGPL(GNU Lesser General Public License)

 LGPLはGPL をベースにしつつ、GPLのコピーレフト性を少し弱めたライセンスです。

 まず、LGPLでは、OSSやその改変物(LGPLライブラリやその改変物を含むプログラムも含みます)について、ソースコード提供義務があります。

 他方、自己が開発したプログラムには、LGPLライブラリは含まれず、自己のプログラムとLGPLライブラリをリンクしてともに動作するような場合、自己のプログラムについてはLGPLを適用する必要はありません。

 ただし、自己のプログラムについてリバースエンジニアリングと改変を許諾する(禁止しない)義務があるほか、LGPLライブラリを使用している事実、ライセンス条件と著作権表示を行い、LGPLライブラリと改変物のソースコードを提供する必要があります。

MPL(Mozilla Public License)

 MPLは、GPLに比べてコピーレフト性を少し弱めた「準コピーレフト」タイプです。最新のバージョンは2.0です。

 MPLが適用されたOSS(MPLプログラム)のソースコードを配布する場合や、当該プログラムを改変したプログラムを配布する場合も、ソースコードも提供する義務があります。

 主たるライセンス条件の一部は以下のとおりです(以下はMPL2.0)。

  • MPLプログラムを改変したり、MPLプログラムを含むプログラムも、MPLライセンスが適用される
  • 誰でも自由に複製、改変、配布することが可能
  • 配布の際、MPLライセンスが適用されることとMPLライセンス規定を入手する方法を開示する
  • 著作権の表示は抹消しない
  • オブジェクトコードを頒布する場合も、ソースコードが入手できるようにする/li>
  • 当該プログラムの作成者が当該プログラムについて特許を持っている場合、当該特許もライセンスされる
  • 無保証・損害賠償責任の不存在

MIT License

 マサチューセッツ工科大学で作成されたライセンスです。コピーレフト性は弱く、主たるライセンス条件の一部は以下のとおりです。

  • 誰でも自由に複製、改変、配布することが可能
  • 著作権者が表示した著作権表示と、MITライセンスによる許諾表示を記載する
  • 無保証・損害賠償責任の不存在

Apache License

 Apache Software Foundationで作成されたライセンスです。最新のバージョンは2.0です。主たるライセンス条件の一部は以下のとおりです。

  • 誰でも自由に複製、改変、配布することが可能
  • 当該ソフトウェアや派生成果物(改変物等)の配布の際、Apachライセンスのコピーも配布する
  • 変更を加えた場合その旨の表示を行う
  • 著作権の表示は抹消しない
  • 当該プログラムの作成者が当該プログラムについて特許を持っている場合、当該特許もライセンスされる
  • 無保証・損害賠償責任の不存在

 なお、Apacheが適用されるプログラムと分離されているプログラムや、インターフェースへのリンクは、Apacheライセンスが適用される派生成果物とはみなされません。

 


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